13-3 遺跡への道(1)
三日後、グリム達20名は遺跡を目指して出発した。 16人の兵士の内、二人はクオールとキランだった。
「何もあんた方が直接出張らなくても、良かったのでは?」 グリムはクオールに言った。
「二回の失敗は私に責任がある。 今回は何としても成功させたいのだ」とクオール。
「私は、あなたに興味が湧いた。 私も連れて行ってくれ」とキラン。
「物好きだな、あんたも。 この作戦も正直なところは、それほど成功率は高くないと思っている」
「どの程度と考えているのだ?」
「まあ、三割といったところだろう」
「そうか、ならいい。 失敗する可能性も考えないバカでは無いと言うことだ」
ポーラは小柄な体に大きなリュックを背負っていた。 その隣には30代の細身の男が立っていた。 ポーラが男をグリムの所へ連れて来ると、紹介した。
「こちらは、同僚のバイルです」
「バイル・ソランです。 よろしくお願いします」
「よろしく、グリムです」 グリムは、男の神経質そうな感じが少し気になった。
グリム達は、軍の飛竜でアルカラまで送ってもらった。 アルカラに着いたときに、グリムはクオールに疑問をぶつけた。
「そもそもこの飛竜で、遺跡まで行けないのかい?」
「そうしたいのはやまやまだが、そうは行かないのだ。 我々も当初、飛竜による偵察を試みた。 しかし飛竜達も多数の魔獣の気配を感じ、怯えて飛ぼうとしなくなるのだ」
「なるほど。 ならば予定通り歩いて行こう」
アルカラは王国の西部では北端の都市である。 王国の支配が及ぶ範囲は、アルカラから20キロほど北にある小さな村までであった。 グリム達は翌日の早朝、まずはその村まで向った。 その村までは、荒れた道ではあったが道を歩ける分だけまだ良かった。 グリム達は3頭のムタと呼ばれる細身のカバのような動物の背に食料の袋を積んだ。 他に全員がリュックを背負った。 クオールが選抜した兵士14名は、いずれもが一癖ありそうな者達だったが、有能そうだった。
「こいつ等は私の直属の部下達だ。 いずれもアクロ使いで、どんな困難にも動じない」 クオールはそう言うと胸を張った。
その日の午後北の村に着くと、グリムは村長に北の様子を聞いた。
「ここから北へは、我々もほとんど行きません。 危険過ぎるからです。 前に多くの兵隊達が北に向いましたが、帰って来たのはわずかでした」 それを聞いてクオールは顔をしかめた。
「どんな魔獣がいるのですか?」
「この近く出没するのは、大きな蜘蛛のような魔獣です。 それと狼の様な魔獣もおります。 そいつ等は群れで行動します。 ですが奥に行けば、得たいの知れないのがもっといます」
その夜は村に泊まり、翌日の朝、グリム達は村を出発した。 グリムは隊を二つの班に分けた。 グリムの班にはキランとポーラ、それに兵士七名、もう一つはクオールを班長にしてリオンとバイルと兵士だ。 隊を二つに分けたのは、魔獣に襲われた時に素早い対応ができるようにするためと、逃げるときに二手に別れることによって、どちらを追うか躊躇させるためだった。 グリムがそれを話したときにクオールはすぐに承諾した。 目的はもう一つあったのだが、クオールは即座に理解した。 つまり隊が魔獣に襲われた時、一方の隊が壊滅的な被害を受けたときにもう一方を助けるよりも、残りの班で作戦遂行を優先するというものだった。
村を離れると、すぐに道なき森をかき分けて進むことになった。 グリムは感覚を研ぎ澄ませ、周囲に魔獣がいないかを探った。
「リオン、お前の能力は集団でも発揮できるのか?」 グリムがリオンに聞いた。
「この集団の気配を消してしまえるかと言うことですか? どうでしょう、試したことがないので何とも言えませんね。 ただ人混みの中に自分を溶け込ませるということとは、状況は違うので」
「そうか、ここから発せられる匂いを消せるわけではないからな」
「だけど、試してみます」




