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13-2 魔獣

 王宮から帰ったグリムは、夕食の後ランプの明かりをぼんやり眺めながら、今日のことを考えていた。

(これは難しいぞ) グリムがクオールの報告を聞いての感想だった。

「どうしたの? 昨日、王宮に呼ばれてから変だよ」 カエンはグリムの前にお茶のカップを置いて、向かい側に座った。

「女王は俺に遺跡発掘のために、遺跡の周りに巣くう魔獣を退治しろと仰せだ」

「何それ、なんでグリムなの? 幾らでも兵隊がいるんでしょ」

「ところが、王国軍の将軍達が二回もトライして失敗しているから、俺に別なアプローチをしろってことらしい」 グリムはお茶を一口飲んだ。

「それって、いくら何でも無茶振りすぎない? そんなことどうやってやるのよ」

「俺にも分からないよ」

「第一にその遺跡って何なの?」

「俺にも分からない。 ただ、推測するに武器庫じゃないかと思う」

「武器?」

「そう例えば銃のような物じゃないかと俺は思っている。 アレクオンの人達がこの星に到着した時、地球での過ちを繰り返さないためにそれまでの文明を捨てたと聞いている。 だからそれまでの銃のような武器も、地下に穴を掘って埋めたのじゃないかと考えている。 今、カーセリアルとの戦争も押されているという話しだ。 もし今の前線を突破されたら、一気に王都に迫ってくることになるかも知れない。 だから女王はカーセリアルに対抗出来る武器を手に入れたいと、躍起になっているのだと思う。 もっとも俺だったら、何百年も経った銃なんて撃ちたくないがね」

「なるほどね。 でもそれじゃあ尚更、カーセリアル人のグリムには秘匿しておきたいんじゃなくて?」

「ああ、だから極力遺跡の中身については教えたくないらしい」

「ていうか、こんな話しすることも、守秘義務違反じゃないの?」

「知るか!」

「どうするつもり?」

「分からない。 どんな魔獣がどのくらいいるのかさえ分からないし、そもそも魔獣は知能が高く、アクロの力を使えるものもいる。 強い個体だったら簡単に一個中隊ぐらい全滅させられるし。 問題の遺跡の近くにはとんでもない奴がいるらしい」

「とんでもない奴?」

「ああ、アニメの怪獣のような奴らしい」

「何それ」

「だがそんな怪獣を倒さなければならない。 セシールを助けに行くためにはな」

「そうね。 でも気をつけてね」


 翌日、王宮の一室

 グリムが王宮に行くと、会議にアリエノーラが出席していた。 他のメンバー達も女王の臨席で、皆緊張していた。


「遅いぞ! もう女王陛下がおいでになられているというのに」とサウゲラが怒鳴った。

「そんなことを言われても、女王様が出席されるなんて聞いてないし、それにまだ会議の5分前だぜ、じいさん」

「誰が爺さんだ! 無礼者!」 サウゲラは顔を真っ赤にして怒った。 それを聞いてアリエノーラが「クスッ」と笑った。

「まあ、二人ともそれくらいにしなさい。 ところでグリム将軍、良い作戦は思いつきましたか?」

「良いかどうかはともかく、私にはこれしか思いつきませんでした」

「それでは、聞きましょうか。 兵は幾ら必要ですか、3千ですか、5千ですか?」

「16名です」

「はあ?」 その場にいた全員が驚きの声を上げた。

 

「女王様の御前であるぞ。 悪ふざけが過ぎよう。 お前は陛下より魔獣退治を命じられたはずだ。 その数でどうやって魔獣と戦うというのだ?」とサウゲラ。

「戦いません」

「なんだと!」 今度はクオールが声を上げた。

「魔獣が襲ってきたら、戦わずに逃げます」

「何と、それで陛下との約束を果たせると考えているのか!」

「その通りです。 女王様の望みは、ポーラを遺跡まで連れていき、調査をさせることでしょう? 魔獣の駆逐ではないはずです」

「魔獣を駆逐せずに、どうして遺跡まで到達できるというのだ?」

「ああ、わかっていないな。 じいさん、逆だよ。 もし仮に、今回3千の兵を率いて遠征したとしても、まず失敗するだろう。 そして恐らく無事に戻ってこられるのは一割以下だ」

「なぜだ」

「まずどんな魔獣がどれだけいるのかが分かっていない。 そんな中へ大軍を連れて行ったら、いたずらに魔獣達を刺激し総攻撃を受けるだろう。 それよりは少数で秘かに抜けるんだ。 魔獣の数が多ければ、単独で生きる魔獣の縄張りは狭いはずだ。 魔獣も自分の縄張りから出て行けばそれ以上は追って来ないだろう。 そして極力戦いを避けて遺跡までたどり着く」

「なるほど、何ともカーセリアルの武人は勇ましいことだ」クオールは皮肉を言った。

「武人の名誉や誇りなんかクソ食らえだ。 大切なことは作戦の完遂だ」

「だが、私は最も実現性の高い作戦だと思う」キランは淡々と言った。

「しかし、遺跡近くに巣くう巨大な魔獣はどうするつもりだ?」

「遺跡近くにいる場合はじっと隠れている。 そして狩りに出かけた時を見計らって、遺跡に近づく」

「なるほどね。 兵士が16人という根拠は?」とアリエノーラ。

「本当は4人で行きたいところです。 私とリオンいやラウラ、ポーラ、それともう一人ポーラの同僚。 極力少なくしたい。 もう一人遺跡に詳しい人を連れて行くのは、ポーラに万一のことがあった時のためです。 最大限チームとして行動できるのは20人が限度です」

「私も行くのですか?」とリオン。

「ああ、あんたの気配を消せる能力は欠かせない」

「良いでしょう、進めなさい。 クオール同行する者を人選しなさい」とアリエノーラ。

「はっ、かしこまりました」

「極力、慎重で藪ががさついても動揺しないような者でお願いしたい」

「承知した」

「ではグリム、頼みましたよ」

「はい」


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