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3-1 大いなる力(1)

 山の洞窟から戻った翌日、ゼオルがやって来た。

「よう、体の調子はどうだ?」 笑いながら言った。

「まあまあだな」 グリムは曖昧に応えた。

「ホントか? 本当は調子が悪いんじゃ無いのか? 頭痛がするとか、耳鳴りがするとか・・・」 ゼオルは真顔になって言った。 グリムの不調の原因を知っているようだった。

「なぜそう思う?」

「お前の髪の色だ。 お前は“アクロの力”を手に入れたんじゃないのか?」

「アクロの力?」

「ああ、俺達戦士は大地の精霊から力を授かる者がいる。 そしてそれを授かる時には体に異変が起きる。 症状は人それぞれだが、その症状を克服できない者は精神に異常をきたしやがて死にいたる」

「実は、頭痛とめまい、耳鳴りがひどい。 音や匂いに敏感というか過敏になっている気がする」

「やはりそうか。 ゲリオル殿のところへいくぞ」

「ゲリオル殿?」

「ああ、ゲリオル殿は呪術師だ。 こう言ったことの対処法に詳しい」

「なるほど。 分かったエリオラに言ってくる」


 ゲリオルの家

 「やあ、やはり来たか」 ゲリオルは家の前で髭をさすりながら言った。

「ゲリオル殿も気付いていたのですね」とゼオル。

「ああ、まあ中に入れ」 ゲリオルは二人を中に招き入れた。 ゲリオルの家の中は質素ではあったが、薬草や何に使うのか良く分からない道具のような物が、所狭しと並んでいた。

「どんな様子だ?」

「頭痛、めまい、耳鳴りがひどいです」

「そうか」 ゲリオルはそう言うと、薬草の束の中から三種類ほど引き出し、それをお湯で煎じたものを椀に入れた。

「これを飲むんだ」

「うっ」 あまりの苦さに吐き出しそうになった。 それを無理して何とか全部飲んだ。

「これで症状は落ち着くだろう。 だがそれは一時しのぎだ。 まずは洞窟に入ってからのことを聞かせてくれ」とゲリオル。 グリムはしばらくすると、確かに症状は軽くなってきた。 そこでグリムは洞窟でのことを話し始めた。 ただし紫の獣との会話については、現実なのか夢なのか分からなかったので話さなかった。


「なるほど。 状況は分かった。 良く聞くんだ」 そう言うとゲリオルは奥から掌ほどの大きさの青みがかった白い石を取りだして見せた。


「これはレクチウムという物質だ。 暗闇の中だと青白く光る。 グリムが洞窟の中で見たのはこれだ。 これは生き物の体内に入ると、その体に影響を及ぼす。 成人の儀式で新成人が飲まされる酒は、これを微量溶かし込んだものだ。 これを飲んだ者は脳や体の各器官が刺激され活動が活発になる。 そして優れた能力を獲得できる者が現れる。 ある者は聴力や嗅覚が獣並なる。 またある者は直接触らなくても物体を動かすことが出来る。 またある者は空を飛んだりすることができる。 実に人それぞれだ。 それがアクロの力だ。 しかし、脳や体がその変化に対応出来ず悲鳴を上げる。 それが様々な症状として現れるのだ。 だから脳と体が慣れてくると症状も落ち着いてくる。 グリムは地底湖でレクチウムが溶け込んだ水を飲んだためにそうなったのだろう」

「なるほど」

「今は薬草の効果で、敏感になった感覚を麻痺させて押さえているだけだ。 だから根本的に治すためには、自分でそれを制御できるようにならねばならない。 明日からここに通うが良い」

「分かりました。 よろしくお願いします」


 ゲリオルの家から帰ると、家の中では洞窟からついてきた猫?が丸くなって寝ていた。 グリムの顔を見ると、興味もなさそうにあくびをしてまた寝た。 赤毛で背中に渦のような模様があった。 猫のようであるがもしかしたら、魔獣の幼獣なのかもしれないとグリムは思った。 ペックが側にきて言った。

「グリムおじさん、アイツの名前何にする?」

「そうだな、シックルと言うのはどうだ?」

「シックル。 よしシックルだ。 お前は今日からシックルだぞ」 ペックが頭をなでると、当のシックルは起こされて迷惑そうにあくびをした。


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