第五話:亜理子
痛い夢だった。
俺だけが生き残る。
この世界が滅んでも。
この世界があと何日で滅ぶかなんて、神でもわからない。
そんなことは、分かってる。
でも、俺は、滅ぶまで何日かかるのか、それを知っている。
神と金の亡者が争っていても、世界は、終わらないだろう。
でも、最強と最凶がぶつかればどうなる?
そんなことは、わかりもしない非現実的な話かもしれないけれども、俺は、思う。
近い将来、そんなことが絶対に起こるという予想しかない。
でも、俺が、本当の名前を取り戻せば、そんなことが起こるのかもしれない。
しかし、同時に、悲しき出来事が起こるのかもしれない。
結局、そんなことは、誰にも、わからないのだろうけれども。
***
俺は、目が覚めた。
そして、見上げた天井を見て、
「ここは、どこだ?」
俺は、最初にその一言を発した。
見たこともない景色。
見たことのない文字。
見たことのない機械。
見たことのない、見たことのない、見たことのないものがどこらかしこにおいてある。
そして、俺は、起き上がると、
「おはよう。死神君」
そう言って、出迎えてくれたのは、とある男性だった。
化け物のような顔をした男性。
その男性は、俺を見て笑った。
俺は、その男性に恐怖を感じた。
なんとなく、怖いという感情だった。
冷たい。
寒い。
背筋をなぞる。
死の予感。
それだけが俺を恐怖に陥れた。
そして、俺は、すべてを知った。
神と死神。
そして、零について。
俺は、とっさに、その男性を蹴り倒した。
その男性は、早すぎるその動きについていけずに
「ッー……」
頭に足蹴リが当たり、その男性は、死亡した。
そして、俺は、ここで名乗った。
「俺は、死神亜理子だ」
と。
そして、世界が震撼する。
危ない気配に。
心理の奥へ。
ミステリアスな世界へ。
俺は、足を踏み入れた。