第一話:まだ始まりのノエル
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
中学三年生のいじめの現場。
俺は、一方的なけりを味わった。
口の中で血の味が広がる。
俺は、思わず吐き出した。
そうすると、更にけり倒された。
俺は、昔から、喋れなかった。
小学一年生の頃だったか、父親に舌を切られた。
そして、俺は、下を無くし、上手に喋れなくなった。
だから、今日も、喋らない。
だから、いじめられる。
ただの悪循環。
ほんとに、死にたいって言えばいいのに。
それしか、思わない。
死にたいと、言えれば、どれだけ、苦しまずに住んだから?
そんなこと、今更、聞かないでほしい。
だから、差し伸べられた手を振り払うことができなかったのかもしれない。
「大丈夫?」
そう言ってきたのは、名前も知らない奴。
でも、そうやって声をかけてくれたことが嬉しかった。
だから、俺は、彼女に伝えた。
紙を出して、書いた。
『死にたい』
そう書かれた紙を見て、彼女は、悲しくなって、逃げて行った。
次の日、彼女は、高い高いビルから、飛び降りたことを知った。
***
そして、さらに次の日、彼女は、突然家に現れた。
両親がいなくて、暗い家に。
そして、彼女は、こう言った。
「私、心無玲子よろしくね」
彼女は、玲子と名乗った。
「私ね。感情が上手に出せないの。でもね、感情を知りたいと思った。あなたなら、教えてくれるかなって」
俺は、首を傾げた。なぜ、俺なら、教えてくれると思ったのか?
なぜ、俺じゃないといけないのか?
なぜ、感情がないような、俺にそんなことを言うのか?
上げ始めたら、切がない。
そんな、人間なのに。
「んー。簡単に言うと可愛そうだから」
ちょっと待て。
この女、俺の心情を読み取った?
「合ってるよ。読んだ読んだ」
意味がわからない。
しかも、この前、こいつは、
「死んでるよ」
じゃ、なぜ生きてるのか?
実は、死んでなかった?
否、死体は、見つかってる。
なら、死んでるんじゃないのか?
「さーて?なんででしょうか?」
知るか!
「だよねー。まぁ、いいや。いつか、知れるよ」
彼女は、そう言って笑った。
2話連続刊行。しんどくはないけど辛い。頑張ります。では、さようなら。