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46話 旅は続くよ

「で、スッキリしたのか?」

「ああ、大満足だ」

 ボロボロになった神を完膚なきまで破壊するために飛び立ったゼルは、超巨大な火球をぶつけた。

 それは見事な花火のような美しい光景だった。


 立ち昇る黒煙に降り注ぐ破片。見た事が無い程に晴れ晴れとした顔をしていた。俺の復讐も思ったより早く終わりを迎えた。

 

 バルデン、パルメ、リンファ、そしてディアラ。かつては仲間として活動していたが、いざ殺すとなっても躊躇することはなかった。


「ま、これでお互いの目的は果たしたわけだ」

「契約も解けたな」

 俺達の手の甲から六芒星の契約印がすっ、と薄くなって消えた。彼女とよ繋がりが消え、急に体が怠くなってきた。


 まさか、契約が切れたせいでゼルから送られてくる力が遮断されたのだろうか。

「どうした?」

「いや、ちょっと疲れてな……」

「こんな所で死ぬなよ。私との約束があるんだからな」


「ああ、覚えてるさ。世界中の美味いもの食う旅だろ。ちゃんと連れてってやるから安心しろよ」

 しかし満身創痍の俺達はどうやって安全な場所まで移動したものか。煙が収まって暫くすれば人が集まってくるだろう。


 その時にこんな場所にいたら捕まって事情聴取なりされて最悪牢屋に入れられるかもしれない。

「行くか……どっかで魔法陣でも書いて家まで帰ろう……」

 フラフラな俺らは肩を組んでゆっくりと安全が確保できそうな場所を求めて森の中をうろついた。


 ちょうどいい洞穴を発見してその中で休憩することにした。最後の力を振り絞ってモンスターどもを追い払って腰を下ろす。


「これからどうする?」

「まぁ、取りあえず俺ん家行こうぜ。ゆっくり休んでから旅に出よう」

「それもそうだな……」


 目的を達成した俺達の心は殆ど空っぽだった。会話は長続きせず、返事も曖昧になる。

 いつしかどちらも口を開かなくなり、放心して壁を見つめていた。その内自分が眠った事にすら気づかないで朝を迎えた。話


 昨日と同じ体勢で目を覚ました俺は立ち上がる時に体中が軋むのを感じた。それでも魔力や体力は幾分か回復している。

 ゼルも同様に復活したらしく、落ちていた尖った石を使って魔法陣を刻んでいた。


「よし、これでユーリィの家まで繋がったぞ」

「じゃあ帰るか」

 並んで魔法陣に乗り、ゼルの詠唱に合わせて魔力を流す。周囲が光に包まれ、体が宙に浮くのを感じる。

 シュパッと軽い音ともに消えて薄暗い地下室に着地した。


 今度は甲冑やら食器やらを倒さずに廊下まで出る事に成功する。家に帰って来たのはいいが、何をするか思い付かず廊下に立ち尽くしているとカリーナが通りかがった。


「ぼっちゃん!」

「ようカリーナ」

「ご無事だったのですね!」

 それからドタドタと両親が駆けつけ、俺達の姿を見るなりボロボロになった理由を訊かれて無理矢理ベッドに寝かされた。


 治るまで絶対安静と、逃走防止のために足首に脱走を検知する魔道具を取り付けられ軟禁されてしまった。

 力を借りすぎた俺は両腕骨折と左肩の脱臼、足の骨にヒビが入っていた。ゼルも似たようにボロボロで家で休んでいけと父達に説得されたのだった。


 久しぶりに何もない生活を送っているが中々悪くない。窓際のソファに寝転がりながら読書をしたりゼルとチェスをしたり、荒んだ心にもちょうどいい休養を与えられた。


 しかし未だに父も母も大きくなったゼルに慣れていないようだ。初めて会った時はまだまだ子供だったのに、数ヶ月ぶりに顔を合わせたら成人しているのだから仕方ないと言えば仕方ない。


 成長した理由だが、魔術師にかけられた呪いが解けたから元の姿に戻れた、という事にしておいた。

 まあ、あながち間違っているわけではないからそういう事にしておいた。


 あれから一ヶ月が経った今でも世界は混乱している。

 信仰の対象であった世界樹が倒壊し、創世神の世界をやり直す発言が全世界に響いた結果、これから何を信じればいいのか分からなくなった人が続出した。

 神を信じていなかった人々は混乱の沈静化に奮闘していた。


 そして俺とゼルも世直しの旅に出る事にした。そのついでに各地の特産品だったりを食べればいい。上手くいけば無料で貰えるかもしれない。


「たまには帰って顔を見せに来なさいよ」

「分かってるよ母さん」


 カバンを背負い直し、両親とカリーナに一時の別れを告げる。門を抜けて先に外に出ていたゼルと合流してヘリトンの町へと下っていった。

 ヘリトンの町から流れてきた爽やかな潮風が新たな旅の始まりを告げているようだった。

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