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12話 最初の復讐

 翌朝、不機嫌そうなゼルグリアに叩き起こされた。ぼーっとしたまま枕に頭をつけていると、目の前にいる彼女の腹が大きな音をたてた。

 それにつられるように俺の腹を鳴いた。


「……そういや昼も夜も食ってなかったな」

「いくら叩いても起きないから死んだかと思ったぞ!」

「悪かったな……すげえ眠かったんだ」


 のそのそと起き上がって小屋から出る。食い物は特に買ってはいない。モンスターを調理すればいいと考えていたからだ。

 一般人からすればモンスターを食べるのは異常だ。しかし冒険者の間で魔物食はメジャーなものだ。


 荷物が減るし、何より干し肉なんかよりも全然栄養価が高い。竜の肉を焼いてパンに挟んで食べたのは、非常に美味だった。

 この森には食えそうなモンスターはたくさんいる。


 入り口付近までの話になるが。

 ど真ん中まで来ると出てくるのは人食い花か、花に食われて死んだ怨念が動かす鎧くらいだ。

 したがって、食えるものは無いに等しい。


「水はたくさんあるからそれで我慢してくれませんかね?」

「私はお腹が空いた! 肉が食べたいぞ!」


「肉ねぇ……あの時熊をすこーし捌いときゃよかったなぁ」

 過ぎたことを悔やんでも仕方がない。こうなったら少し戻って木の実を探すしかない。

 花か鎧以外のモンスター、または動物に会えたらいいのだが。


「食えない木の実ばっかだなぁ」

 毒性の強い木の実ばかり見つかる。どれも食べたら即死級の毒を孕んでいる。

 道中も花を何匹か倒したが、口にできそうな生き物は見当たらない。


「村に帰るまで我慢できないか?」

「私に空腹で過ごせと……」

「水ならたくさんあるからそれで腹を満たして、な?」


「いいだろう……村についたら私が要求するもの何でも食べさせろ」

「わかった、交渉成立だな」

 背後に現れた人食い花を切り捨てて小屋に引き返す。

 小屋の前でバルデンが俺達を探していた。


「いたいた。ほれ、剣は直ったぞ。二度と、雑に扱うんじゃないぞ」

 強く念をおされ、剣を受けとる。新品同様に、刀身が太陽を反射する。振り心地も前使ってたものよりも断然いい。


「一つ、質問があるんだけど」

「なんだ?」

「シャービスの他のメンバーってどこにいるんだ?」


「何でお前さんがそんな事を気にする?」

「いやぁ、ちょっと会ってみたくて」

「あいつらとは……もう何の関わりもない。部外者に教えることはできん」


「部外者……か。なら俺が関係者なら話してくれるんだな?」

「なんだと?」

 俺の姿が変化するにつれて、バルデンが驚愕の表情を浮かべる。おそらく、彼の頭の中ではなぜ俺が生きているのかと疑問を抱いているのだろう。


「お、お前……ユーリィ、か?」

「その通り。元シャービスのメンバー、ユーリィ・フロミネスさ。地獄より帰還したんでね。ちょいと復讐の旅を始めたんだ」

 丸腰のバルデンに剣先を突きつけて尋ねる。


「ディアラ達はどこにいるんだ!」

「……知らん」

「痛い目みないと分かんないみたいだな?」

「本当に知らないんだ。解散して以来、アイツらから連絡はこない」


「詳しく話してもらおうか」

 妙な動きを見せたらいつでも首をはねられるように構える。小さく溜息をついた後、バルデンが口を開いた。


 曰く、フレイム・スフィアを入手したあとギルドに俺が死んだ事を伝えた。そして五人で新たな出発を切ったと。

 残る二つのスフィアのうち、アクア・スフィアを五年後に見つけたそうだ。


 しかしその頃からディアラとリンファの様子がおかしくなり始めた。異常と言えるほどにスフィアを求め、屈強な冒険者でもキツいスケジュールで探し回っていた。


 それに嫌気がさしたバルデンとパルメは抜け、ディアラとリンファ、それからリーザスが残った。

 それ以降、ギルドにも名前は上がらなくなったそうだ。


「なるほど、ね。じゃあパルメの位置はわかるのか?」

「アイツは故郷に戻ると言っていた」

「故郷か。たしか西のリンクル村だったか? 獣人と一部の物好きしか住んでない村だったよな」


「次は俺からだ。どうやってあそこから帰ってきた?」

「色々あったんだよ。……情報提供に免じて痛まないようにしてやる」

 動き出される前に心臓を一突き。先端が背中を突き破って姿を現す。血で濡れ、ポタポタと血溜まりを作る。


「一人目……あと四人」

 左右に振り払って鞘に収める。バルデンは特殊なコーティングもしてくれたようで、一瞬で血が落ちた。


「さて……埋めるか」

「復讐相手なのに埋めてやるのか」

「一応な。証拠隠滅さ」

 魔法で地面に穴を開け、そこにバルデンの遺体を下ろす。四方に散らばった土を集めて上に被せた。そして表面を慣らし、完成だ。

 地面についた血は雨が洗い流してくれるだろう。


「こいつが死んだなら、小屋の食い物貰ってもいいんじゃないか?」

「そんなに腹減ってんのか」

「当たり前だ。昨日は何も食ってないんだからな」


「仕方ない、少し貰ってくか」

 二人で手分けして小屋を漁った。ゼルが宿泊用、俺が鍛治用の小屋だ。

 窓は開け放たれ、中の熱気が外に放出されている。


 さほどに広くないこの小屋に食料があるはずがなかった。剣の柄や槍の穂先、盾の取っ手なんかが転がっている。

「……あんまり、嬉しくないな」


 バルデンを殺した。少しは気分が晴れるかと思っていたが、実際そうでもなかった。

 罪悪感が心をチクチクと刺してくるわけでもない。


「でも、俺はやり遂げると誓ったんだ。全員に復讐を果たす」

 たぶん、ディアラとリンファを殺ればスッキリするだろう。事の発端はアイツらなのだから。


 そう胸に刻んで小屋から出た。ほぼ同時にゼルも出てきた。手にサンドイッチを持っている。

 満面の笑顔で早速一つ頬張っていた。

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