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人口拡大!

 新たな住人が来るぞ。家畜も一緒だ。なに、ダンジョンが見つかっただと、この忙しい時にバカヤロウ。


 そんなノリで家々を建てる一人棟梁のヴァン君八歳。もう少しでやっと九歳の僕が一番働いてるじゃないか。


 アラテンだぞ、アラテン。いや、アラゼロか? アラはアラウンドの略だから、やっぱりアラテンだな。


 まぁ、いいや。とりあえず、四人で住むには丁度良いかな、くらいの3Kの平屋を五十軒建てた。そして、二人で住むのに丁度良い2Kの平屋も五十軒建てた。これで三百人分の家が出来たぞ。


 ついでに冒険者ギルドとか宿屋とかが来ても良いように大通りには店を並べる空き地を確保しておく。


「後は、やっぱり大量の冒険者が来ても良いように離れも作っとこうかな」


「離れ、ですか?」


「冒険者用の小さな町だよ。定住するなら良いけど、ダンジョンの為に暫く滞在するくらいの気持ちの人ならそっちに居てもらおうと思って。ほら、オルトさん達は違うけど、迷惑な冒険者とかもいそうでしょ?」


「ま、町を作るのですか」


 驚くティルに、首を傾げる。


「大変だとは思うけど、作っとかないとね? まぁ、一か月くらいで出来る小さな町で良いんだよ」


「……町って、一か月で作れましたっけ……?」


 心底不思議そうな顔で首を傾けるティルに笑いながら、僕は町づくりを開始した。







「町は三百から四百人くらいの規模で良いよ。旅人とか冒険者用の宿場町みたいなイメージかな? 建物は高くして、城壁は五メートルくらいにしようか。防衛用のバリスタは村以外の三方向に合わせて十五台。地面設置式で悪用出来ないように鍵も付ける」


「建物はどれほどの大きさで何人住めるようにしますか?」


「三階建てかな。広めの通りを十字に作って、その道に合わせて建てていこうか。一つのフロアに十人寝泊まり出来るようにすれば一棟三十人でしょ。それを十棟と、店舗用の建物を五棟。宿屋も二、三棟建てた方が良いかな?」


「冒険者ギルドの支部が出来ますから、その場所は用意しておいた方が良いでしょう。差し出がましいことを言わせてもらいますが、店や宿屋を作るならば賃借料を取る形にするか、ヴァン様が経営するか決めておいた方が良いかと思われます」


 エスパーダはそう言ってこちらを見た。


「そりゃ経営した方が利益になるだろうし、色々と融通は利くだろうけど、面倒だよね」


「それならば、新しい町の代官を用意した方が良いかと。ヴァン様は村に残るでしょうし、町を管理する者が必要です」


「僕が店を経営したら代官はいらないの? あぁ、そうか。各店や宿屋の経営者を町の管理者にするってことかな? 確かにそれなら無駄も無いし、代官一人に任せるより監視の目も多いよね」


 成る程と頷きながらそう答えると、エスパーダは深く頷く。


「その通りです。もしくは騎士団の設立でしょう。幸いにもディーが居ますから、設立から運用まで不足なく行えます」


 と、エスパーダは説明した。


 つまり、新しい町での利益などは追い求めておらず、重要なのは町の治安と監視をどうするかを決めたいということか。


 町の監視ね。確かに、色々と奪いたい物だったり、何かしらの野心だったりを持つ人も現れる可能性はあるかな。


 警察組織的な意味では騎士団が良さそうだけど、そう簡単にはいかないと思う。


 ただ、幸運にも予算はある。


「全部やろうか。店の運営はちょっと保留にして暫くはベルとランゴに任せる。騎士団は冒険者か傭兵からスカウトとかね。代官はエスパーダに任せようかな」


 そう言うと、エスパーダは一瞬だけ考えるような素振りを見せたが、すぐに首肯した。


「分かりました。それならば、私が町の管理者となる人物を探しましょう。騎士団は村に一つと町に一つで良いですね?」


「そうだね。ディー達をセアト村のセアト騎士団。新しい町はエスパーダ騎士団」


「……仕返しですかな?」


「なんのことかな? 僕八歳だからよく分かんないや」


 ジト目でこちらを見るエスパーダに、僕は声を出して笑った。愉快痛快である。







 そんなこんなで新しい町の測量やら準備をしていると、僅か三週間ほどで隣村の住人達が我が村に来た。


「受け入れていただき、ありがとうございます。私はファビア村の村長で、スペルヴと申します」


「これはどうも。僕はヴァン・ネイ・フェルティオ。今日から宜しくね」


 と、和やかに村長と挨拶を交わす。そして、奥の村人達に向きなおった。


「ようこそ、セアト村へ! 我々は皆さんを歓迎します! ということで、旅の疲れもあるでしょうし、今日はバーベキューで親睦を深めて、そのまま各家で寝てもらいます! それでは、バーベキュー大会を開始しまーす!」


 僕の開会宣言と共に、セアト村の住人達が歓声を上げて飲み物を配り出す。肉はすでに焼き始めているし、三百人が来ても大丈夫なように準備は万端だ。


 隣村の人達は戸惑いながらも肉が焼ける匂いに抗えず、会場の中へ散っていった。


 さぁ、初交流は大丈夫かな? 喧嘩とか無いと良いけど。


 そう思って見回りでもしようかと周りを見渡していると、アルテがテテテッと小走りに現れた。


「あの、ヴァン様。ご一緒に、どうでしょう……?」


 照れてる。


「ちょっと村同士の交流が気になってね。行儀は悪いけど、お肉食べながら一緒に歩くかい?」


「あ、は、はい! そうします!」


 華やかな笑顔を浮かべて隣にきたアルテに微笑んでいると、ティルとカムシンが笑顔で見ていた。


 何か言いたそうである。


「皆でお肉食べながら見回りしようか」


「はい」


「お伴します」


 こうして、保護者ティルを連れて領主子供会が見回りを開始する。


「……椅子が足りないな。あ、そこの力持ちそうなおじさん。椅子を三つ持ってきてくれない?」


「うぉ! ヴァン様!? い、椅子ですね、わっかりやした!」


 おじさんは慌てながら素早く動き、隣村の老人達に椅子を持っていった。


 うむ。中々良い動きだ。


「ありがとう、おじさん。良かったら今度作るセアト騎士団の騎士になってよ」


「へぁっ!?」


「考えておいてね」


「お、おっす! わ、分かりました!」


 おじさんは混乱しながらも大きな声で返事をする。


 よしよし、騎士団員を一人ゲットしたぞ。エスパーダより先に人員を確保せねば、寄せ集め騎士団みたいになってしまうからな。戦士として戦えそうな者は即勧誘である。


 そんなことを思いながら周りを見ると、隣村の住人達がこちらを見ていた。


「ん? 何かあったかな?」


 首を傾げると、住人達がこちらに寄ってくる。


「あの、領主様。私達にもその、仕事は無いでしょうか……?」


「何とか、暮らしていく手段がないと……」


「皆、貯えがないんです」


 口々にそんな陳情と不安を口にされ、なるほどと頷く。とはいえ、元々のセアト村の住人も仕事は最低限の田畑と討伐された魔獣の解体、素材の運搬などである。鉱石の採掘はまだ手が回っていない。


「そうだね。じゃあ、新しく始める店とか宿屋とかの経営をお願いしようかな。後は新しい田畑を耕してもらったりとかかな?」


 そう答えると、住人達は困ったように眉根を寄せる。


「田畑は大丈夫ですが、商売はしたことが無くて……」


「大丈夫、大丈夫。お客さんの相手とか商品の整理整頓とか掃除とか、色んな仕事があるからね。お金の計算とかは出来る人にやってもらうから大丈夫だよ」


 そんなフォローを口にすると、皆はホッと胸を撫で下ろした。


 よし。これでセアト村の住人から騎士団に沢山勧誘出来る。人員が多ければ出来ることが増えるから楽しみである。


 さぁ、急いで新たな町を作ろう!



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