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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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なんだと

 視界の端には、必死の形相でこちらに向かって手を伸ばすカムシンの姿。隣には一緒に僕と宙に浮いてしまったアルテの姿。そして、甲板を蹴って飛ぶパナメラとティルの二人が……。


 え? 甲板を蹴って?


 せめてロープか何か手に持って飛ばないと、海に落ちちゃうよ? というか、二人は泳げるのかな?


 スローモーションに見える光景の中で、思わず突っ込みを入れてしまう。そうこうしている内に、上に跳ね上げられていた船首が下がり始め、船尾から弾き飛ばされた僕とアルテ、甲板の床を蹴って飛んだティル、パナメラの後方で、沈み切っていた船尾が壁のように起き上がっていく。


 やばい。どう考えても海に落ちる。そして、海中にはあの巨大な魔獣がいるのだ。絶体絶命である。


 水。海水。だめだ。水素を集めてパナメラに燃やしてもらうことも出来ない。いや、そもそも、何か指示を出す時間などないではないか。せめて、僕を追って落ちてしまった三人だけでも、船の上に戻さなければ。


 船が傾いて投げ出された一瞬の時間に、自分でも信じられないほどの思考をしながら皆が助かる方法を模索する。しかし、それでも答えは出なかった。


 身体が海面に触れた瞬間、時間の流れは一気に加速してしまう。激しい水流に体が飲み込まれ、渦の中にいるように回転していると理解する。泳ぐどころではない。勢いのある水の流れは暴力的で、一切の抵抗を許さないのだ。


 二度、三度と海中を回転して光がぼんやりと薄くなったと感じた時、右手首に何かを感じた。水中で目を開けると、ぼやけた視界の中でひらひらとした白い布が揺れるのを見た。


 そして、巨大な黒い影が迫ってくる光景も……。








 風が頬を撫でる。指には水が触れる感覚。手の甲にはざらざらした感触があった。


 波の音だ。ぼんやりとした頭でそのことに気が付き、うっすらと目を開ける。


 青い空が目に入った。大きな白い雲がゆっくりと流れていく光景を眺めてから、首を回して視線を動かす。隣には、ティルの姿があった。少し離れているが、横向きに寝ているような恰好で目を閉じている。一部破けてはいるが、メイド服を着たままの状態だ。


 少しではあるが、腰から下に波が触れているのに目を覚まさない。


 大丈夫だろうか。心配になり上半身を起こしてティルの名を呼ぼうとした。すると、ティルの後ろにアルテとパナメラも倒れていることに気が付く。四人が、揃って等間隔で波打ち際に寝ているような状態だ。


 力が入らない足を拳で叩いて無理やり立ち上がり、三人の方へ歩き出す。


「……ティル? アルテ、パナメラさん……」


 一人ずつ肩を叩いて名前を呼び、呼吸していることを確認する。良かった。奇跡的にも全員が無事だ。それに、多少衣服が破れたり汚れたりはしているが、大きなケガもなさそうである。


「あの状態で、どうやって……」


 大きな魔獣による海中からの攻撃。いや、あの大きさだ。ただ船の底から体をぶつけただけなのかもしれないが、船首は跳ね上げられて、一撃で沈没寸前にまで陥ってしまった。そして、船尾が海面ギリギリまで下がった反動で僕たちは海中に投げ出された。無防備な状態で、海中にいる中で、確かにあの巨大な魔獣が僕たちの方へ向かってきていたはず……。


 どう考えても、反撃の余地もなく、ただ食べられるだけだったに違いない。何があったら、僕たちがあの状態で助かるというのか。


「……まさか、ディーが海中に飛び込んで魔獣を討伐したわけじゃないよね?」


 冗談交じりで呟いたことだったが、口にするとそれが一番可能性が高そうと思えてしまって恐ろしくなった。あのディーならばやりかねない。


 しかし、それなら今の状況は良く分からない。ここは砂浜だが、トリブートの砂浜であればどこからでも町が見えることだろう。しかし、そんなものは見当たらない。代わりに、あまり記憶にない尖った山と木々の緑が広がっている。


 海流に流されて、どこかに流れ着いた? それにしては衣服を着て海中に落ち、海面に浮くような素材も持っていない状況だ。普通なら流れ着くにしても溺死しているはずである。


「……だめだ。頭が働かな……?」


 右側頭部を片手で押さえるようにして首を左右に振り、掠れた声でそう呟く。しかし、台詞の途中で何かに気が付いて言葉を飲み込んだ。


 海面に、人の頭が浮いているように見えたのだ。


「まさか、カムシン……?」


 カムシンが僕たちを助けようと、遅れて飛び込んだのか。


 そう思って目を凝らしたが、どうも違うようだった。生首らしき丸い影は微かに音を立てて水中に消えた。その光景は、どこかで見たことがあったように思う。どこだったか。つい最近も、その光景は見たと思うのだが……。


「……あ、ラダヴェスタさん?」


 ようやくアプカルルの存在を思い出し、そう口にした。そうだ。アプカルル達は警戒している時、水面から顔だけを出して周囲の様子を窺う。つまり、あそこにラダヴェスタがいるはずだ。


 そう思ったが、ほんの一瞬見えた生首は、どうも髪の長い女性だった気がして首を傾げる。いや、女性でなかったとしても、ラダヴェスタではなかった気がするのだ。


「……誰?」






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