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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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ヤルドとセストの現在

 書状の内容は予想通り、ロッソ侯爵の領地に再びフィエスタ王国より使者が現れたというものである。ただ、どうも現れた使者がトランではなかったらしい。それだけが予想外であり、少し気になるものだった。


 それよりも、今はヤルドとセストの現状の方が気になる。


 セストに付いてきたフェルティオ侯爵家の騎士達からそっと話を聞いたのだが、フェルティオ侯爵家は窮地に陥り、ヤルドとセストはその責任をとって走り回っているそうだ。


「……ここだけの話ですが、騎士達の中にはヴァン様の騎士団に入れないのかと話す者もおります。勿論、騎士として主君が危機にある時に逃げるのは、やはり騎士道精神に反することであるという意見が大半だと思います。ただ、私もそうですが、前回のセンテナでの防衛戦があまりにも印象的でした。国境騎士団と同様に我が騎士団も千人を超える死亡者が出ております。対して、ヴァン様の騎士団は被害が全く無く、パナメラ子爵の騎士団も殆ど死者は出ていないと……」


「あ、パナメラ伯爵だよ。伯爵って言わないとめっちゃ怒るよ。逆に伯爵様ーって呼ぶと超上機嫌になるよ」


「そ、そうでした。申し訳ありません。肝に銘じておきます」


 そんなこんなでフェルティオ騎士団の兵士長から情報を得た。ちなみにセストは領主の館に泊めず、クサラホテルの最上階に押し込んでいる。本人も出てきたくないのか、部屋に閉じこもっているとクサラの奥さんであるフラミリアから聞いた。


「……ヤルド様はロッソ侯爵家と王家との連絡役。セスト様はフェルティオ侯爵家と王家、そしてヴァン様への連絡役、ということですね」


 ティルが複雑な顔でそう呟くと、アーブとロウが腕を組んで唸る。


「ヤルド様とセスト様を幼い頃から知ってるから複雑だよなー」


「上級貴族の子息がそんな役回りになることってあるのか?」


「少しでも陛下からの印象を良くしたいから、苦肉の策じゃないか?」


 ティルの呟きを聞いて、アーブとロウもなんとも言えない顔でそんなやり取りをした。


 フェルティオ侯爵家で働いていた人物からすれば、侯爵家の地位が危ぶまれる現状は複雑だろう。しかし、ディーやエスパーダは普段と変わらない様子だった。


「うむ! 確かに気にはなるが、今はヴァン様の部下として全力を尽くすばかりである! ヤルド様とセスト様はまだ十代! それに、フェルティオ侯爵家の騎士団にはストラダーレもおるからな! やがて以前のような強靭なフェルティオ侯爵家が復活するであろう!」


 そう言って豪快に笑うディーと、その言葉に静かに頷くエスパーダ。


「ジャルパ様はまだ五十代前半ですからな。ヤルド様とセスト様にも十年は時間があります。良い経験と良い学びがあれば大きく成長されることでしょうな」


 と、二人はベテランらしい大らかさで余裕を見せた。ただ、内容としては今のヤルドとセストは未熟であると言っているようなものなのだが。


 そんな皆の様子に苦笑していると、領主の館に来客が訪れた。


「ヴァン様! 護衛は必要ですか!?」


「オルトさん、どうしたの?」


 現れたのは現在、セアト村最強の冒険者であるオルトである。後ろにはプルリエルの姿もある。村に戻ってからはダンジョン攻略の為に留守にしていた筈だが、タイミング良く戻ってきていたのだろうか。


 そう思って尋ねたのだが、オルトは興奮した様子で頭を下げてくる。


「お願いします! 今度の護衛依頼が成功したら、報酬は武器にしてください!」


「へ?」


 オルトの突然の申し出に首を傾げる。すると、後ろに立つプルリエルが困ったように眉を八の字にして答えた。


「すみません、うちのリーダーが……ダンジョンを攻略していたんですけど、現在最深部である五階層に凄く硬い魔獣が出てきて」


 プルリエルがそう口にすると、オルトが勢いよく顔を上げた。


「半日! 半日戦い続けて食料も無くなって…もうすぐ勝てそうだったのに……!」


 そう言って、オルトは拳を握って肩を震わせる。どうやらとても悔しかったようだ。まぁ、モヒカン冒険者達も言っていたが、ダンジョン攻略は大変らしいから仕方がない。数日ダンジョンに籠れるように食料から消耗品、武具の替えなどを準備して、進む判断も戻る判断も命懸けとのこと。ギリギリまでダンジョンの深部に挑戦して、帰り道で息絶えるなんて話もざらだという。恐ろしい場所だなぁ。


「そっかぁ……ミスリル製の剣でも駄目となると、もしかしたら魔術が弱点だったり?」


「どうでしょう……火の魔術を使えるものはいなかったので分かりませんが、水や風は駄目みたいでした」


 安易な考察もプルリエルの回答で否定される。この様子なら、火矢なども試しただろうし、別の方法を試す方が良いだろう。


「ハンマーとかの衝撃とか、黒色玉とか……」


「それは試してませんが……確かに」


 色々別の手を考えて口にすると、オルトも成程と頷く。だが、気持ち的にはどんな相手も切り裂く武器は魅力的だ。


「……まぁ、それはともかく、超強い武器は僕も気になるからね。ちょっとやってみようかな」


「ほ、本当ですか!?」


「良かったわね、オルト」


 面白そうだからと了承し、オルト達は喜ぶ。それに笑いつつ、ミスリルに勝てそうな素材を思い返す。そういえば、一度カムシンの武器が弾かれたことがあったな。あれは何で出来ていたんだろう?


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