求人って難しいよね
そういえば、ヴァン君は数々の求人を目にしたことがあったではないか。そう思い、今度は真面目に看板の内容を考える。
「……新しく住んでくれる住人と、城塞都市ムルシアに移住する住人の記録を取る人かな。この仕事が単純だけど時間がとられるやつだし、一番良いと思う」
そう告げると、エスパーダは頷いて口を開いた。
「それは良い案かと……いずれはその業務を次の人材に教え、別の仕事に移ってもらう方が良いかもしれませんな。そうすれば、やがて十分な数の人材が生まれることでしょう」
「そうだね。じゃあ、募集する業務の分だけ看板を増やしてみよう。そうすれば選べるし、安心感も更に倍」
「倍かどうかは分かりませんが、良案かもしれませんな」
「よし! それじゃあすぐに実行だ!」
エスパーダに褒められて浮かれながら準備を開始する。今度こそ、目指せ人手不足解消である。
ちなみに内容と一緒にタイトルも大きく変えた。
タイトルは、『新規住民登録担当者募集!』
内容は『誰でも覚えることが出来る簡単な業務です! 読み書きと簡単な計算ができれば大丈夫です! 少しでも気になった人は領主の館までお訪ねください! 話を聞くだけでも問題ありません!』といったもの。業務内容が簡単と書いているので、これで訪ねて来る人も出てくると思う。
「後は、給料は応相談とか、頑張れば城主も目指せる職場です、みたいな……」
「それは止めておきましょう」
「えー」
エスパーダと多少意見のズレはあったが、それでもとりあえずOKは出た。まぁ、良しとしよう。
「さぁ、立て看板を設置だ! 追加もしよう!」
「はい!」
「いっぱい立てて!」
「はい!」
カムシンに指示を出すと、その日の夕方には全ての看板の設置が終わった。
「ありがとう! 何個立てたの!?」
「各城門、広場、各通り、合計で三十個立てました!」
「ちょっと多過ぎる気がするけど、良し!」
「はい!」
こうして、後は志願者を待つだけとなった。さて、どうなることか。
次の日の朝。朝日が窓から室内に差し込み、小鳥さえずる朝の音が聞こえてくる。昨日頑張ったからだろうか。昨晩はぐっすり眠れて朝の目覚めもスッキリだ。さて、ティルが来る前に着替えて驚かせてみようかな。
そんなことを考えながらベッドから下りて背伸びをしていると、廊下をトタトタと足音を立てて迫る誰かの気配を感じた。ティルである。もしかして、今日は寝坊したのかな? なるほど、それで僕の方が早く起きたのだろうか。
「ヴァ、ヴァン様……!」
「あ、おはよう。ティル、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。僕はもう十歳だからね。一人でも起きれるのさ」
十歳の余裕を見せて微笑とともに慌てるティルを落ち着かせようと声を掛ける。しかし、ティルは残像が残るほどの勢いで首を左右に振ってイヤイヤした。可愛らしい。
「ち、違うんです、ヴァン様! 求人への応募者がいらっしゃいました!」
「おお! 早速効果が! やったじゃないか!」
両手を上げて喜んでいると、ティルは再び首を左右に振ってイヤイヤした。あざと可愛い。
「そ、それが! 百人以上の志願者が……!」
「へ?」
なんと言ったのかな? 思わず、聞き返しそうになった。だが、十人前後ならティルはこんなに慌てないだろうと思い直す。
「……百人って、全員セアト村の人? そんなに無職の人がいたの?」
天才少年のヴァン君は焦らないのだ。そんな雰囲気を頑張って発しながら、冷静に尋ねる。ティルは僕の着替えを持ってきながら首を左右に振った。
「いえ、話を聞くだけでも良いという言葉で、応募を控えていた女性の方やご年配の方も訪ねてきたみたいで……まだまだ増えているみたいですが、看板を撤去しますか?」
「……いや、折角だから、全部の志願者と会ってみようかな。ついでに、セアト村の状況とか今後についても聞いてみよう」
ピンチをチャンスに! 前向きかつ聡明な天才少年ヴァン君はすぐさま気持ちを切り替えた。もうなんでそんなに急に増えるの、どうしよう、なんてことは考えない。
「即戦力の人材なら何人いても良いんだし」
ティルに着替えさせてもらいながら誰にともなくそう呟いた。
「はい! バッチリです!」
「よし、行こう!」
「はい!」
僕達の戦いはここからだ!
そんなノリでティルを連れて寝室から飛び出す。これから百人以上と面接するのだ。気合を入れねばならない。終わったら領主としての通常業務をやって剣術の訓練をして昼食。そして再び通常業務。夕食を食べたらエスパーダとお勉強だ。
今日の晩御飯、なんだろう……。
僕は頭の片隅で現実逃避をしつつ、応接室を目指したのだった。
新作『転移者が双子を育てると……』を掲載しています!
7月22日~7月29日までの間に14話投稿!
是非読んでみてください(*'ω'*)
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