ヴァン君歓迎会
「さぁ、王家が認める料理人たちが腕によりをかけた晩餐だ。余すことなく堪能してくれ」
「ありがとうございます!」
王城を見て回って、最後に異常に天井が高い食堂で晩餐会が開催された。二十人はゆったり座れる長いテーブルに料理が隙間なく並んでいる。ちなみに、それぞれに給仕が付いているが、僕の給仕にはティルが胸を張って……いや、肩に力を込めて挑んでくれている。かなり緊張しているようで、他のメイド達を横目にちらちら見ながら鼻息荒く背後に立っていた。
一方、僕は見たことのない料理を幾つも見つけてウキウキが止まらない状態である。
「あ、これも美味しそう。ティル、これも一口分頂戴。あ、そんなに盛り付けを凝らなくても……」
「もう少しお待ちを……よし、最後にこのトルク葉を載せて……」
何の対抗心なのか。ティルは料理を一品ずつ取り分ける度にショーウィンドウに並べれそうなくらい丁寧に盛り付け直して出してくれた。とても綺麗だが、僕は早く次の料理を食べてみたいのである。
「うん、美味しいよ。ティル、ありがとう」
「いえいえ! さぁ、次はどの料理が良いですか?」
とはいえ、ティルへの感謝を忘れてはならない。そう思ってありがとうと伝えたところ、ティルが輝くような笑顔で皿を片手に持ち、やる気満々のポーズをしている。
そんなやり取りを見て、陛下やパナメラが声を出して笑った。
「はっはっは! いつもと違う空気だが、こういう晩餐も悪くないな!」
「陛下。ヴァン子爵の領地では晩餐会はこれが通常です」
「おお、それをいつでも楽しめるパナメラ卿が羨ましいな。そうだ、新しい領地はどうだ? 初めての自領であろう」
「素晴らしい地を任せていただき、感無量です。今後、我が領地は更なる発展をし、スクーデリア王国にとってだけでなく、イェリネッタ王国を監視していく上でも重要な拠点として機能するでしょう。その重大な責任を見事に果たせるよう、全力で取り組む所存です」
陛下からの質問に、滅多に見ない丁寧な対応をするパナメラ。それが妙に面白い。猫を被るパナメラさん、プライスレス。被っている猫の皮を脱いだら灰塵の女帝である。とんでもない話だ。猫カフェなら詐欺に他ならない。
そんな間の抜けたことを考えつつ、ティルがよそってくれた新しい料理を口に運ぶ。
ぷちぷちした歯ざわりの少し塩気のあるサラダだ。野菜はパリパリで噛むと甘味があって美味しい。あれ? 居酒屋メニューかな? 居酒屋ベルリネートは焼き鳥は無いのか。あ、こっちの香草焼きがめっちゃ美味しい。皮は焼けてパリパリしており、噛み切ると柔らかい肉が肉汁を口の中に溢れさせる。濃厚な旨味を引き立てるようにピリ辛の味付けにしてあるのが更に良い。この居酒屋は当たりである。
「おお、ヴァン子爵も楽しんでくれているようだな」
ニコニコしながら食事を楽しんでいると、陛下が満足そうに頷いてそう言った。すると、隣で真顔で食事をしていたアペルタが顔だけで振り向く。
「陛下。そろそろフィエスタ王国についても話をしては?」
「ふむ、そうだな……食事の最中だが、ちょっと良いか」
「あ、ふぁい」
「少年、早く口の中の物を飲み込んでしまえ」
「……よし、飲み込みました」
パナメラに言われて慌てて食事に一段落付けると、陛下は苦笑しながら頷いた。
「緊張感が無いが、これぐらいがちょうど良い」
そう前置きして、顔を上げる。
「……それで、二人の感じた通りで構わん。フィエスタ王国をどう見る? 今後についても意見を聞かせてもらいたい」
陛下は声のトーンを落としてそう尋ねてきた。それに、先にパナメラが姿勢を正して答える。
「はっ! 海洋国家というだけあり、海上では現在最も力のある国家だと感じております。陸地で戦えば決して負けませんが、海上で戦闘をするのは避けた方が良いかと……また、今後については早急に同盟を結ぶべきと感じております。こちらで言うところの騎士団長クラスの者一人と話しただけですが、海の男らしい実直な性格だと判断しました。そういった者が部隊を束ねる長として任される国は、私の経験上しぶとくて相手にするのは面倒極まりないと思います」
戦いに焦点を当てたパナメラの意見に、陛下は深く頷いた。そして、次に僕に目を向ける。
「して、ヴァン子爵はどう思う?」
陛下がそう告げると、皆の目がこちらに向いた。その視線を感じながら、陛下の言葉に別の観点から僕はフィエスタ王国について考えてみる。
前々から書きたかった新作を掲載しました!(*'ω'*)
タイトルは『僕の職業適性には人権が無かったらしい』です!(*'▽')
https://ncode.syosetu.com/n9491kf/
是非読んでみてください!・:*+.\(( °ω° ))/.:+




