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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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トランの帰宅と航海の検討

 トランの言葉は誠実であり、信頼に足る熱意が感じられるものだった。ロッソはこちらでもスクーデリア王国国王陛下に、フィエスタ王国との同盟を前向きに考えてもらえるように根回しをすると伝えた。まぁ、イケイケなディーノ・エン・ツォーラ・ベルリネート陛下ならば大型船を見ただけで許可を出しそうである。


 それから二日間は出航の準備ということでトランも忙しそうにしており、あまり会話をする余裕もなかった。気が付けばトランが出航する日となり、皆で港まで見送りに行った。


 ちなみに、トリブートの町の海岸部分はこの二日間で大きく変化していた。最初に作っていた大型船用の桟橋は二隻まで対応可能なのは変わらないが、その桟橋に向かう途中に中・小型船用の埠頭が作られており、そこには試作品として作ったヴァン君特製中型船が二隻係留されている。トランに教えられた造船技術を更に自分なりに改良してみたが、中々上手くいかなかった。やはり数百年も船を研究してきた国の技術には簡単には追い付けそうもない。


「……もっと船のことを教えていただきたかったです」


 出航前の挨拶でそう告げると、トランは苦笑とともに返事をする。


「大丈夫です。早急に王国に帰り、良い返事を持って戻ると約束しますよ」


「本当ですか? 最短だと一か月くらいで戻ってきます? それなら僕達も急がないと」


「い、いや、流石に一か月での往復は難しいかと……」


 期待を込めて確認したのだが、トランは困ったように笑いながらそう言った。残念無念。


「ヴァン卿、無茶を言うものではない」


「私たちも陛下に謁見するまでに一か月以上要するだろうさ」


 ロッソとパナメラに窘められて、仕方ないかと無言で首肯する。目の前に様々な可能性を孕んだ面白いものがいっぱいあるというのに、本当に残念である。こんな気持ち、子供の頃に大好きだったゲームの続編が出ると聞いてワクワクしていたら一年の延期が決まってガッカリした時以来である。仕方がないこととはいえ、開発者の皆さんには限界まで頑張ってもらいたい。お金は倍払います。


「よし、それでは出航する! 帆を張れ!」


「はいよ!」


 甲板に戻ったトランが船員達に指示を出すと、気合の入った声が甲板のそこかしこで響いていた。フィエスタ王国が誇る軍船、フリートウード。その白銀に輝く船は見るからに特別だ。めっちゃ格好良い。


「……そういえば、銀色に輝いていて格好良いけど、今日は晴天だから目が痛くなりそうだよね。太陽の光が死ぬほど反射しそうだけど」


「え? なんですか?」


「いや、なんでもないよ」


 ティルに聞き返されたが、離れていくフリートウードに手を振りながら笑って誤魔化しておいた。


「……凄い船でしたね。海の向こうに国があるなんて、思ってもみませんでした」


 アルテも感慨深そうにそう言いながら、離れていくフリートウードを見守っている。パナメラはアルテの言葉に笑みを浮かべ、腕を組んで口を開いた。


「面白いな。だが、いずれはあの船も我がスクーデリア王国で運用されるようになる……そうだろう、少年?」


 パナメラにそう言われて、苦笑しながら肩を竦める。


「そうですね、と言いたいところですが……あの金属板が何なのかが分からないとどうしようも無いですね。見た目だけなら真似できますが」


 そう答えると、傍で聞いていたロッソが肩を揺すって笑った。


「はっはっは! あの大型船を真似して造れるだけでも十分過ぎることだよ。陛下もさぞ驚かれることだろう」


「確かに……まさか一日で船を造られるとは思っておりませんでしたし」


 ロッソの言葉にタルガですらそんなことを言う。


「いやいや、いつも砦とか家とか建ててるからね」


 タルガにそう言うと、乾いた笑い声が上がる。


「は、はは……城大工が船を造れないように、知識と経験が無ければヴァン様といえど船を造ることは難しいと思っておりました。それが、まさか見ただけで試作品を作ることが出来るとは……」


 そんな感想に対して、不服を込めて大きく溜め息を吐く。


「結局、形だけだからね。ただ、なんとか近海の航海くらいは出来るかなぁ……」


 そこまで呟いて、良いことを思いついた。そうだ。船で王都に行こう。


「そうだ、船で王都に行こう!」


 思ったことをそのまま口に出してしまった。それにロッソやパナメラが振り向く。


「船で、かね? 流石にそれは容認できないな」


「それはいくらなんでも無謀だ、少年」


 二人は難しい顔で否定的な意見を口にした。僕は口を尖らせて不満を前面に出す。


「えー。船で王都まで行ったら陛下が凄く驚くと思うんですが……」


「驚かせたいだけじゃないか」


 呆れた顔でそう言われてしまった。


「船を動かす術については不十分だ。まともな航海にはなるまいよ。下手をしたら船を沈めてしまうかもしれない」


 ロッソにも追撃されてしまい、黙る他なくなってしまった。これは、一刻も早くトランに戻ってきてもらわなくてはならないだろう。ちなみに、次のフィエスタ王国からの来訪で別の使者が来るかもしれない可能性を考慮し、フリートウードを真似て作った大型船は一度ウッドブロックに戻すこととなった。二重に残念である。




前々から書きたかった新作を掲載しました!(*'ω'*)

タイトルは『僕の職業適性には人権が無かったらしい』です!(*'▽')

是非読んでみてください!

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