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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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説明しよう!

 急造した大型船と大型船着桟用の桟橋。この二つを見て、トランは目を剥いた。同時に、かなりの好印象を抱いていたスクーデリア王国や我々に対して強い不信感を持っているようだった。


 まぁ、造船技術で大きな後れをとっている国として侮っていたら、あっという間に大型船と桟橋が出来ていたのだ。海洋国家フィエスタ王国からすれば不意打ちのように脅威となる国が現れた形だ。恐らく、ロッソ侯爵が嘘を吐いていたと勘繰っている。


 そういうことで、今から予定していた通り、トランの疑念を晴らすフェーズへと移る。


「トランさん。多分、信じられないことばかりだと思います。なので、是非一緒に船に乗ってみていただけませんか?」


 そう告げると、トランは複雑な顔でこちらを見た。一方、パナメラとアルテ、ティルは僕の作った船に乗りたくてウズウズしていた。カムシンは桟橋の上の小さな揺れでも気持ちが悪くなってしまったらしく、ちょっと青カムシンになりつつあった。


 そして、珍しくエスパーダがこちらの会話を聞きながらずっと船を見つめていた。物凄く乗ってみたいらしい。


 すぐには答えないトランに対して、替わりにロッソが口を開く。


「……ふむ。正直、この目で見ていながら私も驚いているところでね。トラン殿と一緒に説明を聞く予定だが、どうかね? もちろん、部下は何人連れてきてもらっても構わないよ」


 ロッソがトランにそう言うと、ようやく顎を引いて首肯する。


「……承知いたしました。部下五名を同行させてください」


 それだけ言って、トランは真剣な顔で僕の作った大型船を見上げた。


「あ、乗船してくださいますか? それでは……ディー! 足場を下ろしてー!」


「了解しました!」


 準備が出来たと判断して、甲板で待機していたディーへ声を掛ける。すぐに返事があり、甲板からは階段状のラダーが降ろされた。桟橋の上に設置された階段を見て、ロッソが満足そうに頷く。


「これは登りやすくて良い」


 そう言って登っていくロッソに続き、パナメラやタルガが登っていった。先にトランに登ってもらおうと待っていると、トランは部下達と一緒に階段を見上げて口を開く。


「……甲板の上に吊り下げ式の階段を立て掛け、必要な時に降ろす。これも、ヴァン様が?」


「はい! 頑張って考えました! 後は、船体の横に滑車を設置することも考えましたが、あまり船の横に色々取り付けると、高波が出たら壊れちゃうかもしれないので泣く泣く保留に……」


 苦笑しつつそう告げると、トランは微妙な顔で深く息を吐き、すぐに甲板へと登っていった。トランに続いてトランの部下達も登っていったので、残ったのは僕とアルテ、ティルとカムシン、そしてエスパーダの五人だけである。


 いや、船には乗らないが、ロッソやパナメラの騎士団の団員達は桟橋で待ってくれていた。


「それじゃあ、僕達も乗船しようかな」


「は、はい」


 乗船を告げると、カムシンが青い顔のまま返事をする。最早、陸地に残っていても良いと伝えるのも可哀想だ。せっかくした決意が揺らいでしまうかもしれない。そう思い、カムシンに頷きを返す。


「頼りにしているよ」


「お、お任せください……」


 本当に任せて良いのか不安になりそうな弱々しい声だ。それに笑いつつ、皆で甲板へと登っていく。


 甲板に上ると、ロッソやパナメラも興味深そうにマストに触ったり船の上から周囲を確認したりしていた。タルガも興奮した様子で海を見下ろしている。


「ヴァン様、これはまるで動く要塞です。防御力が高ければ、どこからでも敵国を攻撃することが出来ます。これは凄いことですよ」


 タルガが興奮した様子でそんなことを言ってきた。確かに、甲板まで上がると二階建ての建物の屋上くらいの高さはある。そこからバリスタや魔術で陸上の砦を攻撃出来るとなると恐ろしい。


「船の長所ですよね。後は攻撃の距離ですね。船側の方が遠距離から攻撃出来るなら、一方的に攻撃をすることが可能になります。こんな船を何十隻も持っているフィエスタ王国は今後どの国も無視できないほどの大国になると思いますよ」


 そう言って笑うと、タルガは心配そうに船の確認をするトラン達を見た。


「……下手をしたら、そのフィエスタ王国が敵になる可能性もありますね」


 タルガがそう呟くと、どこから話を聞いていたのかパナメラも混ざってきた。


「さぁ、少年の腕の見せ所だ。いつも通り、味方を増やしてみせろ」


「いやいや、いつからそんなイメージに……」


 パナメラの無茶振りに苦笑しつつ、真剣な顔で帆の状況を確認するトラン達の下へ向かう。青い顔をしながらもカムシンも付いてくる。とはいえ、ディーやエスパーダもいるのだから大丈夫だろう。少し休んでいても良いと思うのだが、真面目である。


「トランさん」


 名を呼ぶと、トランはハッとした様子でこちらに顔を向けた。


「見てお分かりだと思いますが、船の機能の殆どはフリートウードの造りを参考にさせていただきました。ぶっちゃけると、見える範囲はほぼ全てフリートウードと同じだと思います」


 そう告げると、神妙にトランが頷き返す。


「……確かに、フリートウードにそっくりだ。設置してある銛の射出機は全く違う形状となっているが……」


 そう言ってトランが船の両サイドに設置されたバリスタを指差す。元の銛の射出機とやらは幅が狭く、あまりコントロールが良いとは思えなかった。なので、こちらは改造してヴァン君特製のバリスタを並べてみたのだ。


「これはスクーデリア王国独自の兵器です。バリスタですね」


「……良かったら、試しに撃ってもらえないか」


「ええ、いいですよ」


 二つ返事で答え、手前にあったバリスタ一台を使う。向ける先は少しだけ離れた場所にある大きな岩である。


「発射!」


「はっ!」


 僕の指示と同時にディーとカムシンがバリスタを準備し、発射した。岩へ無事に命中し、上半分がその威力で砕ける。これにはトランも目を丸くしてしまう。


「……なんだ、その威力は」


 どうやら驚いてくれたようだ。よしよし、それでは船の中身を見てもらうとしようか。


 ドッキリ成功という気持ちでウキウキしながらその旨を伝えると、トランは緊張した面持ちで顎を引いたのだった。





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