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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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晩餐会

 場所を移し、城塞都市カイエンの新しい食堂にテーブルを並べて晩餐会が始まった。


 お城の改築から兵舎の改築まで働き過ぎて思考が停止していたが、料理はいったい何処で作ったというのか。いや、なにか準備は出来ているみたいな話をしていた気がするので、もしかして後は焼くだけとかにしていたのかな?


 そんなことを思いつつ、食堂内を軽く見回す。先ほど作ったばかりの真新しいテーブルは少しディティールに拘り過ぎてしまったが、思いのほか食堂の雰囲気に合っていた。幅の広い大きなテーブルにはパナメラやゼトロス達、更に僕とアルテ、ディー、ベル、ロザリーが座る。


 城塞都市の改修が始まってからパナメラは終始笑顔だが、真新しいテーブルに座ってウキウキしている姿を見ると完全にお誕生日会状態だ。是非とも歳の数だけロウソクを刺したケーキを準備したいところである。


 ご機嫌なパナメラは嬉しそうに皆を見回し、口を開いた。


「いや、今日は皆ご苦労だった。特に、ヴァン子爵には大きな働きをしてもらった。今後もよろしく頼む」


「一カ月ですよ? 一カ月は頑張ります。終わったら帰ってからバーベキュー大会の予定なんで」


「もちろんだ。半年後にはまた来てくれるのだろうから、笑顔で送りだそう」


「いつになるかはまだちょっと……」


 そんなやり取りをしていると、ゼトロスが咳払いをして口を開いた。


「パナメラ様。ヴァン様とのご関係は大変重要かつ貴重なものと思っております。あまり無理を言って関係性を悪くしてしまってはいけません。この街で仕事をしている建築関係者も多くおりますので、その者達が干上がってしまわないように業務を分散させるべきかと愚考いたします」


 ゼトロスがそう告げると、パナメラは少し面白そうに返事をする。


「なるほど。良い案だ。その者達を使う場合、どれくらいの速度で街の改修が進む?」


 パナメラがそう問いかけると、施設を管理しているトマスが頷いて答えた。


「一つの住居を建てるのに、およそ一カ月ほどとなります。三階建てにするならば一カ月半ほどでしょうか」


 その言葉に、一番に僕が驚いた。


「へぇ、一カ月! 早いですね!」


 素直な感想だったのだが、トマス達は苦笑を浮かべる。


「いえ、ヴァン様の建築速度の足元にも及ばないかと……」


 恐縮した様子でそう言われて、思わぬところで罪悪感に苛まれた。


「木材を加工して、土台を作って柱を立てて、壁や天井を作っていくんでしょう? 一カ月は凄いですよ。屋根とかはどうしてるんですか?」


「石を手のひらの厚さで切った石材で屋根を作るか、特殊な粘土を固めて焼いた物を使います」


「おお、瓦……それなら、建物を建てている間に瓦屋さんが屋根材を用意しても間に合うのかな? 石造りの建物とかは作らないんですか?」


「石造りは城や教会など、大きな建物を作る場合でしょうか。住居などは壊す必要がある時もありますし、すぐに建てられて補修も簡単な木造が多いと思います。最近ではレンガ造りの建物も増えておりますが、こちらは冒険者ギルドや商会などの組織が建てる建造物に多く用いられます。多少、時間と費用が多くなってしまうせいですな」


 気になったことをどんどん尋ねると、トマスが全て答えてくれる。嬉しい。


「壁材を強く補強して柱抜きで家を建てたりしてみました? 多分、工程が減って建築も早くなると思うんだけど……」


「え? 柱を抜いてしまうのですか? それは、強度が……」


 すっかり二人の世界という感じで盛り上がっていたのだが、パナメラから強く咳払いをされて口を閉じた。


「もう料理も全て並んだことだし、そろそろ良いか?」


「え?」


 パナメラに言われてテーブルを見ると、そこには肉、魚、野菜、果物とテーブルに隙間が無いほど様々な料理が並んでいた。いつ注がれたのか、コップに入ったフルーツジュースまで目の前に置かれている。


「いつの間に!?」


「さっきから何人も従者が出入りしていただろう」


「全然気が付きませんでした」


 正直にそう答えると、皆の笑い声が室内に響いた。ひとしきり笑い合うと、パナメラは乾杯の挨拶を簡単にして晩餐会が始まる。


 真っ先に手を伸ばしたのは良く焼けたお肉である。料理に顔を向けると、メイドの一人が隣に来て肉を切り分けてくれた。香ばしい香りが食欲をそそる。早速フォークで刺して口に運ぶと、パリパリに焼かれた皮と柔らかい肉の食感。そして、溢れるような肉汁とペースト状に塗り付けられた甘辛い調味料が口の中で混ざり合って何とも言えない絶妙な旨味を感じさせる。ご飯が食べたくなる味だ。


「ヴァン様、お野菜もご一緒に」


「あ、うん」


 そんな声に振り向くと、ティルも従者達に混ざって僕の料理を運んでくれていた。次に食べようと思っていた魚とパンも一口サイズで切り分けてくれている。


「流石だね。僕が食べようと思っていたものばかりだよ」


 そんな感想を述べると、ティルは胸を張ってドヤ顔で笑った。


「もちろんです! 私がヴァン様の専属メイドですからね!」


 その様子に、城で働く従者達もほんわかした様子で微笑む。どの料理も美味しかったが、何よりも皆で笑い合いながら食べられることが幸せだった。


 パナメラやディーは酒を呑んで戦場での話なぞをしているが、とても楽しそうだ。アルテも最初は緊張した様子だったが、今はティルに料理についての話を聞き、満足そうに食事を楽しんでいる。


 そんな皆の雰囲気を直に感じて、ゼトロス達も少しずつ緊張を解いてくれたように感じたのだった。






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