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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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城塞都市カイエンに着いたら…

コミカライズ版で急遽命名したイェリネッタ王国第三王子と名前が被ってしまい、

パナメラの部下が一名、改名することとなりました。。。

ごめんね、ライゾン……





 城門まで移動すると、何も言わずとも門が勝手に開き始めた。そして、城壁の上から聞きなれた女傑の声が降ってくる。


「おぉ! 少年! ようやく到着したか!」


 見上げると、ちょうど正面の城壁の上からパナメラが顔を出していた。その横には十数人ほどの見知らぬ男達の姿がある。パナメラ達に手を振りながら城門を抜けて城塞都市に入場すると、すぐ後にパナメラ達が下りてきた。


「遅いぞ!」


「えぇ!? きっちり約束通りの時期にセアト村を出発しましたよー!」


 パナメラのとんでもない苦情に反論すると肩を揺すって笑った。


「まぁ、許してやろう。それでは、さっそくだが新しく部下となった我が街の管理者たちを紹介する!」


「へ?」


 予想外の言葉に首を傾げていると、パナメラが一歩横に移動して後ろに並ぶ男たちを見やった。すると、五十代から三十代ほどの男達が神妙な顔つきで前に出てくる。


「ウェスタです。城塞都市カイエンの住民の管理をしております」


「バラットと申します。城塞都市カイエンの予算、税の管理をしております」


「トマスと申します。城塞都市カイエンの各施設の管理をしております」


「ビルトです。城塞都市カイエンの議会の議長をしております」


「ベルビールと申します。この度、パナメラ騎士団の副騎士団長を拝命いたしました。命を賭して、パナメラ様の為に戦う所存です」


 次々に自己紹介をしてくる街の重鎮達。人、税と予算、施設、議会、騎士団の管理者とその補助者という位置づけのようだ。それらの自己紹介が終わってから、背が高く細身の灰色の髪の男が口を開いた。


「……最後となりますが、ゼトロスと申します。この城塞都市カイエンの代官を拝命いたしました。以後お見知りおきを」


 と、最後の挨拶が終わった。


「あ、僕は隣の領地に住んでます! ヴァン・ネイ・フェルティオです! よろしくお願いします!」


 最初が肝心だと思い、明るく元気に自己紹介をしておく。すると、おじさん達が顔を見合わせた。


「……ヴァン卿。噂で十歳にも満たぬと伺っておりましたが、まさか本当に……」


「本当に子どもなのか……」


「こちらこそ、よろしくお願いいたします」


 ざわざわとおじさん達が騒がしくなる中、ゼトロスが代表するように返事をしてくれた。


 その全員を順番に眺めてから、パナメラに視線を戻す。


「あれ? そういえば、パナメラさんの騎士団の人が代官をしないんですか?」


 そう尋ねると、パナメラは口の端を上げて頷いた。


「僅か三週間足らずだったが、十分に教育したつもりだ。これで不正を働く者や反乱を企てる者が出たら自分はまだまだだったと大きく反省し、改めて体制を大きく変えるとしよう。もちろん、そんな手間をかけさせた者には死すら生温い地獄が待っているが……」


 パナメラがそんなことを呟くと、これまで街を管理してきたであろう重鎮達は揃って俯く。心なしか顔色が土気色になっているが、気のせいだろうか。


「……それなら大丈夫そうですね。それにしても、初めて来ましたが良い街ですねぇ」


 苦笑しながら返事をしつつ、改めて街並みを眺めた。古く武骨な雰囲気の街並みだが、歴史がある感じを受ける。道は清掃が行き届いているし、建物も綺麗なものだ。古くとも、しっかりと管理されてきたに違いない。


 しかし、パナメラは腕を組んで眉根を寄せた。


「まだまだだな。私の名を冠した城塞都市だぞ? 誰もが羨むような街にしたい」


「……嫌な予感がしますが、一応聞いておきます。どんな構想でしょう?」


 不安になりながら質問をすると、パナメラは肉食獣のような笑みを浮かべて口を開く。


「それを今から話し合うのだ! さぁ、ビルト議長! 議会を開くぞ!」


「はっ、承知いたしました。すぐに準備をいたします」


 五十代中頃だろうか。貫禄のある雰囲気のビルトが、まるで軍隊のように背筋を伸ばして返事をした。





 街の中を移動する間、誰もパナメラに声を掛ける者はいない。また、当然かもしれないが、騎士団を連れて入場しているヴァン君一行にも誰も声を掛けてこない。


「……なんか、怖がられてる気がする」


 そう呟くと、僕の馬車を守るように馬に乗って移動していたディーが軽く顎を引いた。


「もちろん、恐れられておるでしょうな。なにせ、それまで圧倒的な力で近隣を飲み込もうと勢いづいていたイェリネッタ王国と、一段劣るとはいえ大国の一つであるシェルビア連合国がまとめて撃退されて属国となったのです。その戦での武闘派貴族が二人も街に来れば戦々恐々となるのは仕方のないことですぞ」


「パナメラさんと……僕も!? 僕は武闘派じゃないよ、絶対!」


 ディーの言葉を驚いて否定するが、笑い飛ばされてしまう。


「わっはっはっは! 城塞都市カイエンはもうスクーデリア王国の一部となりました。今回の戦いで最も軍功を上げた二人が来ているということは承知しておることでしょうな」


 軍功一位が僕で三位がパナメラである。確かに、戦で功労者として認められた第一位と第三位が揃ってきたのだ。それだけ聞いたら恐ろしい歴戦の猛者が来たように思うのかもしれない。しかし、女傑の人はともかく、ヴァン君はただのいたいけな天才少年だ。黄色い歓声こそ無くても仕方がないが、そんなに怖がられるのも変な気がする。


 そんなことを思いながら更に進んでいくと、中規模ほどのサイズの城に辿り着いた。石造りの城である。三階建てくらいの大きさだろうか。古いが城塞都市に似合う頑丈そうな見た目である。


 城を見上げていると、パナメラが口を開いた。


「私の城だ。カイエン城と呼んでくれ。寝室は五部屋、執務室が一部屋、広間が二部屋、厨房と食堂が一部屋ずつに便所が三つ、浴場が一つだ。あとは厩舎と納屋くらいのものか」


「おお、ちょうど良い感じですね」


 カイエン城についての感想を述べると、パナメラは口を尖らせる。


「いいや、不服だ。まぁ、その辺りもじっくり話すとしよう」


「……お手柔らかにお願いします」


 そんな会話をしつつ、カイエン城に入って中を軽く見学しながら広間へと移動する。城内のキャパシティもあるため、大半は外に待機して主要な者だけでの入城である。パナメラとゼトロス達はもちろん、こちらは僕とディー、アーブ、ロウの三人に、アルテとティル、カムシンもいる。更に、今後は商店を置く予定のベルとロザリーにも同席してもらった。


「少々手狭だが、このまま始めるとしよう」


 大きな長机の中心に座って、パナメラがそう口にした。机は十人がゆったりと座れる大きさだが、全員は並べそうにない。その為、パナメラとゼトロス達六名に、僕とアルテ、ベルとロザリーが座ることとなった。その後ろにはそれぞれの補助者や部下が立っている状態である。


「さて、それでは城塞都市カイエンの改造検討会を始める」


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