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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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帰宅

 センテナへの強襲をなんとか防ぎ切り、シェルビア連合国とも有利な同盟を結ぶ算段までこぎつけた。


 重傷を負ったが、ジャルパは健在でセンテナの防衛力も大幅に増している。十分な働きだろう。


 それに、イェリネッタと我が国の主力同士の戦いは間違いなく有利だ。センテナに数万の軍を連れてきていたことを考えると、すぐに決着がつきそうである。


 そんな楽観的思考のもと、僕はセアト村に帰った。


 早く帰りたかったので二つの街にしか立ち寄らず、お土産もそこそこしか買っていない。


 かなり疲れたが、セアト村と冒険者の町の姿が視界に入ると、物凄く安心できた。やはり、僕にとってはもうセアト村が故郷なのだろう。


「お帰りなさいませ」


「ただいま、エスパーダ」


 城門が開くと、すぐにエスパーダ達が出迎えてくれた。セアト村の騎士団も何事もなかったようだ。皆からわいわい言われながらセアト村に入り、領主の館へと向かう。


「ヴァン様!」


「お帰りなさい!」


「はーい! 皆、ただいまー!」


 アイドルさながらの歓声を浴びつつ、僕は真っ先に領主の館へと移動した。


「やっと帰り着きましたね」


 領主の館に到着するとティルが馬車から一番に飛び出した。それを見て笑っていると、後をついて来ていたエスパーダがわざとらしく咳払いする。


「淑女としての所作を問う前に、そもそもヴァン様のメイドである身でそのような……」


「す、すみませーん!」


 しばらく怒られることがなくて気が抜けていたのだろう。ティルはメイドにあるまじき行動であるとエスパーダに説教される羽目となった。


 この二人のやりとりもどこか懐かしい。そんな気持ちで苦笑しながら眺めていると、今度はカムシンが外に出てロウを見た。


「ロウ様! 稽古をお願いします!」


「えぇ!? 今から!?」


 馬から降りたばかりのロウが驚愕する。カムシンはやる気満々といった様子で剣の素振りを始めており、傍目から見ても断れない雰囲気である。


 ロウはがっくりと肩を落としつつも、自分の剣を持ってトボトボとカムシンの方へ歩いていった。


 なんだかんだで面倒見が良い男である。


 と、ティルが怒られ、ロウとカムシンが稽古のために移動を始めると、ようやくアルテが馬車から降りてくる。


 それなりに元気になってきたが、それでも不意に表情を暗くするアルテに、ティルもかなり心配して紅茶やお菓子で元気づけようとしていた。まぁ、やり方は子供騙しだが、ティルなりに一生懸命考えたのだろう。


 そのお陰でかなり明るくなったが、つい先日の夜営中も人形を見て涙を流している姿を見てしまっている。


「……よし! やっと帰れたし、今日はバーベキュー大会をするぞ! エスパーダ、材料とかはあるかな?」


 アルテを元気にさせようと思い、説教中のエスパーダにそう問いかける。それにティルが感動したような顔で振り向いたが、残念ながら説教を中断させる為に言ったわけではない。


 まぁ、喜んでいるからそういうことにしておこう。


「先日冒険者の方々がダンジョンとの往復で討伐した魔獣の肉などがかなり余っているようです。燻製などの保存肉も保存できる限界がありますので、バーベキューで使用するのは問題ないと思われます」


 エスパーダの返答を聞き、頷いてからティルを見る。


「それじゃあ、ベルランゴ商会に声を掛けてバーベキュー大会の準備をお願い。何か準備に必要なものがあったら作るから、何でも言ってね」


 そう告げると、ティルが喜んで返事をした。


「はい! では、早速行って参ります!」


 スキップで行動を開始したティル。それを無言で見送ってから、エスパーダはこちらを見た。


「……それでは二時間少々あるかと思いますので、ヴァン様にはその間に作っていただきたいものがあります」


「え? 何を作るの?」


 聞き返すと、エスパーダは帳簿のような紙の束を取り出した。ページを捲っていき、真ん中ほどで手を止める。


「一ヶ月ほど前と、二週間前に住民が増えました。以前同様に侯爵領及び伯爵領から流れてきた移民約千名と、ベルランゴ商会とメアリ商会の方々が奴隷を約三百名連れてこられました。私の判断で購入いたしましたが」


「あ、うん。それは大丈夫だけど……もしかして、家建てろって話?」


 恐る恐る聞き返すと、エスパーダは首肯した。


「えー!? もうセアト村には大工さんがいるじゃないの! もう結構建ててたと思うけど……」


「人手が足りません。四人で一軒の家屋としても三百以上の家屋が必要です。どうにか一ヶ月で建てられたのは十軒程度。そもそも、ヴァン様の感覚では遅いかもしれませんが、住居となる家屋は建つまでに一ヶ月近く掛かるのが普通なのです。それを考えると、大工職についている人数も……」


「だー! 分かった、分かったよ。頑張ります。頑張らせてください。アルテは先に家で休んでてね。後で呼びに行くよ」


 くどくどと説教が始まりそうになり、慌てて話を切って止めた。仕方なく、アルテを残して家作りに向かう。


 ティルもいない為、珍しくエスパーダと二人行動だ。


 城壁の前から中心に向かってもうかなりの戸数の家が建っている。更に、商店や宿まであり、村の端に行けばドワーフの炉と鍛冶屋ゾーンも存在している。本来ならもっと色々と施設が必要なのだろうが、残念ながらそんな余裕はない。


 今度、ベルランゴ商会とメアリ商会に援助を求めてみよう。新しい施設を設置するなら専門的な知識を持つ人材が必要である。


「入口の右側が空き地が多いから、そっちから家を建てていこうかな」


 そう告げると、エスパーダが顎を親指と人差し指で揉みながら唸る。


「そうですな。入口から中心にある領主の館まで既に商店や冒険者ギルドなど、皆が利用する建物が建ち並んでおります。入口左右にもそれらが並んだ方が効率が良いでしょう。少し離れますが、入口から見て領主の館の左手の方面に家屋を集中させた方が良いかもしれません。また、想定よりも人口増加が進んでいます。建物も複数の世帯が住むことが出来る大きなものが良いでしょう」


 なるほど。どうやらエスパーダも村の充実を考えていたらしい。複数世帯が住めるとなると、やはりアパートか。流石にこんな辺境の村にタワーマンションなるセレブの住居を建てるつもりはない。


「それじゃあ、城壁に沿って通りを作ってからアパートを建てようかな。せいぜい三階建てくらいだけど、頑張れば六世帯が住める大きさで建てようと思うから、それを並べればかなりの人数が住めるよね」


 そう告げると、エスパーダは一瞬考えるような素振りを見せた。一、二秒思案して、近くの住居を指差す。


「限界値の確認、という意味でお尋ねしますが、そこの家屋二つ分ほどの敷地で、何階建ての建物を建てることが出来ますか?」


「え? その家二つ分? う〜ん、真ん中に階段を作って左右に三LDKとすると、四階建て……いや、五階建てくらいならいけるかな? もっと広い敷地なら多分十階建てでも大丈夫だろうけど……」


 そこまで答えて、嫌な予感がして口を噤む。エスパーダを見ると、ぶつぶつと何か呟いていた。


「十メートル四方で四十人であれば一区画で二百人。対して、八十人であれば一区画で四百人。その後も考えるなら、高層の住居の方が良さそうですね。しかし、数十年後を考えるなら老朽化して倒壊する恐れもあります。その場合は対処が難しくなってしまいますので、三階から四階程度の住居に抑え、セアト村の敷地を使い切ってしまったら冒険者の街まで含めて一つの大きな街にする方が良いかもしれません」


 と、エスパーダは地震もないような国でしっかりと倒壊について考慮して街づくりを進言してきた。ちゃんと賢い人というのはこうやって様々な可能性、危険を考慮しているのだろう。僕なら大きければ大きいほど良いと答えたところである。


「それじゃ、三階建てでいこうか。道が格子状になるようにした方が良いよね?」


「そうですな……前後で背中合わせになるようにして建てていけば間に道を通すことができます」


「よし、それでいこうか。それじゃあ、予定地にウッドブロックと丸太をどんどん運んできてもらおうかな。誰か人手を集めに……」


「あ、わ、私が行きます……!」


 エスパーダとの会話でそれなりに段取りが出来たところで、早速建築の為の資材を準備しようと思ったのだが、誰かを呼ぶ前に後ろからアルテが突然現れて仕事を買って出てくれた。


「アルテ? 家で休んでたら良かったのに」


 驚いてそう告げるが、アルテは首を左右に振り、真剣な顔で口を開く。


「いえ、騎士団の皆さんを呼んで参ります。少々お待ちください」


 そう言うと、アルテは急いで城門の方へ向かった。城門のすぐ前には衛兵の詰め所もあるので、行く先は間違いないが、アルテが一人で人を呼びにきたら吃驚しないだろうか。


「エスパーダ。一緒に行ってあげてくれる?」


「ふむ、なるほど……承知しました」


 エスパーダは二つ返事で承諾し、アルテの後を追って歩いていったのだった。






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