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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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【別視点】銀騎士の剣

【コスワース】


「で、出た……! あれは、例の不死身の騎士だ! 二体の騎士が現れたぞ!」


「速すぎる! あんなの、火砲でも止められないぞ!?」


 例の銀色の騎士が現れてから、城壁の上では動揺が一気に広がっていった。だが、改めて騎士の姿を見ると、確かにと思わされた。巨人と見紛うような長身の大男が銀の全身鎧を着ているというのに、まさに風のような素早さで戦場を駆けまわるのだ。更に、身長ほどもありそうな大剣で二、三人まとめて吹き飛ばす人間離れした膂力。一たび戦場に現れれば、歴戦の騎士団が真正面から叩き潰されてしまう。


 味方であれば神話の中の光景だが、敵からすれば悪魔が召喚されたのかと疑うほどである。


 勿論、火砲を扱う者たちはすぐにその異常な動きを見せる騎士達に狙いを定めようとした。しかし、それでは相手の思い通りだろう。


「貴様ら! 私は指示を出していないぞ! 中心の三台のみ騎士を狙え! 残りはこれまで通り敵の弩を載せた馬車か魔術師だ! 分かったな!?」


 敵にも聞こえそうなほどの大声で怒鳴る。そのおかげでようやく火砲を操る者たちがハッとした顔になった。


「城壁には簡単には近づけない! 先に敵の長距離射程のものを破壊しろ!」


 改めてそう告げると、皆が返事をして行動に移る。火砲を操る者達もそうだが、弓兵についても迎撃態勢に移った。


 その間にも、二人の騎士はバラバラに動きながらこちらへと迫っている。三門の火砲が常に狙い続けているが、二人の騎士は信じられない速度で走っており、とてもではないが当てられそうにない。


「コスワース様! 城壁間近です! 破城槌などは持っておりませんが、あの超人的な力は間違いなく脅威になるかと……!」


 焦った様子で騎士の一人が報告をしてくる。勿論、それについては言われずとも理解している。だからこそ、そのための準備をしてきたのだから。


「重装歩兵! 前へ!」


 指示を出すと、これまで城壁の奥で一列に並んで待機していた歩兵達が素早く最前列の弓兵と入れ替わった。


 それを確認して、次の指示を出す。


「今こそ反撃の時だ! 黒色玉と油壺を投下しろ!」


「はっ!」


 指示を受けて、二百人を超える歩兵全員が一斉に黒色玉と油の入ったツボを城壁下に向けて投げ込んだ。


 数秒の後、一気に黒色玉が爆発したことで爆風が城壁を揺らし、さらに油に引火したことで城壁の高さに届くほどの火柱がいくつも立ち昇った。さながら燃え盛る炎の壁だ。これだけの範囲と威力は、たとえ火の魔術師を十人揃えても実現不可能だろう。


 これまでにない激しい爆発と炎に、黒色玉を投げた重装歩兵達の中にも尻餅をつく者がいたほどだ。


「火砲隊、弓兵隊! 怯まずに攻撃準備! 敵は近付けないと判断したら遠距離からの攻撃に戻る! 動きが止まっている移動式の弩、騎兵がいたら優先的に狙え!」


 激しい爆発に気を取られている部下たちに、急ぎ指示を出した。その言葉で正気を取り戻し、一斉に攻撃が再開される。


 敵にとっても予想外だったのだろう。明らかに動きが鈍った者達が多くいた。


 絶好の機会だ。


 今度こそ、スクーデリア王国にイェリネッタ王国の恐ろしさを思い知らせてやる。






【ヴァン】


 まるで絨毯爆撃でもあったかのように、城壁の手前で激しい爆発が連続的に起きた。直後、炎の壁が燃え広がる。


「な、なんだ……!?」


 誰かが驚愕して叫んだ。これまでにない規模の大爆発だ。それこそ、近代兵器などを知らない皆は声を出せないほどの驚きだろう。


 まぁ、僕にしても戦争映画くらいでしか見たことがない光景だが、色々と予備知識があるだけマシである。


 そのおかげで、誰よりも早く再起動することが出来たのだから。


「……! 急いで装甲馬車に防御態勢を取らせて! 敵の攻撃は城壁前で起きた! バリスタが届くギリギリの距離から応戦しないと余計な反撃を受けるよ!」


 大きな声でそう告げた。現状、形勢は一気に不利になったと思っている。なにせ、予想外の事態でこちらの陣営はパニック状態だ。この状況を引き起こしたイェリネッタ、シェルビア側は何かしようと動くだろう。


 ただこのまま無策で受け身に回るのは最悪だと断言できる。


「アルテ! 人形は動ける!?」


 最強戦力の一つであるアルテの人形。これを掌握するのが重要だ。そう判断して振り返ったのだが、アルテは返事もせず肩を震わせていた。明らかに動揺している。


「アルテ?」


 もう一度名を呼ぶと、アルテはハッとしたような顔になり、すぐに動き出した。


「も、申し訳ありません……っ! す、すぐに、動きます……!」


 追加の指示は一切していないのだが、アルテは自分の判断で再び魔術を行使する。とりあえず、人形は使えるということだろう。


「大丈夫なら、なんとか城門を開けることが出来るかい?」


 改めて指示を出すと、アルテは無言で頷いた。


 そして、炎と黒い煙が残る城壁で変化が起きる。城門が一部崩れて倒れたのだ。恐らく、アルテの人形が剣で強引に切り開いたのだろうが、敵陣営は何をされたのかも分からないだろう。


「城門! 開きました!」


 カムシンが叫び、同時にいたる場所から歓声が聞こえてきた。


 今が攻め時だ。


「行け! 敵の城塞都市を占領するぞ! バリスタ隊は援護を行え!」


 パナメラが最前線で怒鳴るようにそう告げると、自らも全力で突撃を開始した。


 もちろん、敵陣営もただぼんやりと攻め込まれるのを待つわけがない。火砲だけでなく、大量の矢が空へと射られた。恐ろしい量の矢がパナメラ達に迫る。


 しかし、その程度の悪あがきがパナメラに通じるわけがない。矢の処理をする為に最初から詠唱をしながら向かっていたのだろう。パナメラが声をあげて魔術を行使すると、空を覆いつくさんばかりの炎の壁が出現して矢を全て焼き払ってしまった。


 驚くほど広範囲の魔術だ。


「突撃!」


 自らが放った炎の壁に向かって剣の先を突き出し、パナメラは再度そう怒鳴って馬を走らせる。これで完全に形勢が決まったと確信させる勢いだった。







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