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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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フェルティオ侯爵の裏切り?

 地図から指を離したアポロが、なんと答えるべきか分からずにこちらに顔を向けた。それにふっと息を漏らすように笑い、シェルビア連合国の首都を指差して口を開く。


「どうやら、イェリネッタ王国とシェルビア連合国が手を組んでスクーデリア王国と戦おうとしている感じなんだよね。それで、本当ならフェルティオ侯爵家から情報が流れてきてもおかしくないんだけど、そんなこともなく……って話をしてたんだ」


 裏切りとは明言せずにそう答えると、ティルは生返事をしながらもう一度地図を見下ろした。


「なるほどー……あ、お茶菓子としてクッキーを焼きました。焼きたては美味しいですよ」


 と、ティルは途中まで真面目な顔で頷いていたのだが、どうやらあまり興味を引かれなかったのか、すぐにお菓子の話題へと移行した。


 それには緊張感を滲ませていたアポロ、アルテ、カムシンも思わず笑ってしまう。たったそれだけのことで場の空気が緩んだことに、ティルらしいなどと思いながらアポロに顔を向けた。


「さて、それでアポロさんとしてはどう思いますか? 我が父、ジャルパ侯爵が裏切ったのか。それともその派閥に属する別の貴族が裏切っているから情報戦で大きく差をつけられてしまっているのか」


 雑談のようなノリでさらっとアポロにどう考えているのか尋ねてみる。すると、アポロは溜め息にも似た長い息を吐き、首を左右に振った。


「……申し訳ありませんが分かりかねます。もし危惧している通りにフェルティオ侯爵領で情報が止まってしまっているのなら、恐らくフェルティオ侯爵家当主ほどの影響力が無ければ、これほど重要な情報を完全に押しとどめることは出来ないでしょう。しかし、以前あったスクデット防衛戦でフェルティオ侯爵はかなりの被害、損害を出しながらも最後まで参戦しています。そして、無事にスクデット奪還およびイェリネッタ王国の王族を捕虜として捕えていますよね。これは、イェリネッタ王国に与しているなら、何かしらの妨害をしてもおかしくないと思っております」


「つまり、情報規制をかけるならフェルティオ家の当主ぐらいでないと出来ないが、当のジャルパ侯爵が裏切っているとは思えない行動をしているってところだね。まぁ、それは間違いないと思う。だって、イェリネッタ王国の新兵器を完封したのを実際に見ているからね。それに、以前捕えたウニモグって王子様は物凄く簡単に情報を教えてくれたから、スクデット侵攻時のイェリネッタの戦略は大体掴めていたんだ。だから、シェルビア連合国と協力しあって行動に移すと決めたのはつい最近だろうし、その情報が入ったとしてもそんなに時間は経ってないとは思う」


 若干予測が難しい部分をぼかしながら自身の考えを伝えると、アポロはなるほどと頷く。しかし、アポロのようにはいかなかったのか、カムシンが物凄く難しい顔をして地図を睨んでいたので、簡単に結論を伝えることにした。


 まず、イェリネッタ王国を指差してから口を開く。


「推測でしかないけど、今の状況を整理すると……黒色玉と大砲を手にしたイェリネッタ王国は、当初は一国でスクーデリア王国を占領するつもりで動いていたけど、思った通りにならなかったので、急遽作戦を変更する必要に迫られた。結果、確実にスクーデリア王国を打ち倒すためにシェルビア連合国に脅迫まがいの協力依頼をした。これに元からイェリネッタ王国寄りの東側は即座に同意。シェルビア連合国の今の代表は東側から選出されてるから、国としての方針はイェリネッタ王国に協力することで決定している」


 言いながら、地図を指し示す指を横に滑らせていき、シェルビア連合国を介してフェルティオ侯爵領にまで指先を動かした。


「一方で、元々スクーデリア王国寄りの西側は反発し、スクーデリア王国が勝った場合を考慮してフェルティオ侯爵と内通することを選択した。もちろん、国の方針に真っ向から逆らってスクーデリア王国と共にイェリネッタ王国に攻め込むなんてことは出来ないから、イェリネッタ王国がどのように動いているか情報を流すくらいだろう。そうなると、フェルティオ侯爵がその情報を我が国王陛下に報告しなかった点が気になる」


 そこまで言って周りを見ると、皆が真剣な顔で僕の話を聞いていた。ちゃんと分かっているのか不明だが、ティルまで真剣な顔でお茶を飲んでいる。いや、お茶を飲んでいる段階で話半分に聞いている気もするが、ティルにしては「真剣ですよ」という雰囲気を発している。


 推測だからね、推測。あくまでも僕の想像力を駆使した状況把握でしかないんだからね。


 そんなことを思いつつ、続きを話すべく口を開く。


「ここからは更に不確かな予測、想像でしかないけれど、僕の父であるジャルパ・ブル・アティ・フェルティオという人物の性格を考えると、恐らく、我が父はスクデットの陥落から奪還、イェリネッタ王国への侵攻作戦までの戦いの数々で、自分自身が窮地に立たされていると思っている。これまでどんどん権力を増してきていたジャルパ侯爵は、大きな失態をしてしまったと感じているのかもしれない。そうなると、ジャルパ侯爵はどういう行動に出るか」


 そこで言葉を切って一旦セアト村付近を指し示した。


「ちなみに、今回フェルティオ侯爵家から騎士団らしき集団を率いて現れたのは、我が兄であるヤルドとセストの二人だった。つまり、この大事な一戦でジャルパ侯爵も主力となるフェルティオ家騎士団もセアト村には来ていない」


 そう告げると、アルテが「あっ」と声を発した。


「なにか思いついた?」


 アルテが何を考えたのか答えるように促す。それにアルテはまごまごしながらも答えた。


「そ、その……前回のフェルディナット伯爵家も同様の状態だったのでそう感じたのかもしれませんが、もしかして、ジャルパ様はフェルティオ侯爵家の力でシェルビア連合国を抑え込もうとしているのでは……?」


 その言葉に、アポロが驚いて目を丸くする。


「……ヴァン様はもちろん御歳に合わぬ考え方をされる方だと思っておりましたが、奥方のアルテ様も想像以上に聡明な方ですね」


「あ、そ、その、まだお、奥方では……」


 アポロの言葉にアルテは顔を真っ赤にしながら両手を左右に振る。その様子にほっこりした様子で、ティルがお菓子を口にした。


「私としてはもうアルテ様を奥方様と思って接しさせていただいていますよ?」


「い、いえ、そんな、ティルさんまで……!」


 二人の会話を聞いて笑いつつ、アポロに対して口を開く。


「さて、さっきの話の続きだけど、どちらにしてもシェルビア連合国が動くとしたらフェルティオ侯爵領が関係してくるだろうし、どうにかした方が良いよね。運が良いのか悪いのか、イェリネッタ王国側とはいえここはフェルティオ侯爵領の端っこにあるわけだし、目的地は近い。何かあったら困るし、様子を見に行こうか」


 仕方なく、そう言って立ち上がる。


「カムシン、エスパーダを呼んでくれるかな。ちょっと二、三ヶ月くらい出かけてくるよ」





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