楽園入り
さぁ!
明日26日は次にくるライトノベル大賞2022の発表です!
19時から放送予定なので、ワクワクしながら待ってます!・:*+.\(( °ω° ))/.:+
・YouTube Live
https://www.youtube.com/watch?v=cHZECwAHuV4
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今回の遠征は恐らく長期間に及ぶだろう。まだ陛下の計画を聞いていないが、やはり侵攻速度が大事なはずだ。
ならば、協力する貴族達もこれまで以上の規模となるだろう。
せっかく別の地方からも貴族が来るかもしれないなら、セアト村の良さを知ってもらわなくてはならない。
そう思って、さっそく湖畔に温泉施設でも作ろうかと頭の中で図面を描いてみる。何故かアニメ映画で有名な神様も宿泊する温泉施設が思い浮かんだが、構造が全く分からない。
仕方がないので、実際に行ったことのある温泉宿をイメージしてみた。その温泉宿に湖は隣接していなかったが、どうせなら少し湖の上に迫り出したような形も面白いかもしれない。
二階建てで横に長く作り、一階部分の外側に露天風呂を作ったら良い雰囲気になりそうである。
しかし、それほどの規模になると流石に一週間近くかかりそうだ。お湯の供給も足りなくなるに違いない。
「温泉宿は間に合いそうにないから、皆がセアト村から出発したら作ろうかなぁ」
そう呟くと、前を歩くパナメラが横顔をむけて口を開いた。
「なんだ? やっぱり不安だから陛下に来ていただくか?」
「違いますよ!」
パナメラがにやにや笑いながら弄ってきた。頬を膨らませて怒りを露わにすると、ケラケラと楽しそうに笑った。
完全にいじめっ子になっている。今度から販売する武器の値段を倍にしてやろうか。
どう仕返しをするべきか考える僕に、パナメラは口の端を上げたまま視線を外し、街道の傍で行列を作る騎士達を見た。そして、息を吸う。
「陛下より指示があった! これからイェリネッタ王国侵攻のために多くの騎士団が集結する! その間、このセアト村前で野営を行い、英気を養ってもらいたい! なお、物資の補給および野営の位置について打ち合わせるため、上級士官以上は全員こちらに集まるように!」
と、パナメラは大音量で号令を発した。陛下の名前もあり、一万にもなる大人数が一斉に指示に従って動き出す。パナメラの声がすごくよく通るのも理由の一つかもしれない。
感心しつつ、パナメラの統率風景を眺める。他の貴族や騎士団長達が揃うと、すぐに上位五十人を選別させてセアト村へと赴かせる。野営場所は冒険者の町とセアト村の間なので、魔獣の脅威にも晒されないだろう。
パナメラの場合は、単純に野営なんだから魔獣への警戒くらい自分達でしろ、というつもりかもしれないが……まぁ、陛下の急な無茶振りには対処できたので良しとしよう。
そんなことを考えていると、パナメラがにやにやしながら振り向いた。
「それで、少年。アルテ嬢とはどこまでいった?」
「はい?」
突然の質問に生返事をして首を傾げる。と、後ろから短い悲鳴が聞こえた。
「ぱ、パナメラ様!?」
リンゴのように顔を真っ赤にしたアルテが声を裏返らせてパナメラの名を呼ぶ。それに噴き出しながら、パナメラは僕の背中を叩いた。
「あははは! これは何かあったな? どうだ、少年。図星だろう?」
「え? パナメラさん、酔ってます? ちょっと絡むの止めてもらって良いですか?」
ケタケタと笑いながら僕の背中をばしばし叩くパナメラに真顔で文句を言ったのだが、まったく聞いていない。アルテはすでにティルの後ろに隠れてしまっており、パナメラのターゲットは僕だけになってしまっている。
「怒るな、怒るな。ちょっとからかっただけだろう? そうだ、そろそろ食事にしようじゃないか。是非、二人の話を聞かせてくれ。良い酒の肴になりそうだ」
「絶対嫌ですよ。からかう気しかないじゃないですか」
そんなやり取りをしながら、僕たちはセアト村に戻ったのだった。
翌日、今度はアルテの父であるフェルディナット伯爵が到着した。前回よりも力を入れているのか、騎士団の人数も多い。
出迎えに行くと、一際大きな馬車からフェルディナットが顔を出した。こちらに気がつくと、すぐに馬車を降りて歩いてくる。
「久しぶりだな、ヴァン卿。アルテも、元気だったか?」
どこか辿々しく声を掛けてきたフェルディナットに、笑顔で一礼する。
「お久しぶりです、フェルディナット伯爵」
先に挨拶をすると、少し照れくさそうにアルテも一礼をして口を開く。
「お久しぶりです、お父様……ヴァン様のお陰で元気に過ごさせてもらっております」
アルテが挨拶を返すと、フェルディナットは微笑みを浮かべた。
「そうか……ヴァン卿にはどう感謝したら良いか分からないな」
「いえいえ、気にしないでください」
フェルディナットの言葉に気楽にするように言う。それが面白かったのか、フェルディナットは肩を揺すって笑った。
「ありがとう。そう言ってくれて助かった。実は、今回の戦いでは誰よりも多くの功を挙げようと思っていたのだ。ヴァン卿にも負けないくらいの活躍をしてみせよう」
と、珍しく戦意の高い発言をしてきた。これは、余程の準備をしてきたのか。
「僕も負けていられませんね。お互い、頑張りましょう」
笑いながらそう答えて、セアト村の奥を指差す。
「それでは、セアト村の中へどうぞ。アルテ、一緒に行ってくる?」
親子水入らずで会話を……そう思って話を振ると、一瞬アルテの表情が強張った。しかし、すぐに意を決したような顔になり、頷く。
「はい。ご案内します」
アルテがそう口にすると、フェルディナットは嬉しそうに微笑んだ。
「……ありがとう。よろしく頼む」
まだまだ自然な親子関係とは言えないながらも、以前よりは比べ物にならないほど二人の関係は良くなったと思う。
貴族との付き合いというのは面倒だと思っていたが、今のところとても順調ではなかろうか。陛下とは仲良し。パナメラ子爵やフェルディナット伯爵とも同盟関係。多分、ベンチュリー伯爵とも今は悪い関係ではないだろう。最初は尊大な態度で高圧的に接してきたピニン子爵達も同様だ。
問題は実家であるフェルティオ侯爵家くらいで、それ以外とは上手くやれている気がする。
フェルディナットとアルテがセアト村へ入っていく姿を眺めながら、僕は腕を組んで一人頷いた。
「……うん、今思えば僕って凄くない? この前男爵になって家を興したばかりだよ?」
そう呟くと、ティルが嬉しそうに笑う。
「はい。ヴァン様は頑張っておられますから」
ティルのそんなセリフに、カムシンが何度も頷いた。
「ふふふ、冗談だよ。やっぱり慢心しちゃダメだよね。思いあがって調子に乗ると失敗するから、慎重にいかないと」
二人に褒められて気恥ずかしい気持ちになりつつ、己を戒めるためにそう言った。
しかし、内心ではもうスキップしたいくらい嬉しい。周囲の環境が良いと幸福度が高くなるとしたら、僕は世界一幸せに違いない。ティル、カムシン、アルテとは兄弟のように仲が良く、エスパーダやディー、アーブ、ロウも仲良しだと思う。セアト騎士団やオルト達冒険者とも信頼関係が築けている。
よし、スキップしよう。ヴァン君最高。素敵な領主生活に乾杯。
調子に乗ってそんなことを考えていると、また誰かがセアト村に到着したのか、伝令の団員が手を振りながら走ってきた。
「ヴァン様! 新たに騎士団が到着しました! フェルティオ侯爵家の旗です!」
「あ、ダディか……ちょっと気分が下がり傾向に……」
もう来たのか。そんな気分で報告を聞く。しかし、団員は微妙な表情で首を傾げる。
「それが、どうも侯爵様はおられないようです。貴族用らしき馬車は二台ありましたが、その両方に一人ずつ乗られており、どちらもかなりお若い方だとか……」
「え?」
団員の報告を聞き、無意識に聞き返していた。大事な戦いの場に、フェルティオ侯爵家の当主以外が出てくるとなると、後はもう血縁者しかありえない。
「……まさか、ヤルド兄さんとセスト兄さん? こんな大一番を初陣にするつもりなの?」
誰が聞いているかも分からない状況だというのに、反射的に口走ってしまった。それくらい衝撃的なのである。驚く僕を見て、団員は少し躊躇いつつも、報告の続きをする。
「また、いつものフェルティオ侯爵家の騎士団の様相とは違い、装備に統一感が無く、雰囲気も冒険者の集団に近い、とのこと」
「それ、傭兵じゃないかな? え? どういうこと?」
ついにダディの頭が変になったのか。それとも泥酔した状態で指示でも出したのか。僕の頭は混乱の極みへと陥ったのだった。
せっかく幸せを噛みしめてたのに、まったくなんて親子だ。
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本当にありがとうございます\\\\٩( 'ω' )و ////
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