イェリネッタ王国の領土で初バーベキュー
なんと! 次にくるライトノベル大賞2022!
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「えー、今日は皆様、本当にお疲れ様でした! せめてもの労いをさせていただきたいと思い、頑張って黒大虎を討伐してきました! 他にも岩大蠍と多腕大熊も討伐したので、今日は腹一杯食べて英気を養いましょう!」
バーベキュー大会開催の挨拶をすると、それを合図にしてディー達が荷台に大型魔獣を載せた馬車を引っ張ってくる。四頭立ての馬車が四台も入場してくると、流石に練度の高い騎士団の団員であっても騒がしくなっていた。
「岩大蠍……!?」
「いやいや、黒大虎や多腕大熊も騎士団千人以上で挑むような危険な魔獣だぞ!?」
「しかし、あの硬い岩大蠍を倒すには火の魔術師がいないと不可能だろう?」
そんな声がそこかしこから聞こえてくる。正確に人数は数えていないが、やはり何千人という規模を超えてくると物凄く人口密度が上がった気になる。
まぁ、いくら巨大といえど、要塞の敷地内にこれだけの人数が集まれば実際に人口密度が高くなるのは仕方がないか。
何たらドームで一度に五万人が、みたいな話があるが、改めて考えるととんでもない人数である。
そんなことを考えつつ、集まった人々をぐるりと見回した。
前列には貴族と魔術師と騎士団長達、その奥にはそれぞれの小隊長などの指揮官達、更にその奥に一般の兵達が火を囲んで並んでいる。
準備に時間が掛かってしまったせいで、今にも生肉に齧り付きそうな顔の人が多数見掛けられた。
「……それでは、バーベキュー大会の開催です! 各自、肉を串に刺して焼いて食べましょう!」
そう言って、既に肉の刺さっている串を掲げると、兵士たちを中心に大歓声が上がった。
やはり我慢の限界だったのだろう。我先にと兵士たちが串を持ち、肉を焼き始める。辺りに肉の焼ける良い匂いが漂い始めると、もう齧り付く者も現れた。
「あ、調味料は塩があります! 遠方のため、他の物はあまり準備出来ませんでしたが、塩で味付けをしてくださいねー!」
調味料についてお知らせをしてから、僕も食事を始める。熊の肉は高級ジビエらしいが、中々美味しい。いや、今日初めて食べたのだが、脂の少ない豚肉に近い感じだ。地球の熊肉とは違うのだろうか。
そんなことを考えながら食べていると、貴族達が素早く蠍の肉に群がるのが見えた。
「岩大蠍は久しぶりだ。卿はどうかね?」
「いや、お恥ずかしながら、その姿すら初めて見ました」
「なんと、それはそれは……中々の珍味ゆえ、是非食されよ」
と、蠍の肉で盛り上がっている。肉の見た目は海老や蟹っぽい感じなので、山の幸と思うと珍しい感じだろう。
セアト村近郊で獲れる魔獣と全然違う種類が生息しているのは面白い発見だ。これは海側の魔獣も調査しなくてはならないかもしれない。
「ヴァン様! 蠍のお肉、食べましたか?」
目を輝かせてカムシンが近付いてきた。手には焼けたばかりの岩大蠍の肉が刺さった串を幾つも握り締めている。
どうやら、僕達に食べさせようと思って焼いてきたらしい。その姿にティルやアルテと顔を見合わせて、笑い合う。
「ありがとう。まだ食べてなかったんだ」
「私も、よろしいのですか?」
僕とアルテが返事をすると、少し興奮状態のカムシンがその場で姿勢を低くして串を献上してきた。喜んで受け取り、予想通り蟹に似た味だったことにテンションを上げた。
それから暫く、バーベキュー大会を楽しんでいたのだが、不意にウルフスブルグ山脈側で兵士達の切迫した声が聞こえてきた。
「ま、魔獣です……! 角大猪が群れで崖を降りてきました……! 数は五十ほどとのこと!」
城壁の上から見張りが何か叫び、伝令が青ざめた顔でこちらに報告に来る。
他の騎士団の伝令だったが、その内容を聞いた各騎士団の団長は素早く動き始めた。
「セタンタ騎士団! 早急に準備して城壁前に隊列を組め!」
「ピ、ピニン騎士団! 重装仕様にて準備せよ……!」
「ファリナ騎士団! 馬を準備しろ! 魔術師隊は援護の用意!」
それぞれの騎士団が慌ただしく指示を出す中、セアト村騎士団は慣れた様子で各自城壁に走り、幾つか作っておいたバリスタと機械弓の準備を素早く整えていく。
そして、バーベキュー会場が疎になり、城壁周辺に兵士達が集結する頃には、新たな報告が肉を焼く僕のところまで届いた。
「ヴァ、ヴァン男爵家騎士団により、魔獣の討伐、完了いたしました……!」
伝令が報告に来ると、会場に残っている貴族達が驚愕に目を見開く。
「ほ、報告は正確にせんか! 角大猪だぞ!? 討伐ではなく撃退であろう!」
「今の報告では、ヴァン卿の私兵のみで討伐したようにしか聞こえんぞ!?」
怒鳴る貴族に恐縮しながらも、伝令は再度深く頭を下げて口を開いた。
「そ、その通りです! 魔獣は全て、ヴァン男爵家の騎士団のみで討伐されました! 撃退ではなく、討伐です……!」
再び伝令が報告を行うと、今度こそ貴族達全員が沈黙した。その様子を然もありなんと思いつつ横目に見て、ティルにお願いをする。
「あ、紅茶をおかわり!」
「はい、すぐにお持ちします」
次にくるライトノベル大賞2022
エントリーされた1,881作品の内、
ノミネートされたのは143作品!
これでもしTOP100作品に入れたら失神します!ヽ( ̄д ̄;)ノ
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