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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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村の改造をしたい

諸事情によりタイトル変更しました。

戦わない最強の生産職 〜辺境の村要塞化計画〜

お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜

 夜、僕たちは馬車の中と夜営道具を用いて一泊することにした。自分達の住居が無いからだ。ロンダは自分の家を差し出そうとしたが、ご老人を追い出せるわけがない。


 集まりがある時の為に空けてあるという村の中央広場にて、キャンプのように火を焚いている。


 轟々と音を立てて燃える炎を眺めながら、僕に四元素魔術の適性があれば盗賊なんてすぐに撃退出来たかな、なんてセンチメンタルなことを考えてしまう。


 炎の魔術は最も攻撃力が高く、戦場での派手さも一番だ。魔力の高い炎の魔術師が戦場に現れるだけで士気が上がるほどである。


 だが、無い物は仕方がない。とりあえず、僕は町の防衛計画を練ることにする。


「守るだけじゃダメだ。理想は敵から攻撃されずにこちらは攻撃が出来る状態」


「普通なら壁の上から弓矢、魔術での攻撃ですな」


「壁が低いと効果は薄いでしょう」


「これまでは木の柵の隙間から槍を突いてましたが……」


「それじゃあ相手も同じ条件だ。槍で突かれるぞ」


 ディーやエスパーダ、ロンダと意見を出し合う。だが、どうも普通の意見ばかりだ。


「投石機とか作る?」


 一石投じてみようと提案すると、三人は目を丸くした。


「か、カタパルトですか……」


「私は見たことがありませんが、どのようなもので?」


「ヴァン様。投石機は攻城戦などに用いられるものです。つまり、守る際に使うものではありません」


 三人はそれぞれ反応を示したが、あまり芳しくない。ディーがロンダに投石機の使い方と威力を話し、何故籠城戦には使えないか語る。


「大きな岩を飛ばすのだが、時間が掛かり、落下地点を予測するのが難しい。だから、動かない城壁や物見櫓などの建物を破壊するために使うものだ」


 そう教えるディーに、僕は眉根を寄せる。


「そうと決まっているわけじゃないよ? 小さな石がいっぱい入った箱とかを飛ばせば範囲は広がるし、村の奥に設置して入り口の方向に向けておけば村の正面に着弾させることも出来ると思うよ。あ、油を入れた瓶と松明とかを飛ばせば、地面に落下した途端に燃え広がって良いかも」


 と、僕が言うと三人は頬を引きつらせた。


「後は、大型の設置式連弩かなぁ。前面に盾を付けてそれを壁のすぐ奥に作れば、相手からしたら脅威になると思うよ」


「その仕掛けはいったい誰が作るのです?」


 エスパーダの鋭い視線に、僕は自分を指差す。


「僕」


 そう答えると、無理と思ったのか、皆が沈黙して返事を控えたのだった。






 他の人は塀の強化や罠の作成の為、僕はティルとカムシンを連れて木材を仕入れに村の裏側にある森に来た。


「もう依頼は達成したから、帰っても大丈夫ですよ?」


 そう言って隣を歩くオルトに話し掛けると、オルトは笑いながら手を振った。


「面白そうですからね。少しの間、この村で魔獣でも狩って小銭稼ぎしてますよ」


 と、オルトは足を止め、軽く森の入り口から辺りを見回す。


「こっちが良さそうだ」


 オルトはそう言って、獣道みたいな道から外れてデコボコした土の上を歩き出した。


「魔獣?」


「気配がしますんで、ちょっと行ってきます。ヴァン様はこの入り口の木を切っていた方が良いですよ」


 ピリリと纏う空気が変わったオルトが森の中へ入っていく。その後を四人の仲間達が続いた。もう一つの冒険者パーティーは帰ってしまったので、村にいるのはオルトやプルリエルを含んだ五人だけだ。


 遠くでオルトが戦う気配がする。馬車での移動の時も思ったが、直感のようなレベルでオルトが敵に気付き、こちらに接触する前に倒してしまう。


 まさに凄腕の冒険者だが、それでもランクは中々上がらないそうだ。勿体ない。


 そう思いつつ木を物色していると、カムシンが大木を見上げて幹に手のひらを当てる。


「ヴァン様! この木が立派です!」


「大き過ぎ。これ切るのは僕達じゃ無理だよ」


「では、これは?」


「それも太いなぁ」


 カムシンは直径二メートル以上のような木ばかりを指差す。


 苦笑しつつ、その辺に落ちてる枝を拾う。


 旅の過程で、僕はずっと生産魔術を練習していた。自分の魔力量が多いのか少ないのかは分からないが、とりあえず、集中すれば木材や石、鉄などを好きな形にすることが出来た。


 ただし、細部までしっかり想像して魔力を込めないと、曖昧な部分は形が変になったり、脆くなったりする。


 決して、使い勝手が良いとは言えない。


 だが、最近になって発見したことがあった。それは細かな部分まで想像しながら魔力を込めれば精密な工作も可能なことだ。


 ということで、馬車に載る程度のサイズのウッドブロックに作り変える。


 魔力を集中すると、ゆっくりとお腹の底から温かくなっていく。魔力が指先まで来たら、枝を手にして意識を集中する。


 手の中で枝が形を変える感覚があった。


 イメージは出来る限り細かく、小さく、詳細なものを。木の繊維一本一本まで意識する。出来ることなら繊維を捻り纏めて紐を編むようにして強くしたいが……あ、出来そう。むしろ、繊維を更に細かくバラバラにして編んでみるか。


 と、僕は木材をオモチャにしてウッドブロックを次々と作っていく。


 木なのにプラスチックみたいになったが、まぁ、加工出来るから良いだろう。さっさと積めるだけ積んでしまおう。


 魔力をどれだけ消費しているのかは不明だが、個人的には生産系魔術も悪くない、なんて思い始めた。


「ヴァン様すごいですね。これ、元が木とは思えない堅さです」


「これなら鎧も作れそうですよ。鋭くすれば剣も出来るかも」


 ティルとカムシンがウッドブロックを叩いたり持ち上げたりして喜んでいる。だが、元が木なだけに凄く火に弱そうである。


 それに、この木は使う予定があるのだ。


「うぉ!? なんだこりゃ!?」


 と、ウッドブロックを積み終わって馬車に乗りこんでいると、そんな驚く声がした。


 オルト達が帰ってきたのだ。


「木を集めるんじゃなかった?」


 プルリエルがウッドブロックを見て首を傾げる。他の仲間達も「なんだ、魔獣の素材か?」とか頭を捻っていた。


「木を素材にした繊維ブロックかな、多分。ほら、何たらナノファイバーとか言うじゃない?」


「いや、ちょっとよく分からないが……」


 適当に答えると、オルトは生真面目に返答した。そして、ウッドブロック一つを手に取る。


「お、おぉ……思ったより軽い。これ、試し斬りしても大丈夫ですかね?」


「どうぞどうぞ」


 興味深かったので許可する。すると、オルトはひょいっと空中に投げ、剣を振った。


 風を切る音と硬いものが削れるようななんとも言えない音がする。そして、ウッドブロックは先程カムシンが触っていた巨木の方に飛んでいき、衝突した。


 岩がヒビ割れ、ウッドブロックは地面に落ちる。


「おぉ、切れてない」


 拍手して喜びを表現していると、ティルとカムシンも後に続く。


「凄いですね。かなり硬そうです」


 そんなことを言って笑っていると、オルトが青い顔でこちらを見てきた。


「……岩を切るくらいのつもりで振ったんですがね」


 そう言われて、僕は首を傾げる。


「あれ? 岩と木ってどっちが硬いんだっけ?」


 混乱したままそう口にすると、ティルとカムシンが頭を捻る。


「岩ですよ。というか、岩が切れるのに木が切れないなんて……」


 絶句するオルトを見て、笑って誤魔化す。


「まぁ、硬い材料を手に入れたし、良かったじゃない?」


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