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冒険者の街が充実してきたぞ!

 勝手に盛り上がっているドワーフ達を放置して、ベルとランゴに街づくりについて尋ねる。


「出来たばかりの宿があんな感じだから、今回のお店までは僕が作っても良いかな?」


 そう聞くと、ベルとランゴは大喜びで首肯した。


「良いんですか!」


「まだ大工は揃ってませんし、ヴァン様が作ってくださるなら助かります!」


 二人の言葉に笑い返しながら、僕は通りの空いているスペースを確認する。


「じゃあ、基本は地下一階付きの三階建てにするよ? 見た目と大きさをそこの宿に合わせて統一感を出したいんだ」


 そう告げると、ベルが目を見開いてクサラの宿を振り返る。しばらく目を皿のようにして宿を凝視した後、油が切れたロボットのような動きでこちらに顔を向けた。


「……これほどの店を持てるのは商人の夢ですが、一棟で白金貨何枚でしょう……」


 不安そうな声でそう言ったベルに、いやいやと片手を左右に振る。


「金貨五十枚だよ」


「き、きききき、金貨五十枚!? 本当ですか!? それならセアト村にもこの建物を建てていただきたいのですが……!?」


「無理無理。大工さん達を揃えてどんどん建物を建てていってよ。雇用を生んで経済を回さないとね」


 そう答えると、ベルはあからさまに肩を落とした。


「あ、街の景観も大事だからね。これまで作った建物と似た感じでお願い。色とかも大事かな」


「そ、それはかなり難しいかもしれませんが……」


 頭を悩ませるベルを見てちょっと可哀想になったが、今後のことを考えるなら仕方がない。様々な職人を育てるのは必須事項なのだ。


 そうしないと、いつまで経っても僕の雑用が無くなる日は来ない。


「と、とりあえずベルランゴ商会としては新規顧客が一番利用しやすい場所が希望です」


「じゃあ、入口から見て最初が良いかな? 一棟で良い?」


「三棟でお願いし……」


「よ、四棟でお願いします!」


 ランゴが返事をしているところに、ベルが必死な顔で入ってきた。ランゴもそれに戸惑いながら首を傾げる。


「素材の売買、日用品、武器防具……三棟で良いんじゃなかったか?」


 そう尋ねるランゴに、ベルは勢いよく首を左右に振った。


「当初はその予定だったけど、これはヴァン様に建物を建ててもらえる最後の機会かもしれない。素材に関してはいくらあっても良いんだから、建ててもらおう」


 ベルがそう言うと、ランゴの表情が引き締まる。


「そうか。それなら確かに四棟の方が……よし! 急いで新しい商人見習いを募ってくる!」


 と、いきなりそれだけ言い残して、ランゴはセアト村へと走り出してしまった。


 ベルはその後ろ姿を目で追って、静かに溜め息を吐く。


「ようやく落ち着いてきたかと思ったら……まだ建物の構造も聞いていないというのに」


「まぁ、建物に関してはベルがいるから大丈夫と思ったんじゃないかな?」


「はたしてそこまで考えているかどうか」


 そんなやり取りをして笑い合い、僕は通りの確認をした。


「材料が足りるようならすぐに作るけど、どうする?」


「すぐに準備します。ヴァン様が時間を割いてくれるのは貴重になってきましたから」


「僕が意地悪みたいじゃないか」


「……おーい! ウッドブロックを出来るだけ持ってきてくれ!」


 僕の抗議をスルーして、ベルは部下達のもとへと向かっていく。まったく、良い度胸である。


 ベルランゴ商会の準備の間に、僕はさっさとカムシン達が連れてきた人たちと話をした。どんな商売をしたいか、聞き取り調査だ。


「家具づくりをしてきましたので、出来たら木材を加工して大きな物を作りたいです」


「衣装屋で働いていました。自分も着たくなるような可愛い服を作りたいと思っています」


「パン作りが好きで……種類はまだまだ少ないですが、頑張ります!」


 十人十色の将来の展望を聞いていき、こっちで勝手に役割を定めていく。物作りが得意な作業者と接客が得意な販売員。後は在庫管理や調達が得意な物流員もいる。


 ノリとしては文化祭みたいなノリで面白い。まぁ、実際に商売をしていけば段々と現実的になってしまうだろうが、是非とも楽しく商売をしてもらいたいものである。


 そんな願いを込めつつ、僕は皆と話し合いながら建物を作っていく。


 飲食店をしたい人が多かったので、一階をパン屋とスイーツ店、二階を食堂にしてみた。三階は保存が利く物を仕舞う倉庫、地下は酒と食品類の倉庫だ。


 もう一棟は家具屋と服屋、そして日用雑貨店である。どれも嵩張る商品を取り扱うため、フロアの半分を倉庫という形で設計している。地下は商品作りのための製作所だ。


「格好良いもの、面白いもの、美味しいものを頑張って作ってくれたら遊びに来るから、宜しくね」


 期待を込めてそう言うと、皆やる気に満ちた返事をしていた。楽しそうでなによりである。


 後は個人的に一番力を入れたかった銭湯作りだ。さぁ、冒険者達が喜ぶ銭湯を作るぞ。






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