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死亡者2人目

江島が死んでから一週間が経ったけど、僕の生活は何も変わらない。朝に学校へ行き虐められ、昼に給食を食べ虐められ、放課後に掃除をして虐められて家に帰る日々だ。江島が死んだことをもう忘れてしまっているのか?それとも、僕がしたことだとは考えていないのだろうか。後者だとしたらとても好都合だとは思うけど、一つ不安が残る。それは「江島が死んだのは本当に僕がしたことが原因なのだろうか」ということ。

僕は、怪談の類が恐いけど結構好きで、よく心霊現象系のテレビを観ている。ああいうことが起きる原因の一つは「現象が起こった時にその場にいた人や場所を恨んでいる人がいる」のがとても多い。それを「恨みや妬みみたいな感情で人がこんなことをおこせるわけがない」と言う人がいるけど、僕はそう思ってない。プラスの感情の集大成に結婚という形があるように、マイナスの感情の行きつく先が心霊なんじゃないかなと思うんだ。感情で誰かを愛せるなら感情で誰かを呪えるのは単純な理屈で、単純だからこそ真理なんじゃないかなって。

けど、人を愛するのも呪うのも簡単だけど、心霊で人を殺すのは簡単じゃない。僕は今までの人生で例を見た事がないからたぶん霊感ってやつは無いと思う。だから自分が見様見真似で作ったヒトガタで人を殺すことができたなんてことがイマイチ信じられない。けど、簡単に確かめる方法がある。もう一人同じことをしてみよう。幸い、という言葉を使うような幸せな事じゃないけど、このクラスだけでも僕を虐めている奴らは両手の指では足りない。学年で見れば3桁近い人数になるだろう。選択肢が多いのは嬉しいかな悲しいかななんだけど、まずは同じクラスの連中からじわじわ行くべきだろうから2人目は江島と仲の良かった沼渕にする。江島が僕を殴るときに必ず後ろで羽交い絞めにしている奴だ。ジャイアンの陰に隠れるスネ夫のようなポジションにいる奴だけど僕が見逃すことはない、毎日虐められていれば誰がどんな仕打ちを僕にするか嫌でも覚えてしまうというものだろう。次に何か起きるならこいつに起きて欲しい。なので、前回同様に人があまり使わない場所にあるトイレでじっと息を潜めている。この後取る行動も変わらない、流石に何時何分何秒まで合わせることは出来ないけど極力前回と同じような行動を取りたい。どれくらい時間が経ったか分からないけどとりあえず外に出てみる。既に窓の外は暗くなっていた。まずは下駄箱に行って全員の帰宅を確認する。こうしないと残って教室で駄弁っているような連中と鉢合わせしてしまうかもしれない。そうなったらこの我慢の時間が台無しだ。全員帰宅してることを確認して安心して教室に入る。そして手袋を装着してから手作りのヒトガタを取り出す。手袋をするのは、なんとなくなんだけど自分の皮膚や汗を紙に乗り移らせないようにするためにしてる。僕が復讐したい奴の机をヒトガタで撫でるのは、そこに残る何かしらの本人の痕跡をヒトガタに吸わせるためだから、そこで自分の物まで吸わせてしまったら僕自身にも同じことが、もしかしたらこないだので自分の首を切っていたかもしれない。だから、基本ヒトガタを扱うとき、勿論作るときも手袋は必須だ。


家に着いていつもの様に適当に家族と会話して夕食を食べてから部屋に戻り手袋をしてヒトガタを取り出す。ここまでは以前と同じだけど、ここからどうしよう。もし、江島の死因が自分のしたことが理由ならもっと猟奇的な死に方をさせることができるかもしれない・・。色々考えて思いついたのは昔見た夢、首が180度回った人間に追いかけられる怖い夢を思い出したから、僕はゆっくりとヒトガタの首の部分を180度回してみた。これで沼渕は死ぬだろうか?いや、ただ死ぬのでは生温い、苦しんで死ぬだろうか?僕は小学校生活の大半を苦しみながら過ごしてきた。だから、僕を虐めてきた奴らは1分でも1秒でも長く苦しみながら死ぬべきだ。これではあっさり死んでしまうだろうか?僕がゆっくり首を回したことで沼渕が少しでも長く苦しんでくれたらいいんだけど・・いや、まずはこれで沼渕が死んでいることを願おう。そんな暗い事を願いながら眠りについた。


翌朝遅刻ギリギリで学校に着くようにしてクラスメートが皆座ってる中に入り、空席が2つあることを確認して自分の席に着く。担任が入ってきたが顔色がとても悪い。日直の号令で朝の挨拶をして連絡事項を聞いてる最中、僕は笑いを堪えるのにとても苦労した。朝の挨拶もそこそこに担任が話し始めたのは沼渕が昨夜死亡したということ。首が180度回ってベッドの上に横たわっているのが今朝発見されたことなどがクラス中の人間の鼓膜を震わせて脳に流れ込んでゆく。彼ら彼女らは悲しい悔しい怖い等の感情が沸き上がっているだろうけど、僕は嬉しくて楽しくて誇らしい感情でいっぱいだ。僕は虐めてくる奴らを殺すことが出来る。それがはっきり分かった。初めて学校生活が楽しみになった気がする。次は誰を殺そうか?もう、この学校は僕の呪いの詰まった箱でしかない。

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