死亡者1人目
お久しぶりです、そら豆です。まあ、僕ごときの小説投稿を楽しみにしてる人はいないと思うので、いくら時間かけて書いてもいいんでしょうけど。
前回、1万超えの文字数の小説だったんですが・・途中で止めて、後日また書く時に前回何を書いたか、長く書いてれば更にその前はどんなことを書いたか。そういう遡りをしながらどうやって収束させるための文書を書くかを考えるのが僕程度の小説書きには凄くしんどくて、今回連載小説形式にしてみました。せめて皆さんの暇つぶし程度になっていますように・・。
ねえ、何故君は僕を殴るのかな?毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日・・。僕は自分の心を殺したよ。君に殴られて身体は痛めつけられても君に心は傷つけさせない、これは僕にできるささやかな抵抗だよ。君が僕を殴るたびに浮かべる笑顔を見ても僕は何にも感じない。こうすることで君が僕を屈服させようとしても絶対にそうなることはない、僕の心は絶対零度の塊になっているから。
心は殺しても頭は冴えてしまっているから、思考は止められないし痛みが殴られるたびに訪れている。君はただひたすらに僕が耐えるだけだと思っているんだろうね、いいおもちゃを見つけたとでも思っているんだろう。だけど、それは君の眼に見えているだけの世界であって僕の観る世界ではない。僕が観ている世界では、君は僕に何度も殺されているんだよ知らないだろう?気づけないだろう?僕は俯瞰で君を見て、そこから君が殺される所を特等席で観ているんだ。最初は逆上した僕が隠し持っていた刃物で刺し殺したんだ。何が起きたか分からないって顔をしてからの痛みに歪んだ顔はとても素晴らしかったよ。けれど、この方法では一回で終わってしまうし、何より君が僕を殴ってきた時間との割が合わないくらいに一瞬で終わってしまう。だから次は同じように逆上して首を絞めてみた。本来なら人を殴ることに何の躊躇もないほど喧嘩慣れしている君相手に僕が懐に入るなんてできないんだろうけど、火事場の馬鹿力っていうのは本当にあるんだね。君が何の躊躇いもなく僕を殴ろうとする拳を必死で交わして手の届く範囲まで近づいた僕は君の首に手をかけて全力で締め始めた。君の首を絞める感触、歪む顔、滲む涙、そのすべてを特等席で観られるんだから最高だ。この想像は何回したか分からないよ。いや、何回どころか、何十回何百回やったかわからない。君が僕を殴り続けてる間に僕は君を殺し続けてるよ。殺し続けてるよ。殺し続けてるよ。殺し続けてるよ。
でも、それだけじゃないんだ。周りで観てるだけのクラスメートも同罪なんだよ。僕が殴られてる間、ただ遠巻きにして観ているクラスメート達。君達だって僕は心の中で何度殺したか分からない。僕を殴るやつを殺すように刃物を持って手当たり次第刺し殺していくけど上手くいかない。何人かは殺せるのに何回頭の中で殺し続けてもクラスメート全員を殺すことができない。途中で誰かに逃げられ大人を呼ばれて取り押さえられる。そしてクラスメートは僕が虐められてるのを観る時と同じ目をしているんだ。侮蔑と嘲笑の入り混じった目を。その目で僕を観るな!その目を僕に向けるな!僕が何をした!ただ大人しくただ密やかに過ごしていただけじゃないか。平凡に勉強して平凡に運動して平凡に友達作って平凡に片想いして。それの何が気に食わない?それの何が気に入らない! 僕には普通の学生が普通に過ごしていたら経験するようなことすら許されないとでもいうのか?ああ、そうだね・・・。平凡な普通の学生、それはきっと君達の方なんだろう。誰かを殴って誰かを虐めて誰かを嘲笑って誰かを自殺に追い込む。それがきっと平凡な学生で虐められる学生が非凡なんだろう?なら僕は平凡なんていらない。お前たちと同じような人間になるくらいなら一生虐められた方がマシだ。
そんなことを考えながら小学校の6年間を過ごしてきた。あと少し我慢すれば卒業して中学受験をしているような奴とは別れられる。けれど、中学生になったところで顔ぶれはほとんど変わらない。3年間今と同じような学校生活を送る未来が既に見えているからやる気なんて出るわけないし真面目に過ごす気なんてあるわけない。毎日感情を無くして登校して、毎日無機質に授業を受けて、毎日無味乾燥に給食を食べて、毎日自分の精神を卸し金で卸して生活する。このままでは自分がすり減るだけでいつか限界が来ることは僕自身が一番よくわかっっているけど、どうすればいいかわからない。親に相談したことがある。直ぐに担任教師に話が伝わり意識調査のような学級会が行われた。勘のいい虐めっこ達は真剣に話を聞くふりをして、教師の話に神妙に頷いてやり過ごす。そして僕だけが職員室に呼ばれ、虐めなんてウチのクラスにはないんじゃないかと?と言われた時には、ああコイツ駄目だと悟った。コイツは自分の観たいようにしか世界を観ていない。教師が観ていない時間に教室という狭くて嫌な世界で何が起きているかを知らないくせにちょっとクラスで良い話しただけで解決した気分になっている。僕は話を適当に切り上げて家に帰った。妙にニコニコした両親が待っていた。嬉しそうに口を開いたと思ったら予想通り担任に相談しに行った話だった。これで虐めは無くなる、また何かあったらまたすぐ相談しなさい、か。ここでも僕は適当に話を切り上げて自分の部屋に戻る。救われない報われない意味がない。破壊衝動を必死に抑え、発狂して叫びたい気持ちを押し殺して椅子に座る。きっと両親は子供の相談に乗って我が子の虐めの解決の為に颯爽と動いた素晴らしい親だとでも思っているんだろう。全く頼んでないけれど。僕のストレスの捌け口になってくれればそれでよかった。これが原因でチクったとなり今まで以上に苛烈に狡猾な虐めが始まることが分かり易く見える未来だ。大人は信用できないし信頼できない。自分の身を自分で守るにはどうすればいい?一対多数では殴り合いでは絶対勝てないし、どんなに確実な証拠を持って行ってもシラを切りとおすだろう。僕に残されてるのは、僕がやったと絶対に分からずかつ一方的にアイツラを甚振れる、そんな都合のいい世界を作らなくちゃいけない。けど、いくら考えてもそんな世界を創るなんて小6の頭で簡単に思いつく筈もなく途方に暮れてなんとなくテレビをテレビを点けてみた。やっていたのは僕の好きな心霊特集、人の強い恨みや怒りが死してなお残り続ける不思議な現象。今、僕が死んだらあの教室で幽霊としてアイツラに復讐することが出来るんだろうか?一回死んで試してみたいけど一回しか死ねない。どうすればいいんだろう。そんなことを考えながらテレビを観続けていたら、除霊系のコーナーになってしまった。ここは怖い物が何も出てこなくて、除霊師と何かに取り憑かれたという人が延々映り続けるだけなので普段なら適当に観るだけだったんだけど、今日の除霊師は現代の陰陽師と呼ばれる人だった。そこで興味深い物を使っていた。式神、陰陽師が使役していたというものを対象の背中にこすりつける動作を、紙で作った式神を何枚も変えて繰り返していた。そうしたら取り憑いていた霊が何度も苦しそうな声をだして弱っていく感じがテレビで映っていた。これを観て僕は、直ぐにネットで式神の作り方を調べ始めた。もう、自分の身は自分で守るしかない。例えそれがオカルトでも、僕を救ってくれるなら天使でも悪魔でも魑魅魍魎でもいい。きっと本当に僕を救ってくれるのは人間以外の存在だろうから。
翌日、普通に学校へ行き普通に虐められ普通に授業を受けて普通に虐められ普通に給食を食べ普通に虐められ普通に午後の授業を受け普通に虐められ普通に掃除をして普通に虐められ放課後を迎えた。いつもならさっさと帰っているんだけど、今日は最後の一人になるまで残っていたい。けれど、このまま教室にいるままでは放課後まで虐められるので、人があまり来ない4階のトイレに隠れて息を潜め続ける。他人に見られたくないから出来れば部活が終わるまで隠れていたいけど、約3時間同じトイレが使用中では怪しまれるだろうか?誰か入ってきたら別の場所のトイレに隠れに行こうと思っていたけど、幸いなことに一度も足音がすることなく部活終了の時間になった。僕は大きく伸びをして体の骨を鳴らしてコリを取り個室から出ていく。既に学校は真っ暗だ。正直、静寂と暗闇が支配する校舎は少し怖いけど、今から僕がやろうとしていることを考えたらこの雰囲気の中の方がいいかもしれない。
先に下駄箱へ行って自分の学年の生徒全員が帰ってるのを確認して、自分のクラスの教室へ入っていく。軍手をして鞄の中から見様見真似で作ったヒトガタを自分を虐めてくる連中の一人、江島の机に擦り付ける。恨みと怒りと呪いを込めて念入りに擦り続けて、気が済んだらビニール袋の中に入れて鞄にしまった。これでようやく学校を出ることが出来る。直ぐに帰って試したい。このヒトガタを。
家に帰ると親に心配してる風な言葉をかけられたけど適当に流して自分の部屋に戻り、ここでも軍手をして早速鞄から取り出してヒトガタを手に取る。正直夜の教室にいた時は雰囲気と高揚感で何か起こせるかもしれないと思っていたけど、自分の部屋に戻ったら急速に醒めてしまった。なんというか、普通の日常に帰ってきてしまった感じがする。身体のとこに江島と書いた自分で作ったヒトガタを眺めても何の興味も湧かない。こんなのが効くわけはなく、明日も明後日も明々後日も僕は変わらず虐めにあうのだろう。そう思ったら急に馬鹿々々しくなりヒトガタの首と胴体を挟みで切り離しゴミ箱に捨てる。鋏を入れた時に少しだけ気分がスッキリしたけどそれだけだ。明日も今日と何も変わらない明日が待っている。なんの希望も救いもない明日が。
翌日、やはりいつもと変わらない今日というのは来るもので、何の希望もない明日が何の希望もない今日になってやってきただけだ。だからとても憂鬱ないつもと変わらない気持ちで登校する。朝から虐めに合わないようにするために時間ギリギリに教室に入って自分の席に座る。直ぐに教師が入ってきていつもの朝の挨拶をしたけど、クラス担任の様子がおかしい。何かに怯えているかのように視線が定まらない。
「え~・・昨日の夜、このクラスの江島雄太くんが亡くなりました」
一瞬でクラスの空気が張り詰める。死因を詳しく聞きたかったけどその辺は適当にぼかして業務連絡を伝えるだけでHRは終わってしまった。空気は張り詰めたままだけど、担任が出て行った途端に教室のそこらじゅうでざわめきが起き始める。ここでの会話は余り気にしなくてもいいと思う。大事なのは明日。たぶん、江島と仲の良かったクラスメートは家に行って何があったのかを帰りに聞きに行くだろうし、もし、僕が考えてる通りのことが起きたならちょっとしたニュースになって夜の新聞に小さく載るかもしれない。幸いなことに、いつもならこの時間はウォーターバッグタイムなんだけど噂話に夢中で誰も殴りに来ない。もしかしたら今日は平和な学校生活というものを堪能できるかもしれない。
平和な学校生活なんて都市伝説だと思っていた。学校とは虐められに行く場で他人に見下される場で自分を嫌いになる場でしかないと思っていた。だから、嘘偽りなく小学校に入学して初めて平穏な学校生活を送ることができた。それがあのヒトガタのおかげだとするなら、僕は負の感情で起こる全ての事象全ての祟りごとを信じよう。丑の刻参りだってやりたい気分だ。新世界を創るなんて大それたことは言わない、自分を虐める全ての生徒がいなくなってほしい。そんな思いを抱えて急いで家に帰り、僕はまたヒトガタを作り始める。次は誰にするか、そんなことを考えながらヒトガタを作っている僕は自分が嗤っているのを自覚した。嗤うなんて学校生活を送ってきたなかで初めての事かもしれない。
朝になり、また学校へ行かなければならない日がやって来たけれど人生で初めて行くのが楽しみになっている。昨日何が起こったのか、残念ながら新聞に載るほどなことではなかったらしい。けれど、江島が死んだのは事実なんだから今日学校へ行けば何かわかることはあると思う。そして、それが自分が考えてる通りの事だったら・・。とても良い気分でで朝食を食べてる僕を観て両親が満足そうに頷いている。大方、自分達の行動で息子を救えたとでも思っているんだろう。普段なら脳内でボコボコにしてやるところなんだけど、今日はそんなことはどうでもいい。朝食を急いで食べ終えて早めに学校へ行くことにする。いつもなら朝から殴られるのを避ける為に時間ギリギリに教室に入るようにしていたけど、噂話を聞くために多少早く着いてみた。案の定珍しいモノを見るような目で見られたけど、それどころじゃないらしい。HRが始まるまで約5分の間に教室内を駆け回る噂話に耳を傾けてみた。話の中心にいるのは、江島とつるんでいた数人のクラスメート、DQNってやつは何歳からでもDQNみたいで、江島の家族に色々聞いてきたらしい。それを武勇伝のように語るのも周りで楽しそうに聞いてる神経も疑うけど、今は少し離れた自分の席から会話に集中して、嫌だけど、凄く嫌だけど、死にたくなるくらい嫌だけど周りで聞いてる連中と同じ穴の貉になって話を聞いておこう。
授業が始まっているけど全く集中できない。聞いた話を纏めると江島は首を切られて死んでいた。部屋の窓には鍵がかかっていて2階とはいえ外からの侵入者は考えにくい。家族が気づいたのは朝になってからだったけど、警察の死亡推定時刻は昨日の夜ということらしい。それら全てが自分がしたことと符合していて背筋が寒くなると同時に高揚感が自分の身体の内を駆け巡るのを感じた。もし本当に僕がしたことで江島が死んだのなら、この先このクラスから大量に死者が出るだろう。そして、僕はきっと碌な死に方はしないだろうとも思うけど後悔はしていない。僕の楽しい学校生活はこれから始まるのだから。
人は、奇跡を起こしてきました。全く違う人生を歩んできた異性と出会い、恋をして、愛を育むことは幸せな感情が産んだ奇跡と呼んで差支えないでしょう。
では、暗い感情を抱えながら生きてきた人には奇跡は起こせないでしょうか?この答えは、心霊現象なんじゃないかなと僕は思っています。怖いのは苦手だし自分では絶対に体験したくないですけど、あった方が元いじめられた人としては救われますし、変な日本語ですが自分が恨みを抱えて死んだ後に自分を虐めていた奴らに不幸が起こるという希望を抱きながら死ねるんじゃないでしょうか?死ぬのは駄目ですけど。死ぬのが駄目だと僕が言う理由はタイトルを思い出して頂ければ理解して頂けるかと思います。