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我が転生  作者: アドルフ・ヒトラー
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第4話 「運命」

私はできる限りの力を使って、彼に語って聞かせた。

古代の成り立ち、ゲルマン民族・アーリア人の偉大さ、そして中世の騎士や王族の事、ナポレオンやエカチェリーナ女帝の近代、そして先の戦争と、私の率いた戦争の事…

話す度に伍長は目を丸くして私の話に聞き入った。

そして私は、彼が私の話に陶酔してゆく様をじっと見つめた。

私は仕上げにかかった。


「いいか!!ヴォルフスブルク伍長、この帝国がどの様になっているのかは分からぬ。しかし、私がこの様に転生させられたということは、これは、神の啓示であるのだ!!!私に、もう一度力を持ち、この帝国を正しく導けと言う、啓示なのだ!!!」

「おぉ…!!」

「私はできる限りの力を使ってこの啓示に従いたく思う。しかし、今の私は不審者の身…誰かの協力が必要だ…」

「…!!!」


「“君”が必要なのだ、伍長。我が同志となって欲しい。私にとって共産主義者(コミュニスト)共も、そして悪逆なるユダヤ主義者(シオニスト)共も居ないこの世界は、新たなる挑戦の、理想的な大地なのだ!!私はこの帝国を、そして世界を導かねばならない!!!ヴォルフスブルク伍長!!君の力が必要なのだ!!!」

「…はいッ!!!私のような者でも、あなたに帝国を導いて貰えるお手伝いができるのでしたら…微力ながら、協力させて頂きます!!!」


「よろしい。では伍長君、いきなりだがまずは話し合おう。この後私はどうすれば良いと思うか。」

「誠に申し訳が無いのですが、貴方は1度監獄へ収監されねばなりません。何故ならば、この聴取録は確実に上に提出せねばならぬからです。」

「ほう…」

「確実に出る事は出来なくは無いのですが…約1ヶ月ほどかかるとお思い下さい。」


何、私はかつてランツベルク刑務所に8ヶ月囚われていた人間だ。今の健康状態をもってすれば、1ヶ月など容易いものだ。


「そうかね、しかしこの約1ヶ月の間にどうやったら監獄から出る事が出来るのか。」

「それは簡単です。貴方が収監されるのは、精神患者や政治犯の収監されるゲーニヒカ監獄であると思われます。そこでは月に1度、精神病が克服されたか否かを検査する試験が行われるのですが…それに合格すれば、出監が認められます。」

「なるほど。」

「今から、答えをお伝え致しますので、それだけは、今から約1ヶ月間覚えておいて下さい。」

「分かった。それに従おう。」

「…いや、その前にこの世界の基本的な事についてお話しなければなりませんね。」

「おぉ、そうだ、その通りだな。」

「では、お話致します…」


彼はできる限り分かりやすく、私に語って聞かせてくれた。

それによると、ここは神聖ゲルマニカ連合帝国と呼ばれている帝国主義国家であるという。

皇帝は選帝侯らによって皇帝選によって選ばれ、特定の王朝という訳では無いそうだ。

帝都グラン・ヴェルメを初めとする帝国直轄領の他、各種選帝侯領等、貴族等によって地方が自治運営されており、その中には、民主政体つまりは選挙制度を有している自治体もあるという。


今現在、この帝国を統治している皇帝は、旧ヘルベルト選帝侯であった、ヘルベルト・フォン・ローンIV(4)世で、聡明にしてなかなか侮れぬ風格を携えている。

そもそもこの帝国には、世界統一暦という暦と、帝国基準暦という2つの暦が適用されているという事だ。

この帝国の歴史は古く、三百年の歴史がある。初代皇帝ヴィクトーリア・フォン・アレキサンドラⅠ世、別名アレク大帝が世界統一暦964年に、帝政 東ラウールこと大ラヴィルス帝国でクーデターを起こし、帝国議会において帝国宰相及び帝国大総統に就任、皇帝を廃位した後に建国した。この年を帝国基準暦元年とし、以来300余年の長きに渡って諸地域、国家を吸収。連合国家としての性格をいっそう強め、事実上の世界一の大帝国となっているそうだ。我が世界に於いての神聖ローマ帝国という所だろうか、連邦制国家に近い、諸邦連合国家である。


階級社会であり、皇帝、王侯貴族ら諸侯、騎士等の有爵位階級、これらが主に貴族特権階級である。富裕商人、大地主、資本家等が庶民上流階級、職人、商人、兵士等の一般階級が中流階級、農民や奴隷等が最下層階級であるという。

更には魔導師と呼ばれる魔法を使う者も1部いるようだ。


なるほど、典型的な中世封建社会である。そして民主的自治体の存在…利用するに限る。

私が上へと上り詰めるには、民主政体の利用が必要不可欠だ。


種族は人間の他、獣人、エルフ、ゴブリン等多種多様な生物が共同して文明を築いているという。

私はこの一連の説明を受け、理解した。

これは運命だ。運命以外の何者が、私をこの地に招き寄せるのか。

神が私に、闘争を継続せよと命ぜられているのだ。


「なるほど、よく分かった。その後も様々情報を貰えるとありがたい。」

「無論です。しかしまずは試験の内容について…」

「あ、あぁ、そうだったな、話してくれ。」

「簡単です。出題されるのは基本的な問題ですから。ヒトラーさんの能力をもってすれば余裕で通過出来るでしょう。」

「ほう」

「まずは帝国の名前。」

「神聖ゲルマニカ連合帝国だな?」

「はい、その次に現皇帝。フルネームでお願いします。」

「ヘルベルト・フォン・ローンIV世。」

「はい、次に収監される監獄の名前の文字を書くのです。」

「なるほど」


アルファベットにキリル文字、それにラテン文字を合わせたような文字列だが、私はその文字列を読み、書く事が出来た。

私は全ての対策を伍長より教えてもらった。

そして、こう言われた。


「ヒトラーさん、貴方はこの術を忘れなければ監獄から出る事が出来ます。が、まず入るにも何をするにも身元の証明が必要です。」

「確かにその通りだ。」


正論だ。身元不明の男など、一体どの有権者が相手にしようか。

彼は私に言った。

「まずは身元をどうするか考えましょう。」

「そうだな、ではどうしようか。」

「私に心当たりがあります。」

「ほう…」

「孤児院の出と言う事にするのは…」

何?私に孤児院出の卑しい者に成り下がれとでも言うつもりか!?

「それ以外に手は無いのか…?」

「おそらく、今のところは…それに、ある孤児院を運営しているご夫婦は私の知人ですから、話を分かってくれる筈です!」

「おぉ、そうか。」

「はい、早速行きましょうか!」

「分かった。」

その通りだ。早く行動するに越したことはない。1939年のポーランド侵攻の際の電撃戦もその例に漏れず、大成功を収めたものだ。

即行動するのは、成功への道である。


こうして私はヴォルフスブルク伍長と共に、彼の知人である老夫婦の運営している小さな孤児院を訪れた。

伍長はここに向かいながら、だいたいこの様な事を話してくれた。


私が目を覚ました都市は街道沿いに栄える交通の要衝であるカウゼンリッツという名前の都市なのだそうだ。そしてその郊外に位置する中規模の村であるエーベングラッペ村の端にある、今から訪れるアヴィルック孤児院は、簡素な造りながらも、30年以上の長きに渡り、多くの子供を社会に送り出してきたというのである。

そして、かく言う自分もここの出であり、この施設のおかげで今は衛兵として働くことが出来ているのだと。


素晴らしい。賞賛すべき愛国的社会奉仕精神である!我が国に於いても、国家社会主義公共福祉(NSV)や内務省の国家労働奉仕団(RAD)等が、国家や国民の為の奉仕活動を行ったが、しかしこの様に国家に義務付けられずとも自ら進んで国家社会への奉仕を行うとは、見上げたものだ。理想的な奉仕精神と言ってもいい。


そこの老夫婦は夫はヨーゼフ・フェルザー、婦人はアデリナ・フェルザーという名の老夫婦であった。

フェルザー婦人はまだ30代の若き頃より進んで青少年、少女を優しく育て上げ、彼彼女等の母となった女性である。なんと言う模範的な女性であろうか!

ヨーゼフ氏は本業である牧畜を行いながら、その収益を自らの為ではなく、子供の為に使って、孤児院を運営している。正に模範的労働者であると言えよう!


私はこのフェルザー老夫妻に、身の上を簡単に話した上で、出自をこのアヴィルック孤児院としてもらう事の了解を得ることが出来た。


「まぁ、そのような事が。向こうの世界ではさぞかし大変だったでしょうに…」

「なんの、なんの。私は健康だったので。」

「まぁ!御丈夫です事!」

「いえいえ。しかしご夫婦、本当に感謝します。この世界で身寄りがなく、しかもこれから収監されてしまうであろう人間に、身寄りを与えて下さって。」

「大丈夫ですよ、ヒトラーさん。私はね、色んな子供達を見てきましたが、その中には収監されてしまった子もいます。しかしね、皆私の子供達なんですよ。」

「ご主人の心がけ、素晴らしい事です。」

「いやいや」

「しかし、これも貴方がたと私とを引き合わせてくださったのも、たまたま彼が私の転がり落ちた所に居てくれたお陰です。」

「その通りですなぁ」

「はい…私もいきなりヒトラーさんが転がり落ちてきた時には驚きましたが…まるで運命みたいですね。」


その通りだ。運命が私をここまで押してきたのだ。“我が闘争(マイン・カンプ)”は未だ終わってはいないのだ!

宜しい。収監されるの言うのであれば、喜んで収監されよう!そして、出監して、私は闘争を継続せねばならない!!!

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