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我が転生  作者: アドルフ・ヒトラー
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第3話「聴取」

荒い石造りの部屋。所々に松明がともり、木の板で窓が塞がれ、木で作られた扉が正面にある。私は木で作られた机に向かって、木の椅子に座らされ…目の前のゴブリンと睨み合って居た。


「おい!!いい加減にしろ!!この珍妙男!!!アドルフだかなんだか知らんが、兎に角貴様の身元が一切不明なのだ!!!詳しい出生を言え。貴様の妄言、空想の国なんぞはどうでも良いのだ!!貴様一体、何処の村の生まれだ!!えぇ!?」

聴取係のゴブリンが怒鳴った。


「…ふぅ…」

椅子にふんぞり返って、テーブルに足を乗せる行儀の悪い姿勢で煙草を吸っていた狼の兵士(ヴォルクスブルク伍長)が口を開いた。

「グリントさん、無駄ですってば。俺ですら口を割れなかったんだ。こいつぁ、本物の気狂いか、大うつけものか、はたまた極めて天才的な隠者か、どちらかですぜ。」

「チッ、この野郎、此方が優しく接してるうちに、素直に吐けばいい物を…」

グリントと言われていたそのゴブリンは、煙草に火をつけ、木の扉を蹴飛ばすようにして、ふてぶてしく部屋から出ていった。

室内が私とヴォルクスブルク伍長だけになると、彼は、テーブルに乗せていた足を下ろして、肘を膝に乗せて、そして、口を開いた。

「さて…アドルフさん、俺ぁ、どうもあんたの言葉が真実に聞こえてきた…。あんたはあの時、本当に山の中から転がってきた。あんたの語ってる話が本当だとしたら、あんたのあの時のあの素振りは全て納得が着く。詳しく聞かせてくれ。」

「なるほど、分かった。話してやろう。私の事を…」


まずは良し。彼は私に対して興味が出てきた様だ。人を味方に付けるには、まず、自分に対しての興味を引き出す事だ。興味を引き出し、そして魅了させる。ここまでがひとつの流れだ。

まず1人の同志を作る。そしてそこから2人の同志にする。そうすれば、あとは4人、8人、16人と増えてゆく。党組織とはそのようなものだ。

ところで、読者諸君は、何故私がこの様な取調室に居るのか気になるだろう。

其れには、前話の直後から話をしなければならない。


母子を見た後、私は暫く歩かされ、街の外れにある石造りの小ぶりな建物に通された。

どうも此処が彼ら衛兵の屯所であるらしい。私はその中の、右手にある、気の扉の向こうに通された。前述の石造りの部屋だ。そこには、例のゴブリンーー当時はゴブリンと断定は出来なかったがーーがぶっきらぼうに座っていて、窓を開けて煙草を吸っていた。



「あ!?なんだ、またボケか。まァ、そんな格好見りゃ気狂いだと1発で分かりゃあな。」


荒々しい口調で言った。そして、「おい、そこのボケ、ほらいいからとっとと座れ!!言葉まで分からなくなったか!?えぇ?」と私に対して怒鳴った。

あろう事か、この私にだ。我がドイツなら、ヒムラーの親衛隊(SS)が、直ぐにMP35(ベルグマン)で蜂の巣にしていたであろう口の利き方だ。

癪に障ったので言い返してやった。

「言葉の利き方には気を付けたまえ、哀れで、且つ馬鹿な阿呆君よ。人には人に対する口の利き方がある物だ。」

所詮獣の街のゴブリンだ。直ぐに言い返して来た。

「あぁ!?てめぇ、ぶっ飛ばすぞこの野郎、良いから早く座りやがれ!」


私は見てられなくなった。ここまで哀れなモノが存在しうるのか。脳みそがあるのか無いのかすら分からぬ程に阿呆であると見える。

これならあの狼の伍長の方が何倍も利口だ。

私は部屋の入り口で私の後ろに立っている狼の伍長に言った。

「奴はなんという種族なんだ?」

「ゴブリンだ。貴様はなんにも知らんから、もう驚きはせんが、その程度は知っておけ。因みに私は狼の獣人、即ち人間種と狼の混血種という訳だな。」


なんということだ、この世界では、獣と人間が婚姻する事があると言うのか。馬鹿げてる。我が世界には無くて良かった法則だ。あったならば、我がアーリア人が、みな獣と化してしまうでは無いか!!許されるべきものでは無い。ユダヤ共だけでも一苦労したというのに、獣まで殺さなくてはいけなくなる。なんという事だ。笑い事では無い。


「ほう、なるほどな。感謝する。」

私はゴブリンという妖怪は、空想のものという認識であったが、やはりこの世界は幾らかおかしくなっている様だ。現に此処に存在するとは…!!!


「ククククク、おい待てよ、ヴォルフスブルク、この馬鹿親父はゴブリンとか獣人の事も知らねぇのか!?フハハハ、此奴は傑作だ!!とんだ馬鹿者が来たな、おい。」

このゴブリンめが、薄汚く笑いおって…私は、貴様らなんぞに笑われるべき人種ではない!!純血のアーリア人だ!!ゲルマン民族なのだ!!!

私は迫る怒りをやっとの思いで沈めた。


ゴブリンは又、懲りずにその薄汚い口を開きおった。

「フッ、貴様は怪しい奴と認められてここまで連れてこられた。その意味が分かるよなぁ?、良いか、これから俺が貴様を徹底的に調べる。事情聴取って奴だ。分かったらとっとと座れ!!この馬鹿親父!!!」

こうして私は座らされた。

ヴォルクスブルク伍長は私の後ろから離れ、右隣の椅子に腰をかけ、行儀悪く机に足を乗せて煙草を吸い始めた。


「まず、年齢と名前、まァそういう基本情報を吐いてもらおうか。」

「基本情報…か。幾らでも話そう。

私はアドルフ・ヒトラー、オーストリア=ハンガリー帝国ブラウナウ・アム・イン出身、ドイツ国総統にして国家社会主義ドイツ労働者党党首、党員番号」

「555番だろう?もうさっき聞いた。」

「なんだ?ヴォルフスブルク、てめぇ、このちんちくりんの仲間になったのか?」

「違います。先程からこの男、うるさいので。」

「そうかそうか。ほほぅ、で、どうなんだ。何処の生まれだ?」

「だから、言っているであろう。オーストリア=ハンガリー帝国のブラウナウ・アム・インだ。」

「だーかーら、この世界にそんな場所ないって言ってんだよ。馬鹿親父。早く正式な場所を言え。」


正式な場所と言うから言ってやってるのに、私に法螺を吹けとでも言うつもりか、この妖怪は。

私は本当にオーストリア=ハンガリー帝国のブラウナウ・アム・インで産まれたのだ。貧しい靴職人の息子だった。親父からは虐待されて育った。あの街を忘れるわけが無い。だからそう言ってるだけなのだ。最もここは異世界だ。信じられぬのも無理はない。しかし、信じて貰えるまで言い続ける事だ。そうすれば、誰か必ず、信じる者は現れる。


「じゃあ、仮にそのナンタラ帝国のナンチャラ・アム・イン出身だとしよう。そこで貴様は何をやったんだ?」

「本当の事…をいえばいいのだね?」

「あぁ。本当の事をいえばいいのだよ」


「私はその街で靴職人の息子として生まれた…元は絵描きを目指していたが、父から猛反対を受けた。虐待をされて幼年期を過し、18歳の頃にウィーン美術アカデミーを受験、これに失敗した。なんとも耐え難い苦痛であったが、これは今思えば、神の啓示だったのだろう。」

「ハッ、神の啓示?何言ってるんだお前は。」

「良いから黙って聞きなさい。君に知性は要求しないが、君が職務を果たさねば私は解放されないからね。良いか、その続きだな。私はその後軍隊に入り、戦争を戦った。武勲を立て、1級鉄十字章や戦傷章等も受勲されたのだ。その後我が国は敗北主義者やユダヤ主義者(シオニスト)共の妨害によって惜しくも敗北し、経済は困窮した。

私は国家社会主義(N・S・D)ドイツ労働者党(・A・P)を立ち上げ、ドイツ国民を死の貧困へと誘った連中を叩きだしてドイツ国民を豊かにする為に選挙に出馬、ドイツ首相、その後大統領も兼任してドイツ国総統になった。」


「ほう、首相ってのは、あれか、帝国宰相みたいなものか。大統領ってのはよく分からんが、とりあえず一国の長になったんだな?」

「その通りだ。その後私は数年のうちにドイツ国民500万人の失業者を殆ど0にした。その他優れた政策を多く行った。そして私は戦争に敗けて奪い取られていた領地の奪還に務めた。しかし…私が東方生存圏を掛けて戦ったソヴィエト連邦(コミュニスト)共は何とも屈辱的だが強かった。そして、私は惜しくも負けてしまった。赤軍(コミー共)が迫り来る中、私は自室の居間で自決した。しかし、気づいたら街の近くの森の中に居たのだ。そしてその森をさまよっていたら枯葉に足を取られてな。坂を滑り落ちてしまった。そうしたら彼が居たのだ。」


「ほうほう、なるほど、貴様は元異世界の国の長で、戦に負けて自決したら、こちらに飛ばされてきた…と。」

「うむ。そういう事だ。」

「んなわけあるかぁ!!!貴様、舐めるんじゃあねぇぞ!!!この野郎!!!」

「舐めてなんぞ居るものか!私は至って真面目だ!!」


こうして例の顛末になったのだ…

頭の痛い話だ。

物分りの悪いゴブリンには疲れる。我がゲルマン民族とは頭の細胞が100億個位差があるのではとさえ思われた。



「さて、ヴォルクスブルク伍長にはどこから語ればいいかな?」

「出来れば、最初から頼みたい。」

「良かろう。少々長くなるぞ?」

「構わん。」

「では話そう…これは全て実話なのだがね…」


私はこうして、最初の同志を得るために、自分の人生を語って言ったのだ

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