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美味しい…。

毎日投稿諦めます。

「お待たせいたしました。東条院様、北上院様」


「遅い」


「申し訳ございません。兄が見つからなかったもので」


「まぁまぁ、京。そこまで待った訳じゃないし、良いじゃないか。それより出発しなくて良いのか?」


「…二人とも、乗れ」


なんやかんやいって、二人は、まだ肌寒いというのに車に入らず、外で待っていてくれたらしい。

私たちが全員乗り込んだのを確認して、運転手はエンジンをかけた。


東条院家の家紋が入った黒塗りのリムジンの周りには、囮である沢山の同じような車が走っている。

基本的に、医療関係であることを示すため、西城院家の車は白い。

送迎用のリムジンも、お父様の私車も、基本的に全部白になっている。


だから、黒塗りの車…というか、白以外の車に乗るのは、本当に久しぶりだ。

フィリアでいる時には無かった代物だから。




「着きましたよ」


そう言って、運転手はドアを開けた。


車から降り、真っ先に目に入るのは大きな門、それに連なる塀。

塀の中にある全ての土地が東条院の私有地であり、東条院は他にも、さまざまな場所に私有リゾートを持っている。

寧ろ、ここにある東条院邸は、他に比べると狭いくらいだ。


「どうする? 歩くか? 専用の送迎車もあるが」


「別に、お茶会別館でやるって聞いてるし、二キロくらいじゃない? 普通に歩けると思うけど」


「そうですね。日頃、訓練もさせられてますし…少しくらいの運動にはなるのではないでしょうか」


「なら、歩くか」


門に入ってもまだ屋敷には着かない。

ただただ広い敷地の中で一つ一つ分かれている建物を探さなければならない。

本邸、別館、庭園、執務宅、プール、後宮、それから、五歳になったら与えられる、邸宮。

幸い、一番正門に近い本邸から、別館は然程離れてはいないので歩いてでも行ける。

だが、後宮や邸宮ともなると、敷地用の送迎車が無いと、一時間歩いてもたどり着かない事もある。


初めて東条院家に遊びに来た時、入り組んだ道に迷ってしまい、西城院家と東条院家総出で大捜索させてしまったことがある。

結局、私は別館と本邸の渡り廊下に座っていただけだったのだけど。


「ここだ」


そう言って、東条院様が別館の扉を開けた。

モダン風の別館は、綺麗に着飾ってあり、掃除も行き届いている。


「母さん。西城院たちつれてきたけど」


「あらあらまぁ! いらっしゃい! 久しぶりね。椿ちゃん、周くん」


「お久しぶりです。おば様」


「おば様だなんて…遠慮しないでお義母様って呼んでくれて良いのよ?」


「えっと…」


どうしよう…。

流石に婚約もしてないのにお義母様と呼ぶのは…色々噂もされるだろうし。


「まあまあ、まだ決まった訳じゃないんですから…僕と結婚したって良いんですから」


私が困っているのがわかったのか、北上院様が助け舟を出してくれた。


「椿ちゃんはあげないわよ?」


「椿は誰のものでもありませんよ?」


「うふふ」


「あはは」


「「………」」


シーン。

さっきまでの争いが嘘のよう。

嵐の前の静けさ…だったりしない…はず。


と言うか北上院様、椿呼びになってる。

もう少しで初等部に上がるから、直そうとか言い出したの北上院様なのに。

下の名前で呼ぶのは、はたしないからって。


「つば…西城院さ…「もう椿で構いません。…めんどくさいので私も周って呼びますから」…癖って案外直すの難しいんだね」


「そうですね、周」


「二人とも! こっちに美味しそうなショコラケーキあるけどたべるか?」


「行くよ。椿は?」


「私も行きます。…東条院様…驚かれるでしょうか?」


「ん、何を?」


「呼び方です。さっきまで北上院様って呼んでいたのに、急に周呼びに戻しましたから…」


「あー、ね。…京は戻さないの? なんで俺だけって拗ねると思うんだけど」


…ありそうでちょっとだけ嫌だ。

前世と現世は違うって分かっていても、アーツナイツ様のそんな姿見たくない。


「京って、呼びます…」


「うん。その方がいいね。東条院様とか北上院様とか呼ばれるの、実は違和感あったんだ。父上がそう提案して見なさいって言ったから、父の手前、一応言っただけなのにさ、みんな了承しちゃうし」


「ほほ…申し訳ありません…」


実は少し悪乗りしてました。


「あの時結構焦ってたんだよ、僕」


「…本当に…申し訳ございません」


「いいよ」


私達四家の子息令嬢は、幼少から英才教育を受ける。

それは、勉強に限らず、ダンス、茶道、華道、書道なども挙げられる。

他にも、私はピアノやヴァイオリンを習っている。


そして、最も大切なのは、護身と耐性。

私達は、産まれてすぐに毒を試され、身体に耐性をつけられる。

それからは月に一度、毒の経過を見ながら毎回違う毒を投与させられる。

あまり、身体の強くない私は、学校を休む事だって多い。

死にかけた事も何度もあるが、毒殺されないようにするには、必須事項らしい。

これで死んだらどうなるのだろうと思った事もあるが、実際、本当に危なくなった時用の解毒剤が用意されているため、死ぬような、そんな前例はないらしい。

ただ…全身麻痺や脳死状態は過去にも何件か…あー、嫌すぎて死んでしまいそう。


それから、護身術。

これは毎日のことで、体力をつけるための簡易トレーニングはもちろんのこと、体術に銃術、剣術まで習わされる。

剣術は、フェンシングに似ている。

まぁ、私が使う武器がレイピアだからなのだろうけれど。


「京!」


「遅いぞ。二人とも」


「御免なさい…京」


「…東条院って呼ぶんじゃなかったのか?」


「案外癖を直すのは難しいねってことになって辞めたんだよ。京も本当はその方が良かったんでしょ?」


そうだったの?


「別に何でもいい」


「ふーん。で、ショコラケーキは?」


「ああ、おい! そこのメイド。さっき俺の食べていたショコラケーキを持ってこい。…周と椿の分だ。急げ」


「畏まりました。御坊ちゃま」


京って呼んだことにあんまり驚いていない。

それどころか、自分もさり気なく椿呼びに戻している。

あまり、気にしてはいなかったのだろうか。


「お待たせいたしました。ショコラケーキでございます」


そんなに待つこともなく、直ぐにケーキは運ばれてきた。

上に切り分けられたストロベリーやラズベリーなどがデコレーションされているケーキで、ホワイトチョコレートと、ビターチョコレートのグラデーションが美しい。

生クリームにかけられたココアパウダーも魅力的だ。


「食べてみろ」


「「いただきます」」


先ずは、スポンジの部分を一口。


「美味しい…!」


「だろ? これは、俺がシェフに言って作らせたものなんだ。材料から指定して作らせたんだが…チョコレートはヴィタ◯ールのものを使わせたんだ。このベリー達と良く合うだろう?」


「はい。チョコレートもとても甘いのにそのチョコレートを食べた後にベリーを食べても全然酸味が無いです。寧ろ、余計甘く感じるくらい…」


思わず笑むと、京が満足そうな表情を浮かべてしきりに頷いていた。

周も気に入ったようで、一心無乱にショコラケーキを味わっている。


「あ…そういえば、雪くんはどこにいらっしゃいますか?」


「もう少ししたらくると思うが…」


早く会いたい。

ふわふわしていて柔らかそうで暖かそうで…まだ、四家の闇を知らない無垢そうなその笑顔が見たい。



「兄様っ!」


そう思っていたら、大広間への扉が開き、雪くんが駆け足でやってきた。

京に抱きつき、にっこり笑みを浮かべると、私と周に気がついたのか少し京の後ろに隠れてしまった。


「雪、こちらへ。周と椿に挨拶をしなさい」


京がそういうと、恥ずかしそうに雪くんが胸に手を当て、ちょこんと腰を折る。



「椿おねえさま、周おにいさま、おひさしぶりです。おげんきでしたか?」




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