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043 「私の職業は魔術師だ。…そして、魔術師はサイコーだ!」


 二人がいなか町のバス停に降り立つと、そこでは青海が待っていた。

 あたりはすっかりガードレール(*1)色に染まっている。


「ただいま戻りました、師匠(マスター)っ!」

「お帰り。ときわ、いい顔になったな」


「ただいまー。青海、もしかして待っててくれたの? ありがと」

「大丈夫、さっき来たところだ。帰ってくる時間は予想がついていた(*2)からな」

「まあ、そうだけど」


 ときわは早速報告をした。

「師匠、私、本物の魔法使いになりました」

 青海は優しく微笑み、ときわの頭をわしわしと撫でる。


「使って見せなくて、いいの?」

 蛍は正直なところ、バスから降りた瞬間にぶっぱなすのではないかと少しだけ警戒していた。

 しかし、ときわは落ち着いた様子で言う。

「大丈夫。私が使えるって知っているから、それでいいんだ」

 ときわは一つ大人になっていた。


 青海は、見てすぐにわかっていた。その小さな体をやわらかく覆うようにめぐるマナ。時折、カラス除けの防鳥テープのようにキラキラと輝いている。

 まだ粗削りではあるが、だからこそのきらめきだ。

 隣にいてもマナをほんのわずかにしか感じなかったあのころとは大違いだ。


「明日から、マナの使い方を教えてやるよ。たまには師匠っぽいこともしなくちゃな」

「はいっ!!」




 ときわと別れ、蛍と青海は帰り始める。いつの間にか、どちらからということも無く、つながれる手。


「蛍も、なんか少し大人になった気がする」

 青海はふとつぶやいた。

「へ? どこが?」

「いや、なんか、……笑顔がきれい、かな」

「え? ……ありがとう」


 変なことを言った気がする。これじゃまるで口説いているみたいじゃないか。

 青海は一人で混乱していた。

 だいたい蛍も蛍だ、いつもなら「何バカなこと言ってんの」とか言ってくるのに、素直に礼を言うだなんて。


 実際バスから降りた時から、なんか変わったなーという感覚はあったのだ。ときわの変化に隠れてはいたけれど、蛍のマナはなんだか柔らかくなった気がする。

 なにかいつもの距離感が取れないというか、表情に余裕があるというか、とげが取れたというか――

 青海は歩きながら考えていたけれど、答えは出せそうになかった。



 レアリーは知っている。

 変化というものは、いつだって小さなものなのだ。それだけではただのきっかけに過ぎないのだ。

 今だけのものとして、砂山のようになかったことになるのか、それともここから変わり続けられるのか。

 それは誰にもわからないけれど、でも、時間は過ぎていくのだ。


 レアリーは、自分の変化には気付かない。

 ただ、二人の親友の変化が、根を張ることを祈った。



※1ガードレール……山口県内では、夏みかんをイメージしたオレンジ色のガードレールが使われている。(白もある)

※2バス停……一日10本以上停まるバス停は、県全域を見てもわずか数か所。5本~2本というところも珍しくない。帰り時間の推定は容易。

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