幕間 異星人デイル
虚空に浮かぶ、銀の船。
デイルは複数の計器の反応を確認していた。
デイルたちは宇宙を彷徨う旅人だった。故郷を失い、新たな安住の地を探していた。
たまたま立ち寄った星は自然にあふれており、資源の補充に申し分なかった。
現地の民の文化レベルも低い。彼らの持つ科学技術を使えば、簡単に支配できるはずだった。
しかしその星には、彼らが知らない、未知のエネルギーが存在していた。住人たちはそれをマナと呼び、自在に扱う術を知っていた。
現地の生物たちは、その謎の力を使い、デイルらに抵抗した。道具も無しに炎や風を巻き起こしたり、集団が突如幻覚に襲われたり。
銃弾は狙いを逸れて当たらなかった。時間が停止したとしか思えない移動をする者もいた。
そして最終的にデイルたちは、大型の転移魔法陣により、強制的に星から追放されたのだった。
ワープ航法。
デイルたちの星で、かつて使われていた技術。だが、失われてしまった技術でもある。
飛ばされた直後は、何が起こったのかさっぱりわからなかった。事態を把握するにつれ、あきらめと悔しさがこみあげてくる。
デイルは考えた。なぜこんな低レベルの文明しか持たぬ奴らが、我々を越える技術を持っていたのか。
再びあてもなく虚空をさまようこととなった、デイルたち。
そして、再び見つけた、居住可能な惑星。
あの因縁の星に似てはいたが、調査してみると、文明のレベルは大きく異なっていた。
マナと呼ばれる力を使用するものはいなかったが、代わりに科学技術はかなり発展していた。
デイルたちを脅かすほどではないものの、各種機器の警戒網から完全に消えるのは骨が折れた。
また、高速で飛翔、誘導が可能な武器の類も存在していた。以前の星、魔術師と呼ばれていた奴らの攻撃は、破壊力自体はそこまででもなかった。今回は違う。奴らの武器は容易に船を消し飛ばせるだろう。
もちろん当たりさえすれば、だが。
デイルたちは隠れながら、水をはじめとする各種物資の補給に入る。
そんなぴりぴりした空気の中で、突然いくつかの計器が反応を示した。
以前の星で、魔術師らが超常現象を引き起こしたときの反応に酷似していた。
彼らは警戒し、おびえた。しかし、反応はすぐに収まった。
センサーの誤反応だろうか? しかし、複数のセンサーが同時に反応している。しかもその後も日付をまたぎ、複数回にわたり反応が計測された。
彼らは悩んだ。議論は白熱した。
以前との違いとしては、反応がごく狭い地域でしか観測されていないこと。
あのときは、日常的に、複数の反応が複数の場所で観測できた。それと比べると、今回は微弱で限定的なもの。
もしかしたら、対処が可能かもしれない。
無知による油断があった前回とは違う。
正体を確かめるチャンスではないのか。そう考えるのも当たり前だ。
彼らは悩んだ。悩んだ末、答えを出した。それは勇気ある決断だ。
銀の船は、ある地域へと舵を切った。
その地は現地の住人から、こう呼ばれていた。
――山口県いなか市いなか町大字いなか。




