020 やはり私の転生陣の設定はまちがっている
――はあ。
ため息がうるさい。
ダグザがミルメコレオでも見るような目つきを向けてくる。
「わかったよ、認める。お前はダグザだ、うん。 ……でも、それはいいとして、なぜこんなところで引きこもっているんだ?」
「何を言っている、ここへオレを飛ばしたのはお前だろう」
へ?
きょとんとする私に向かって、ダグザは言った。
「オレには、あの城での戦いの途中から、記憶がない。目が覚めて気付いたらこの地の底だ」
私は頭を抱える。
ちょっと待ってくれ、今思い出すから。
ええと、あの時も≪溶鉄の雨≫を喰らわせた気がする。瀕死になったやつを、水晶に封印したんだ。今さっきあいつが見せたアレのことだ。
その後、確か……。持ち帰ったな、それを。家に。
そうだ、家に帰った私は自分のしたことが嫌になり、胸クソ悪くなって酒を飲んだ。疲れてもいたし、そのままベッドに倒れて、少し泣いて。 ふて寝したんだ。……たぶん。
水晶はどうしたろう。しまった? ううん、その記憶はない。とりあえずそこらへんに置いた気もするし。
とりあえず本棚にでも置いたとして、たぶん次の日には忘れてしまっていたのだろうか。
ダグザが口にした言葉。「ここへ飛ばした」とかいうやつ。
それについてなら、心当たりは ――ある。
転生陣をいくつかテストしたときに、起動させるのに使ったのは、そこらへんに散らばっていた水晶。魔法陣の構築のことばかり考えていた。
選んで使ったわけではなく、適当に取って使った気がする。
ん、待てよ、転生陣にぶち込んだってことは……
「あーーーっ!!」
いきなりの大声にときわらがびくぅっとしたのが見えたが、それどころではない。
「いきなりどうした、やかましい」
「ダグザぁぁ! それ、お前の体! 本当なら私のじゃん! 返せ、その乳!」
なんてこった、失敗していなかったんだ! 私の作ったやつのうち、どれだかわかんないけど、理想のやつがあったんじゃん!
「私の体ぁぁ!」
私は半泣きでダグザのでかい果実に手を伸ばす。
柔らかな弾力とともに、ゆっくりと指が埋まっていく。
うはぁ。さいこーだ、これよこれ。これを手に入れるたm――がはっ! ちょ、あいた! 殴るな、ほたる!
突如後頭部に衝撃をくらい、私は舌を噛む。
蛍の猛攻は、渡した刀で大幅に強化され、私に襲い掛かった。ばたんきゅう。
「いたひ、なにふる、ほたふ……」
「うっさい! このスケベ! 死ね!」
しばらく傍観していたダグザだったが、きりがないと思ったのか、なんとか蛍をなだめてくれた。少しは落ち着いてくれたようだが、そのほっぺたは果実のようにむくれたままだった。
次からはもう少し早く止めて欲しいものだ。
ああ、おかげで、まさかのときわが回復を使えることを発見した。
弟子の成長は嬉しいものだ。
「じゃあ、マナの正体もわかったことだし、私たちは帰る」
「ああ、また来てくれ。久しぶりに人と話をした。楽しかったぞ」
楽しかった、か。命を奪った身としては、複雑な気分だ。
私は少し考え、言った。
「外に出てみる気はないか? その、ティルナノーグに比べて変なところも多いが、この世界は良いところだ。私が保証する」
ダグザは薄く笑い、言った。
「そうだな、それもいいかもしれない。エビとコウモリばかりの食事にも飽きていたしな」
彼が(彼女か?)何を考えたのかわからない。かつて治めていた国のことか、それともまだ見ぬ世界のことか。ただ、ダグザはいいやつだ、暗黒の世界にいるべきではない。
また、来てみるか。
私はそう思い、大正洞を後にした。
……あ、エビをもらって帰るのを忘れてた。




