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011 部活へ入ろう! ~魔術部編-1~


「ねえ青海、結局何の部活に入るつもりなの?」

「うーん、魔術研究部とかなら、入ってもいいんだけど」

「あるわけないでしょ、そんなの」


 なんとか剣術部から抜け出しはしたものの、特に目当ての部活があるわけでもない。

 廊下を歩きながら話していると、職員室の前で聞き覚えのある声がした。


「いえ、ですから、別にそんな変な活動では」

「いや二見さん、オカルトでしょ? 十分変ですよ。認められません」


 あ、ときわ。

 相変わらず、何をするにも熱心に取り組む少女である。

 が、ときわの必死の説得にも関わらず、冷たくドアは締められる。がらがらぴしゃん。


「何してるんだ、ときわ」

「あ、師匠(ますたー)ー! 実は魔術研究部を作ろうとしたんですがー」


 すぐ横で、「え゛ーー」という低い呻き声が聞こえた。ふふん、蛍のやつめ、やっぱりあるんじゃないか。

 私は思いきりドヤ顔で胸を反らした。

「ほら、あるではないか、魔術部」


「あ、いえ、そんな部活はないんで、新しく作ろうかと思って」

「え、作る?」


 ときわが胸ポケットから小さなノートをひらき、ぺらぺらとめくりながら説明する。のぞきこむ私と蛍の頭が、こつんとぶつかる。

「えーと、生徒手帳のここ見てください。部員が三人集まれば、同好会が作れると。予算も顧問もないんですが、とりあえずならいいんじゃないですか?」


「その行動力だけは尊敬するわ、あんた」

 なんか引っかかる物言いだけど、蛍もついにときわを認めたようだ。


「三人か、なら揃ったな」

「揃いましたね」

「え、あてがあるの?」

 にんまりする私たちの横で、きょとんとした顔の蛍。しかしすぐに理解したようだ。蛍め、瀬戸内寂聴(グレーター・ウィッチ)を背中に乗せたユニコーンだって、もう少しまともな表情をするぞ。


「もしかして、私も数に入ってる?」


「「もちろん」」




 次の日、私たちは同好会発足の書類をまとめると、改めて職員室の扉をノックした。

 出てきたのは昨日と同じ中年女性教師、松下先生だ。ぴしっとしたメガネ美人だが、融通の利かなそうなタイプである。


「あら、またあなたたち?」

「はい。三人集めました、同好会を作らせてください!」

 ときわは書類を差し出すと、深々と頭を下げた。


「だめだめ、だいたいオカルトは認められないって言ったでしょ。だいたい活動内容が蛇を飼うだの惚れ薬を作るだの、あげくに悪魔でしたっけ? 召喚がどうとか。認められるわけないじゃないの」

 メガネ教師はまともに話を聞く気すらないようだ。――って、おい! ちょっと待てときわ。お前は一体魔術部についてどんな説明をしたのだ。


 ときわとメガネ教師の話を横で聞いていると、呪術系魔術の話ばかりしている。ティルナノーグでも禁術すれすれの、使ったら嫌われるどころかボッチ確定の恐ろしいやつだ。

 そんな部活、私が教師でも禁止させるぞ。


 ときわの暴走をどう止めるか悩んでいたら、蛍がずいと前に出る。

 書類の下の方を指さして、何やら説明をし始めた。


「あのー、ちょっと先生、何か勘違いしてません? ここの部分と、それとここも。ちゃんと読みました?」

「あら豊田さん。なあに、もしかしてあなたもこんな怪しげな部に入るの?」


 どうやら蛍はある程度の信用があるようで、メガネ教師もなんのかんの言いながら書類に目を通してくれた。

 最初は嫌がっていた蛍だったが、結局「あなたたちが書いたら認められるわけないでしょ」と言いながら、色々と手伝ってくれたのだ。まさか書類の偽造スキルを持っていたとは思わなかったが。


「あら、魔術部って、要するに手品部のことだったのね」

「はい、そうですよ。二見さんは凝った手品が好きなので、話がこじれちゃったみたいで」


 ふーん、そうねえ。うーん。

 松下先生は少し悩んでいたが、結局折れたようだ。

「わかりました、確かに書類上は問題ないし、認めます。でも、危ないことはしないでね」


「はい、ありがとうございました!」

 明るい声で元気な返事をする私たち。ときわは、折れそうなくらい腰を曲げてお辞儀をしていた。


 こうして三名の部員をそろえ、『いなか高校魔術研究部』は発足したのだった。



※魔研部ルール・テキスト

 魔術研究部は部活動であるかのように扱う。

 魔術研究部は校則の対象にならない。

 教師が魔術を確認した場合、代わりにそれは手品である。

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