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9節 採用試験8 自分の在り方

「ッッックハァ!!」


 斬られたと思った瞬間に、緊張で止まってた呼吸が急に息を吸おうとし、変な声が出た。

 気づけば自分は墓石に囲まれ仰向けに倒れていた。

 その奥には白いドレスに身を包んだ少女が見える。


「ハァ・・・ハァ・・・一体何が・・・」


 自分が身を起こすと、階段を昇って来た黒いドレスの少女が見えた。

 ・・・礼拝堂に戻った?


「くっそ、なんなんだ一体」


 混乱の最中、近づいてきた白いドレスの少女・・・アリシア様が告げる。


「やはり必要でしたね?」

「何がですか?」


 イラつきながら言うと、アリシア様は黙ってクーデルカ様が昇って来た階段を指さす。

 そこには複数のスケルトンの姿が見えた。


「なっ!」


 慌ててメイスを構えようとするも周囲には見当たらなく、それどころかヘッドギアや背負い袋も無くなっていた。


「大丈夫ですよ」

「は?へ?」


 スケルトン達はそれぞれ手に、こちらの武器や荷物を持っていた。

 ・・・破損していてもう武器とは言えないかもしれないが。

 中には砕けた墓石を運んでいるスケルトンまでいる。

 墓石を持ったスケルトンは礼拝堂の隅に墓石を置き、こちらの荷物を持ったスケルトン達は警戒する自分の近くまで来たが足元に荷物を置くとそれぞれ階段へと戻っていった。


「・・・やっぱりグルかよ」

「グルと言われても、ゴースト的なものが出ますよとしか言ってませんけどね。まぁ注目点はそこじゃなく、本来なら貴方があの墓石みたいになってましたねという話だったんですが」


 ・・・表情すら変えずに言いやがったな。こいつ。


「アーちゃん、ちょっと」

「?」


 クーデルカ様に手招きされアリシア様が近くによると、口元を手で隠しヒソヒソ話を始める。

 お互いに渋い顔になると、肩を落とし溜息を吐いて戻って来た。


「さて、ヴァイトさん。まだ試験を続けますか?」

「・・・どの道、武器も防具も無くなったから今日は止めておきます」

「まぁ、今日一日休んでもまだ6日間ありますからね。ゆっくり休んでください」


 笑顔で言われたが、まるで表情がないかのように思えた。


「・・・質問していいですか?」

「試験内容に関わらない内容でしたらどうぞ?」

「この試験は自分が死なないようにはなってるんですか?今みたいな」

「・・・うーん、まぁ教えてもいいのかな?クーちゃん、教えていい?」

「簡単な事だけね」

「はーい」


 後ろでテーブルセットを準備していたクーデルカは振り向きもせずに答えた。


「と、言う事で簡単に説明しますが他言は無用です」

「・・・はぁ」


 思わず気のない返事をしてしまった。


「まぁ、最低限死なないようにはします。方法や手段はお教えできませんが、まぁクーちゃんが監視してる限りヴァイトさんに何かあったらここの墓石が・・・そうですね・・・身代わりになると思ってください」

「・・・身代わり・・・」


 それで墓石が必要って事か

 周囲に無数に運び込まれた墓石が自分の命の数だな・・・


「それと・・・」

「?」

「これはサービスでお教えしますが、こちらも色々とヒントを出してるんですよ?」

「ヒント?」

「採用に至るまでのヒントですかね。館長が用意したモノですが」

「なぜ、急にそこまで教えてくれるんですか?」

「・・・まさかスケルトン1体倒せないとは思わなかったので・・・」


 それはすいませんでしたねっ?!


 心の中で叫んでおいた。


「それと私達が、一から手ほどきするのも億劫なので・・・」


 それが本音だな・・・

 ・・・ん?


 ついでだから疑問に思った事を聞いてみる。


「先程から説明を聞いてると、採用試験の割には自分を採用する事が決まっている様に聞こえるのですが?」

「・・・」


 あ、笑顔のまま凍りついた。


「ま、まぁ・・・それもヒントですよー?」


 ・・・嘘くせぇ

 

「おい、ヴァイト」

「はい?」


 椅子に座り、テーブルに肘をついたクーデルカ様がつまらなそうに言う。


「別に私達は、お前が採用されようが落とされようがどっちでもいいんだ。直属の部下になる訳でもないしな。問題は館長が、お前に目を付けてお前を迎え入れようとしてる事だ」

「何が問題なんですか?」

「お前は今までに何かしてきたか?何か目立つ功績があるのか?お前自身、毎月の報酬に見合う何かが自分にあると思うか?」

「・・・・・・」


 言われて、思う。


 目立つような功績などない自分が『目を付けられている』・・・?


「私達は知らないからな?聞いても無駄だぞ」

「さっさと終わらないかな位にしか思ってないですからねぇ」


 ぶっちゃけたな、こいつら

 それで自分のやられっぷりを見て急にヒントなんて言い出したのか・・・


「館長は、色々気まぐれで行動する事が・・・まぁ・・・結構・・・あるが・・・」


 言いながら声のトーン落としていくなよ・・・

 どんだけ苦労してんだ


「・・・気軽に仲間に引き入れるような事はしない。特にお前みたいな自分の身も守れないようなのはな」


 ・・・あのアンデット位は何とかしろと?


「という事でさっさと諦めるか、採用されるかはっきりしろ」


 前者はともかく、後者の難易度おかしくないですかねぇ・・・?


「なので追加でヒントをあげましょう」

「?」

「あのアンデットは、私達が用意したものではありません。手伝っては貰ってますけどね」

「それと、自分の価値観を見直した方がいいな」

「・・・やる気のないアドバイスをありがとうございます」


 皮肉位は言っても許されるだろう。


「どの道、今日は帰ります」


 装備も準備し直さないとな・・・


「帰るならゴミ持って帰れよ」

「予め言いますが、礼拝堂ごと燃やしたり、爆破するような方法はダメですからね?」


 クーデルカ様は床に置かれた自分の荷物を指さしながら、アリシア様は自分を見ながらクギを差してきた。

 自分は壊れたり、ボロボロになった荷物を持ち、礼拝堂を後にした。

 今日中に親方に変わりの装備を見繕ってもらおう

 それにしても・・・


「自分の何を見込まれたんだろうな?」


 一人呟いた。

ヴァイト 残金:金貨4939枚 銀貨48枚

     冒険者ランクE


 スキル 浄化系魔法

     一般的な武具取り扱い


装備品

     頭:ミスリルのヘッドギア 破損   ☆0

     体:中古のレザーアーマー改 傷物  ☆1

     右手:ミスリルメイス  破損   ☆0

     左手:ミスリルランタンシールド  破損 ☆0

     足:ミスリルグリーブ  傷物   ☆1


雑貨  背負い袋 傷物

    携帯食料等 

    水+携帯用皮袋

    種火用火打石セット

    止血用麻布

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