人形愛
dollmasterはdollを操作しているとき本体の身動きができない。
そのことからdollmasterについたあだ名が、人形。
dollを操作するときの視点は本体かdollか選択できるが、doll側にして自分を見てみれば誰もが人形というあだ名に納得するだろう。仮想空間とはいえ呼吸も瞬きもせずに姿勢補正で立っているだけの姿は、人形と呼ぶにふさわしい。
dollの姿形はdollmasterと同じアバター素体であり、これはdollを他者に似せて悪用することを防ぐためだと言われているが、私には関係のないことだった。
ログイン後、なにもない自室でdollを私に触れさせる。他者との接触には双方の合意が必要だが、自分自身のdollには当然いらない。自分の物なのだから。一人では出来ないほど強く私は私を抱き締め、何度も視点を私と行き交わしあい、すぐにどちらがどちらなのか分からなくなって、ただ、私と手を繋ぎ、私とキスをし、私と見つめ合い、私を愛する。
この時間がなによりも幸せだ。