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ギフトラベル 改札通ったら異世界だった  作者: 三千百六
新屋格編
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⑥インプとラベル

レーベルを【侍】にし、″《役トラベル》″をセットした。

そこから俺は、アクティブG内を更に西へ向かって進む。


この辺りには、スポーツクラブや専門学校と、

何気にスーパー銭湯もある。精神的な疲れを癒すためにも風呂に入ってみたいが、何が起こるか分からないので今は止めておこう。


1階へのエスカレーターがある2階出入り口に差し掛かり、外のデッキへ出る。


デッキは、駅前に中央分離帯があり横断歩道の無い車道を、南北に歩行者が渡る為に橋掛けられている。


北に向かってUの字に設計されていて、トロールが出現した東側は、柳ケ瀬商店街への連絡路となっている。


俺が今居る西側は、問屋町へと繋がっており、そのトロールの出たデッキと反対側の連絡路だ。

問屋街と柳ケ瀬商店街は国道を境に分離されている。


あの醜悪なトロール達はこちらの西側には出現していない。


刀に手を掛けながら慎重にデッキを進む。

デッキの足場は木造で、足元の木板がギシギシと鳴る。

今、俺以外に音をたてる者は居ない。その為、やけに木板の軋む音が響く。


キキッ


待ち人が来た。所謂エンカウントだ。

鳴き声と共にモンスターが現れた。

警戒をし、望んでは居たものの、やはり突然の出現には驚く。

こいつが最初の獲物か。


羽があり、サイズは人の赤子ほど。

容姿は小さな鬼の様であり、宙に浮いている。

恐らくインプだ。

トロールよりかは弱そうだが、デバフ系が恐いところ。

ここは一気に片付けよう。


目標は、無理なく【侍】レーベルの力を検証すること。

危機を感じたら撤退か、″《トラブルトラベル》″が発見できていれば、剥がす。


インプは一匹。いける。


俺は精神を研ぎ澄ませる。

大丈夫。RPGだと思えば良い。敵は殺す。これはシステムだ。

より集中力を高めていく。これもレーベルの恩恵なのだろう。


刀を鞘に納めたまま、宙を漂うインプに近づく。

多少木板の軋む音を立ててしまているが、インプが攻撃を仕掛けてくる気配はない。


そして俺は、ラベルを発動させた。


″《役トラベル》″


刹那に居合い斬りを放つ。

インプは真っ二つに割かれ、灰色の煙となって霧散した。

あっけなかった。

が、それに反し。俺は大量の汗をかいていた。

反撃される恐怖。生物を殺す忌避感。終わってから、抑え込んでいたそれらの気持ちが溢れてくる。


やはり″《役トラベル》″は、侍としての本領を発揮出来るようだ。

段々と、揺らぐ気持ちが落ち着いてきた。

まだ″《役トラベル》″の効力が残っているのだろう。

この刀も良く切れた。


居合斬りなんて使えて、

まさか、こんなにも戦える様になるとは、流石異世界。


キキッ!

キキッキッキ!


突然、周囲をインプの群れに囲まれた。

束の間の安堵に浸っていた俺は、直ぐに刀を構えなおす。


「トラップ型の次はスイッチ型か」


一匹目を倒すと、大量に出現する仕掛けだったらしい。

異世界らしい仕掛けだ。順調順調......


キッ!


一匹が声を発すると、出現したインプどもが一斉に襲いかかってきた。

″《役トラベル》″の効果が残っている俺は、それらを次々に斬り伏せる。

本当に凄い。足の運び方から、正中線と上半身の捻り方まで、自然に体が動く。

これは学生時代に習った剣道とは全く違う動きだ。


だが、場所が悪い。

この岐阜駅西側のデッキは屋根付きで、その屋根を支えるための円柱が邪魔だ。

″《役トラベル》″を使っていても動き辛い。

その上、インプはいくら斬り伏せても、次々に湧いてくる。

斬っては煙となって霧散し、また出現する。


″《トラブルトラベル》″を剥がすしか方法は無いのか。


インプを斬り伏せながら辺りに視線を配る。

なかなか″《トラブルトラベル》″は見付からないが、俺はあることに気が付いた。

先程インプに囲まれた場所。その辺りからインプどもが湧いて出てきている。


「そこか!」


鋭い爪て襲ってくるインプどもを斬り伏せながら、急いでそこを目指す。

″《役トラベル》″の効力が後どれくらい持つのか分からない。


キキーッ

俺が出現ポイントに近づこうとすると、インプ達の勢いも増した。


デッキの欄干に設けられた手摺に、ラベルはあった。

一匹目のインプに気を取られ見過ごしていたようだ。


けれど、インプの数が多くて″《トラブルトラベル》″を剥がす余裕が無い。

俺は、思い切って″《トラブルトラベル》″の前に現れたインプを欄干諸とも、″《トラブルトラベル》″を切断した。


ガンッ、という音が響き渡り、インプは五月蝿い鳴き声と羽音ごと消え、静寂が岐阜駅デッキの上に戻った。


″《トラブルトラベル》″を今度こそ解決した安心からだろうか。

″《役トラベル》″の効果が切れたからだろうか。


どっと疲れが溢れ、俺は欄干を背にその場に座り込んだ。

呼吸を整えようと深呼吸を繰り返す。


「やっぱ、おもしれえ」

俺は、流石にこれ以上の連戦は厳しいと判断し、このまま少し休んでいくことにした。


刀を鞘に戻し、メニュー画面出してログを確認する。


″《インプトラベル》を解決しました″



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