②others:とラベル
「ふむふむ、なるほど。ヨクワカラン」
箱の中に入っていた説明書を読んで見た。
ラベルがどうのこうの?
恐らく。
要約するに、不思議な魔法のシールがあるよって事を言いたいのだろうけど……
これ、ドッキリを通り越して何か……痛い!
社会的に痛い!
誰かの黒歴史を前にして、私に一体どうしろと。
ホントにカメラとか無いよね?
ノリ?ノリで何とかなるの?
トラブルトラベル?!何、その痛い設定!!?
………
……
…
「う~ん、取り敢えずコレを捲ればいいのかな」
まだ、誰もテッテレー♪と飛び出してくる気配は無い。
取り敢えず″《ガチャトラベル》″というラベルを捲る事にした。
これを捲れば、きっと誰かがやってくるに違いない……
そう、思いたい。
私は捲る素振りを見せながらも、一応周囲を伺ってみた。
やはり、人気は無い。
私は一気に、半ばヤケクソ気味に、えいっと″《ガチャトラベル》″を捲った。
すると、驚くことに手元が!
捲ったラベルが輝きを放ち出した!
輝きが、光が……私の目の前で一頻り大きくなると、光の中から徐々に何かが現れた。
私が呆気に取られている間にやがて輝きは収まり、中から武器が現れた。
「えっ、何?この危ないブーツ……」
それは、黒いブーツだった。
まず、爪先からチェーンが伸び、その先に三日月状の刃が付いていて、同じ様に踵にもチェーンと刃が付いている。
更に足裏、土踏まずの真ん中からも同じくチェーンと先に刃が……これで果たして、まともに歩けるのだろうか。新しい。
目の前で宙に浮いているブーツに驚いていたら、ブーツから出ていたチェーンが次々に折れ曲がってブーツへ押さえ付けられ、ジッパーとなって収納されたかと思うと、ドサッと音を立てて私の足もとに落ちた。
こういうのギミックっていうんだっけ?
よくある手品の仕掛け的な?
いや、そもそも手品なのだろうか。
こんなの、漫画や映画の魔法でしか知らない。
さっき辺りを見たときはトラックの影を探しただけだった。
もう一度、周囲を見渡すと目を背けていた違和感に気付いた。
コンビニやファミレス、焼肉屋、アパート、マンション。
街灯以外の電気が消えている。
私がそれに気付いたからだろうか。
街灯の明かりが一斉に一点の道路標識に集まる。
赤い止まれの標識の横線が、数字となってカウントダウンを始めた。
″5″
″4″
″3″
″2″
″1″
全ての街灯が一瞬消え辺りが真っ暗になると、次に街灯の明かりは地面の止まれの道路標示を照らした。
道路標示の文字が動き変わっていく。
″チュートリアル開始″
″装備して下さい″
「装備?ブーツのこと?!」
今起きている現象にパニックになりつつも、私は道路標示の指示に従って履いていたスニーカーをブーツに履き替えた。
″《ゴブリントラベル》発動″
突如、道路標示の文字の上に光が集まる。
「ちょ、ちょっと……」
本当に、現実では考えられないんだけど。
目の前にファンタジー物で良くみる緑色の魔物、ゴブリンが現れた。
私の頭は既にパンク状態。
多分これ、ドッキリじゃない……
何か、不思議な世界に巻き込まれちゃった系のやつだ。
″ギフトボックスより台紙を取り出し使用して下さい″
ゴブリンの足もとで、また文字が変わる。
ゴブリンは動かない。
チュートリアルだからってことだよね。
私は箱から台紙を取り出す。
使い方は、ドッキリに嵌まってるふりをするために読んでた説明書の内容を覚えているから大丈夫。
台紙をブーツに近付けると淡い光となって吸い込まれた。
もう、コレくらいでは驚かない。
すると、目の前に青色の画面が浮かび上がってきた。
「わっ!?」
驚いた……
″死亡転移を確認。生存率向上チュートリアルを開始″
"チュートリアル開始特典。DPを110pt獲得しました"
″レーベルを移籍して下さい″
ゲームでいう、メニュー画面のログだろうか。
道路標示の次はこの画面で指示が来るらしい。
ってか私、現実世界で死んで今の不思議世界にいるってこと?
駄目だ。考えが追い付かない。
メニュー画面を操作しレーベルの移籍画面を出す。
・レーベル移籍
【鎖技師】100pt
一つしかないので、【鎖技師】を選択する。
″レーベル【鎖技師】を選択しました″
″移籍しますか?″
″はい″″いいえ″
はい、に触れる。
″レーベル【鎖技師】に移籍しました″
″【鎖技師】の所作をインストールしました″
″各ステータス値が上昇しました″
″【鎖技師】レーベルのラベルが作成可能になりました″
これで、無職からレーベルの移籍が完了。
″《役トラベル》を取得し、セットして下さい″
私は指示に従って《役トラベル》を取得し、台紙画面にセットする。
・ラベルセット
【役トラベル】
・レーベル
【鎖技師】
・DP
【0pt】
・GP
【0pt】
・特典
【台紙Lv1】【貼付Lv1】
・ラベル作成
【鎖技師Lv1】
私が一連の操作を終えると、いよいよ指示が出た。
″ゴブリントラベル開始です″
ゴブリンが動き始めたんだけど、あらためて女子高生に何をしろと。
″《役トラベル》を使用して下さい″
あっ、はい。
私は《役トラベル》を使用した。
″《役トラベル》″
………
……
…
決着は直ぐについた。
殺傷に対する忌避とか、あまり感じられなかった。
《役トラベル》を使った瞬間、思い切り右足を蹴りあげると、ブーツのジッパーになっていたチェーンと先の刃が再び現れゴブリンに巻き付いて、その体を地面に倒れさせた。
右足を着地させ、左足を水平に蹴り薙ぐ。
左足のブーツからチェーンがゴブリンの首へ伸びていき、先の刃がその首を切断した。
"チュートリアルクリアボーナス。DPを100pt獲得しました"
"チュートリアルクリアボーナス。GPを100pt獲得しました"
″チュートリアル終了″
″では、良い旅を″




