⑤レーベルとラベル
火災は精神的にもダメージがあったが、トラウマという程では無い。
これも異世界だからか、楽しんでいる自分がいる。
元に戻ったカフェの椅子に再び座った。
流石に連続でトラブルトラベルも発生しないだろう。
いや、発生しないで欲しい。
そんな心配よりも今は楽しみがある。
″《火災トラベル》″を解決し、獲得したポイントの配分だ。
初回クリアボーナスとかも手に入ったし、良い能力が欲しいところ。
わくわくしながらメニュー画面を呼び出す。
呼び出すというか、念じたら出てくる。
今配分できるのは"DP110pt"
まず何に振り分けるべきか。
スキルっぽい特典を確認してみた。
【台紙Lv1】ラベルを1枚ずつ使用することが出来る。
【貼付Lv1】貼付しておけるラベル枚数1。
恐らく、台紙のレベルは分からないが、貼付のレベルを上げれば、事前に貼付しておけるラベル枚数が増えるのだろう。
優先順位としては、貼付が先か。
ただ、ラベルを1枚も持っていないのでどうしようか迷う。
と、思っていたら、どうやら特典はこの場ではレベル上げ出来ないらしい。
特典もギフトカタログじゃないとレベルを上げれないのだろう。
説明書に載ってい事が割りと多い。
となると気になるのはレーベル。
今、俺のレーベルは【庶民】。
異世界宜しく職業的なものだろう。
レーベルの移籍というのは、とどのつまり転職。
異世界もののお約束、テンプレとしては、ここでレーベル【魔王】【龍人】とか用意してあるのだが。
・レーベル移籍
【戦士】100pt
【剣士】100pt
【騎士】100pt
【侍】100pt
【忍者】100pt
【格闘家】100pt
【武芸者】100pt
【盗賊】100pt
【狩人】100pt
そんなことは、無かった。
「魔法使い、僧侶も無しか。ポイントが足りないのか?」
全て物理職。この中で選ぶとしたら、流れから言って刀を持っているので【侍】が相性良さそうだ。
というのも、異世界だったら職業専門の技があるでしょ。
居合い斬りとか、つばめ返しとかさ。
刀を持っていると付加ステータスがあったりだとか。
俺は一番恩恵を受けられるであろう【侍】を選択した。
″レーベル【侍】を選択しました″
″移籍しますか?″
″はい″″いいえ″
はい、に触れる。
″レーベル【侍】に移籍しました″
″【侍】の所作をインストールしました″
″各ステータス値が上昇しました″
″【侍】レーベルのラベルが作成可能になりました″
いよっしゃあああ!
知りたかった単語が現れた!
ステータスだ!
少々取り乱した。
異世界に無くてはならないもの。
それはステータス。
確認方法は分からないが存在が確認できただけでも良しとしよう。
【侍】の所作は、様々な身のこなし方、刀の振り方が頭に入ってきた。
ただ、頭に入ってきた事を体現出来るようになるには、訓練が必要そうだ。
実際、指南してくれる先生が居なければ、実戦で役には立たないだろう。
あとは、【侍】レーベルのラベルか。
再度、メニュー画面を確認してみる。
・ラベルセット
【】
・レーベル
【侍】
・DP
【0pt】
・GP
【0pt】
・特典
【台紙Lv1】【貼付Lv1】
・ラベル作成
【侍Lv1】
ラベル作成を選択する。
【侍レーベル】
″現在、以下のラベルが作成可能です″
・《役トラベル》 DP10pt
・《流トラベル》 DP10pt
2つか。
せっかくなので、ラベルを使ってみたい。
それぞれの項目に触れてみる。
《役トラベル》:3分間、役をこなす事が出来る。
《流トラベル》:少しの間、魔力を伴う攻撃を受け流す事が出来る。
役トラベルは、3分間、侍としての本領を発揮出来るということだろうか。
流トラベルは、防御の手段として持っていたいが、受け流しが出来るってのは、オートじゃなくて俺の技術も伴うということか。
それぞれにレベルも有るようだし。
よし、《役トラベル》に決めた。
″《役トラベル》を作成しますか″
″はい″″いいえ″
俺は″はい″に触れた。
目の前に光が集まり、ラベルとなって落ちる。
それを手に取り確認する。
虎の顔が彫られたベルの絵が背景に、《役トラベル》と書かれている。
そのまま刀に近づけてみる。
反応がない。
メニューのラベルセットに触れると画面が変わった。
【】
ここに貼れと言うことだろうか。
《役トラベル》を捲りとり、ラベルセットの画面に貼付する。
貼付したラベルが台紙の画面に吸い込まれた。
【役トラベル】
貼付に成功した。
準備は整った。
万全では無いが、進むしかない。
元いた世界は、誰しもが平凡を脱することなんて出来ない世界だった。
食料廃棄は何千万トンが当たり前。
自殺者多数。
格差は、誰か一人が乗り越えた所で残りの人々は?
少子化によって教師が余るのに、イジメがあっても個別指導に切り替えない。
宗教や伝統と称して金を搾取される人々。
救いの無い世界。
そんな世界よりも、この異世界は遥かに魅力的だ。
簡単に死にたくはない。
ゲームオーバーになるのはもっと楽しんでからだ。
さぁ、″《トラブルトラベル》″を探しに行こうか。




