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ギフトラベル 改札通ったら異世界だった  作者: 三千百六
ギフトカーニバル編
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⑩ボーナスとラベル

郡上の各地に《門トラベル》によって、門が出現していた。

門が何処へ繋がっているのか、内側の空間が歪んでいる為、向こうの景色は見えない。


ただ、トラベラー達はメニュー画面のログに映る、岐阜城攻略の指令から岐阜市へ繋がっているのだろうと予想がついていた。


しかし、トラベラー達もギフトカーニバルによって転移してきたばかりの人々もそのあちこちに出現している門を潜れないでいる。


トラベラー達にとっては更なる試練が、未だ非力な人々にとっては更なる恐怖が待ち受けているのかもしれない。


皆が、今回の功労者へ意見を求めた。


新屋は、《エクストララベル[影縁の糸]》の能力を活かし、人々を一ヶ所へ誘導する。


「ここにいる皆、落ち着いて聞いて欲しい」

転移してきたばかりの元一般人達に新屋は声を向ける。

新屋の側には海月、ホウライ、伊藤、綾野が控えていた。


「俺達はこの門を潜って次のステージへ行く。だから皆にも付いてきて欲しい。ここに残っても魔物や災害に見舞われるだけだ」


ラベルライダーの脅威も、ジョーカーによる襲撃も、ただの《トラブルトラベル》の発生は十分に有り得る事だが、お決まりの文句が元一般人達から上がる。


「終わったんじゃないのか!?」

「安全な場所に連れていってよ!!」

「私達はあなた達に巻き込まれたんじゃないの!!?」


それらは、新屋と海月、ホウライにとっては、何度目の文句だっただろうか。


彼らは慣れていた。

そしていつも、ざわめく大衆は勘違いをしている。

彼らが人助けをするのは、彼らが異世界フェチ故にその根本が異世界に酔っているからだ。


とどのつまり自己満足のポイント稼ぎ。


より多くの人を助ける為、新屋らは、敢えて文句をヤジを黙って聞く。

理不尽にも異世界に転移してしまった彼らのガス抜きを行い、冷静さを取り戻してくれるのを待つ。


格好の良い演説やリーダーシップで皆を引っ張るのは、救世主ではなく、英雄や勇者のすることであった。


やがて、集団が騒ぎたてることを止め、再び静寂を以て新屋らに救いを求めると、新屋は説明を再開する。


「この世界は、複数の層から成り立っている。多次元の様なものと思ってくれれば良い。一つの層に留まっていられる時間は有限で、いずれこの層も崩壊する。正しくは、闇に飲み込まれてしまう」


人々の顔に、結局助からないのかと絶望が浮かぶ。

新屋は言葉を続ける。


「今から出来る限り、皆に力を分ける。この、《ギフトラベル》を箱に貼れば、その箱からこの世界で生き抜く為の力が手に入る。層が変わる時、次の層でも皆に会えるかは分からない。恐らく、それぞれ違う層へ別れてしまうだろう。それに備え、全員分は無いが《ギフトラベル》を配るから使ってくれ」


新屋は、海月とホウライ、伊藤と綾野に、異世界の空き家から持ち運ばせた様々な箱を大衆の前に用意させた。


そこからは、大衆が冷静さを取り戻した事もあり。

手短に今起こっている事象、ギフトカーニバルについてや、要注意な敵であるラベルライダーやジョーカー。どんな《トラブルトラベル》が確認されているのかを説明をした。


そして、厳しい現実を突き付ける。

「俺達が出来るのはここまでだ。もう時間も無い。俺達は門を潜り、岐阜城へ行く。ここで待つのも一つの賭けだが、後を追って付いて来てくれた方が、行き先はバラバラでも次の層へ一緒に行ける可能性があると思う。そこは各自で判断してくれ」


大衆は再びざわめく。

ここに留まっていても十分に危険。新屋達に付いて行っても尚危険。


新屋達の根本、それは人助けをしたい。活躍したい、だ。

だが、毎度毎度助けてばかりでは、埒が明かない。


この世界で生きて行ける力を身に付けさせる。

彼ら彼女らにも、未だ予想の範疇を出ない、この謎の異世界を盛り上げてもらう。


皆が、《ギフトラベル》を使用し、ギフトボックスから説明書を取り出して読んだり、《ガチャトラベル》を使ったりしている中。


新屋の話を聞いても、自分たちにそんな魔物と戦う事なんて出来る訳が無いと嘆いたり、子供をほかっておくのか、誰か残ったら良いのでは等、的外れな意見が出た。


「他にも、力も無いまま困っている人がいる。だから俺達は急ぐ」

新屋は、そんな時に効く言葉を言い放った。


確かに、戦いの手本と成る者を残すのも手だが、今は何よりギフトカーニバルの後半戦であろう岐阜城攻略を優先しなければならない。

いつ闇が溢れてもおかしく無いからだ。

それに次の層へ行けば嫌でも一人で戦うしか無い状況に陥る可能性もある。

新屋ら主力を除いても、他にもトラベラーはいる。

ラベルライダーには到底敵わないが、他のトラベラー達がどういう行動に出るのかは新屋らには関係の無い事であったし、その中から誰か残るというのであれば、ビギナーにとっては、多少の手本に成るだろう。


新屋は、この緊急下ではこれがベストだと判断していた。

頃合いを見て、新屋は《門トラベル》によって出現した門へ近付く。

「海月、ホウライ、伊藤、綾野。行くぞ」


一言声を掛け、門を潜る。


………

……


何もない一面真っ白い空間。


………

……


新屋は一人、その空間に立つ。


「俺、一人か」


海月、ホウライ、伊藤、綾野の姿は無い。

皆も同じ空間に出くわしているのか。

または先に岐阜城へ到達したのか、新屋には知る術が無かった。


「まさにテンプレ空間だな。神でも出てくるのか」


しばらく構えていると、床に影が挿し込み、新屋の足下へとそれは集う。


その影は床から飛び出し新屋の目の前で薄黒い画面を形成した。



″《カーニバルトラベル[徹夜]》撃破祝″

″記念品贈答″


次に、画面が消え、新屋の前に木箱が出現した。

古めかしい札が貼ってある。


《贈答と札》


「予想が一つ当たったって事だな」

新屋はそう言い、蓋を開ける。


木箱こ中には書物が納められていた。

書物には、《保存と札》と書かれた札が貼ってある。


その中の一冊を、新屋は手に取る。

タイトルは、

「後世の者へ、か」


新屋は笑った。

「とんだボーナス特典だな。会社勤めの時はボーナスなんて夢物語と思っていたのに……良いものが手に入った」


何故、このような書物が用意されたのか。

謎は残るが、やはり現代だけでは無かったという発見は、新屋にとって胸湧く喜びであった。



私にとっては、皆様にご閲覧頂く事こそがボーナスです!(社畜感)

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