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ギフトラベル 改札通ったら異世界だった  作者: 三千百六
新屋格編
4/53

④カフェとラベル

岐阜駅隣接のデッキにトロールが出現し、

ひとまず改札前を離れた俺は、岐阜駅西側、アクティブGという商用施設エリアを探索している。


このエリアには岐阜の郷土土産を扱っている店や、レストラン、居酒屋、ワインバーが揃っている。

小さなイベントスペースもあるが、人影は勿論無い。


駅の中は、何故か電気系統が活きている。

連絡路の自動ドアも問題なく反応した。


流石、異世界だ。


恐らく、″《制御トラベル》″とか、″《動力トラベル》″が働いているのだとあたりをつける。


この分だと、トイレの水も心配無いだろう。

トイレ中に″《トラブルトラベル》″が発生するのは勘弁してほしい。


もし、電気は駅のエンジン等、発電機を使っているのだとしたら、

トイレの水回りは管理が別かもしれない。

一抹の不安が残る。


先程の刀は携帯しているが、

モンスター相手に刀できちんと応戦できるとは思わない。


トロールの油ギッシュな毛むくじゃら、

素人の太刀筋では絶対に刃が通らない。


実際に斬ってみれば、もしかしたら不思議パワーとか、

裏ステータスとかで、攻撃力や切れ味が設定されていて通用するのかもしれないが、試す気にはなれないな。


チキンでサーセン。


抜刀はしない。

攻撃力や切れ味が付加されているかもしれない。

けど、現段階では鞘に入れたまま鈍器として使うのがベストだろう。


警戒しながら探索を行っているうちに疲れが溜まり、

ちょうど近くにあったカフェの椅子に腰掛ける。


再度、今後のこの異世界攻略について考えようとした時、トラブルは起こった。


椅子に腰かけ、刀を持ったまま腕をだらんと下げていると、

一瞬で、カフェの中が炎に囲まれた。


「え、はっ、トラップか?!」


あまりにも突飛な火災。

確実に″《トラブルトラベル》″だ。


予定ではモンスターに気付かれること無く、

″《トラブルトラベル》″を剥がしてポイントを稼ごうと思っていたのだが、こんなのもあるのか。


プラスチック製の椅子が、熱でどんどん歪んでいく。

俺はハンカチを口に当て、その場を離れようとした。

しかし、お約束の現象が待っていた。


「ちっ、見えない壁かよ!」


見えない壁によってカフェからの脱出が出来なくなっていたのだった。


轟轟と火の手は強まる。

火の粉の掛かったフリーペーパーが炎を纏って飛ぶ。


熱い、めちゃ熱い。

しかし、この現実離れした状況が、異世界が、逆に混乱することを忘れさせてくれる。

ケガをしても、どうにかなると錯覚させてくれる。


見えない壁の中で酸素は持つのか考える、スピード勝負だ。

意を決して走りだし、カフェのカウンターを飛び越えて調理スペースへと入り込む。


その際に、カウンターに並べられていたティーカップを幾つも落としてしまったがそれどころではない。

火の元となりそうな所にトラブルトラベルが無いか探すが、見つからない。


辺りが更に、赤く染まっていく。


「そうかっ、配電盤はどうだ?!」


他に火の元となりそうな所で配電盤を直感でひらめき、

調理場の端にある配電盤をどうにかこじ開けようとした。


「開けっ、開けよっ!」


中々、フタは開かない。

俺は持っていた刀を抜刀し、

刃の先をフタの間に差し込んで、テコの原理で開けようと思い切り力を込めた。


バンッっと勢いよくフタが開いた。

溜まっていた熱気と黒ずんだ燃えかすが噴出する。

しかし、それには構わず中を確認する。


ラベルは?......


「あった!」

急いでそこに貼ってあったラベルを剥がす。

……


カフェは、燃上がる前の姿に戻った。


「なんて、不思議パワーなんだ」

火傷も治ったが、体力までは回復しなかった、

疲労は尚、溜まるばかりだ。


「刀、役に立ったな」

手元の刀を見た。


そして逆の手に持っている、先ほど剥がした″《トラブルトラベル》″を確認する。

これでポイントが手に入る。

″《トラブルトラベル》″は、5㎝四方のラベルで、背景に虎柄の牛の顔が彫られた鐘の絵が描かれていた。


トラブルねぇ......

トラブルトラベルには″《火災トラベル》″と書かれている。


"《火災トラベル》を解決しました"

"DPを10pt獲得しました"

"GPを10pt獲得しました"

"初回クリアボーナス。DPを100pt獲得しました"

"初回クリアボーナス。GPを5pt獲得しました"


このメッセージ。順調に異世界だ。

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