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ギフトラベル 改札通ったら異世界だった  作者: 三千百六
ギフトカーニバル編
39/53

⑨ギマンとラベル

「待たせたな」


仲間のピンチに颯爽と駆けつけた新屋格。


《エクストララベル[影縁の糸]》、

それは新屋の脳裏にトラベラーの位置を把握するレーダーを備え付け、影のような縁の糸を辿り、他のトラベラーが居る所へ瞬時に移動出来る能力であった。


新屋が現れた事によって海月、ホウライ達の形勢は逆転。

ギフトカーニバルによって転移してきたばかりのトラベラー達は、

救世主(ヒーロー)の登場に歓声を上げた。


「また遅れて来やがって」

海月は嬉しさを隠し、皮肉を込めてそう言った。


「ニイヤン、何があったっすか?」

ホウライは新屋が何故、気を失い無傷で倒れていたのかを訊ねた。


「何が起きたのかは、俺にも分からないんだ。郡上八幡城を目指していたらラベルライダーが現れた。そのラベルライダーの第三形態と相討ちになった所までは覚えているんだがそこから先は……」


新屋は、不可解な事態が起きたことを申し訳無さそうに答える。


「気付いたらこの。奴の。ラベルライダーに似た能力を手に入れていた。頭の中にトラベラーの位置がレーダーの様に映り、そこへ瞬時に移動する能力を」


新屋は、手に入れた能力をラベルライダーの特性に似ていると感じた。


「また強くなっただけっす。ニイヤンは、ニイヤンっすよ」

「一々気にしてんじゃねえ!それより、次こそこのギフトカーニバルを解決出来るんだな」


「ああ、次は必ず解決する」


海月もホウライも、新屋が何を心配しているのか察しが付いていたが、それは杞憂だと励ます。


海月は、自身の《武器トラベル》である両刃斧を新屋に向けた。

「お前が変な事になったら、俺達が助けてやる。順調に、な。だから行ってこい!じゃなきゃ俺が見せ場を奪っちまうぞ!」


「そうだな。ここは、俺の見せ場だ。もうしばらく、皆を頼む!」


「了解っす!」

「おうよ!」


新屋は台紙にラベルを貼り付け、一拍置いて刀を構える。

変身ポーズ。それはヒーローのルーティーン。

立ち向かう意思の現れ。


「……添装」


″《役トラベル[影之救世主(シャドウオブヒーロー)]》″

″《武具トラベル[影籠手]》″

″《添装トラベル[武具/武装]》″

″《面トラベル[陰の顔]》″

″《終トラベル[不正影時(チートエイジ)]》″


再び、世界から色が失われ、

新屋以外の時が止まる。


次にまた[不正影時(チートエイジ)]を止められようが、新屋は新たに得た能力によって、他のトラベラーの場所へ回避する事が出来る。

新屋は突き進んだ。


そして、郡上八幡城を目指し、一応の警戒をしていたものの、新屋は[不正影時(チートエイジ)]を止められること無く辿り着いた。


新屋は思う。

自分は、確かにラベルライダーと相討ちになった。

やはり、通りすがりの誰かに助けられるような時間も無かったはずだと。


城門を前に立ち止まり、少しの間思慮する。

「この地に宿る神か何かが、俺を助けてくれたのかもな。待っててくれ。直ぐに郡上を解放する」


新屋は、色褪せ時の止まった世界で郡上八幡城へと足を踏み入れた。


………

……


それから間もなく、新屋によって郡上の地はギフトカーニバルから解放された。


まるで、徹夜で躍り狂う魔の宴の終わり。

蔓延る魔物達はその姿を消す。


街中に、日本の、水の都と呼ばれるに相応しい景観が戻る。

それにより、地獄の様な時間の終わりを知って歓喜に湧く人々。

一緒に転移してきた人を失い、失意に暮れる人々。


何故、家族は、友人は死に。何故、自分はこんなにも苦しまなければならないのか。

異世界フェチでない人々にとって、この世界は余りにも無情であった。


元の日本に於いて、普段から理不尽に、社会に疑問を持って異世界へ憧れを抱いてこなかった人間は、只々、蹂躙された。


元の世界(しゃかい)に溶け込めば溶け込んで居る程、そういったもの達に異世界は馴染めないものだった。


………

……


奇しくも、新屋が郡上八幡城にて《トラブルトラベル》を解決すると同時に、他の3つのギフトカーニバルも解決されていた。


英雄(アザス)や、勇者(かむろ)が活躍したのだろう。


各地で喜びが止まない。

生き残った喜び。

悲しみの前に、まずは喜ぼう。誰かがそう囁けば、そんな甘い言葉に人間はホイホイ流されるものだ。


悦悦悦悦悦

そんな憂いを隠す欺瞞を、この世界は糧にしているのだろうか。


争いの無い、平和な世の中を望む現代人を一喝するかのように。


世界は


吠えた!


その怨嗟が溢れ出す。

ふざけるなと。

何を平和な世を生きているのだと、何故、世の中が続いているのだと。

世界を呪い、世の終焉を望む怨み。

後世の幸せじゃない。今!幸せになりたかったのだという眼前の怨み。


それらの権化なのだろうか。

なんとも妖しい、天を貫き空間を歪める光柱が岐阜市の方角に現れた。


″ギフトカーニバルの解決を確認″


″《鍵トラベル[七曲]》解錠″

″《鍵トラベル[百]》解錠″

″《鍵トラベル[瞑想]》解錠″

″《鍵トラベル[背]》解錠″


″全てのコースの解放を確認″

″岐阜城の魔壁が消失しました″


歩行者天国(ウォーカーズヘヴン)を開始″


″《門トラベル》出現。岐阜城ヲ攻略サレタシ″


雷雲が全ての空を覆う。

(カーニバル)はまだ終わらない。


………

……


「ギフトカーニバルも、いよいよ大詰めって事だな」


「ここからが、本番か」


「薄墨の鬼を倒したと思ったら、タイミングが被るなんて流石みんな順調マンね」


「生き残った転移者も、《トラブルトラベル》も、全て破壊してやる……」


「皆、進もう。この世界を生き抜く為に」

「ピピッ!」



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