表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギフトラベル 改札通ったら異世界だった  作者: 三千百六
ギフトカーニバル編
35/53

⑤バグとラベル

度々更新が遅くなりすみません。

それは、各地で起こっていた。

新屋格でも、目の前の光景に愕然としている。


「新屋ぁ!遅せぇよ、早く手貸してくれ!!」

聞き知った声が新屋に届く。

実力が新屋に近い数少ない仲間の一人、海月(くらげ) 義徳(よしのり)だ。


新屋と行動を共にしている仲間、伊藤と綾野もこの惨劇に言葉を失っていたが、伊藤が口を開く。


「新屋さん、これは一体……」


伊藤は尋ねた。

新屋なら、分かると思ったからだ。


ラベルライダーを板取温泉手前、タラガトンネル内で打ち倒し、郡上に辿り着いた一行。

街全体にこだまする阿鼻叫喚。

発狂する人々。

そこには、元の世界と同等数の人々が存在していた。


新屋達が、自分達が元の世界に戻ったのでは無いと分かるのは、″《トラブルトラベル》″によって出現している数多の魔物達がその人々を蹂躙しているからだ。


大人も子供も、トラベラーでさえも力尽き、魔物達の餌食となっている。


「これが、謝肉祭(カーニバル)……」

新屋は、伊藤の問いに答えるでもなく、ただ呟いた。


「二人とも、救出に行くぞ。だけど、無理はしないでくれ」

「ああ、大丈夫だ」

「急いだ方が良いですよね」


広範囲の攻撃は、転移したばかりであろう人々を巻き込み、かといって急がなければ犠牲者は増えるばかり。

新屋は思う。自身の予測と照らし合わせた上で。

元の世界で一体どんな災害が起きたのかと。

災害なのかそれとも……と。


「パパー!!マ……」

渦中へ駆け付けた三人の目の前で、トロールによって子供が殺される。

「た、助ケぇっ!……」

巨大蜘蛛が男性を糸で絡めとり捕食する。


精神系の″《トラブルトラベル》″によって自暴自棄になる人々。

救っても救ってもキリが無い。


まさに地獄絵図であった。


少なくともあと4ヶ所、同じ事態に陥っているのだろう。

新屋だけではどうしようもない絶望。

何時もと違う感覚。


「順調じゃ…無えな……」


新屋は飛び掛かってくる魔物を一刀のもとに斬り伏せる。


「大丈夫か二人とも」

「ああ、なんとかっ、なっ!」

「俺も!大丈夫っ、ですよ!」


伊藤はモンキーレンチを、綾野は警棒でそれぞれ奮闘している。

人々と共に現れるギフトボックスも魔物達に破壊され、回収不能となっていく。


守るべき者が増えていくにつれ、戦えぬ者が増えていくにつれ、新屋達はどんどん戦い辛くなる。


その守られる者達の上空から、ハーピィの群れが襲いかかってきた。

「頭守って屈めぇっ!!」

新屋は叫んだ。


″《武技トラベル[影牙砕(えいがさい)]》″


新屋が刀を振るうと、その太刀筋から無数の黒い牙がハーピィに向かって射出され、次々にハーピィを撃ち落とす。


地面に落ちるハーピィを見て、守られる者達は再び悲鳴を上げる。

撃ち落とされたハーピィは、灰色の煙となって霧散していく。


そこへまた来客が現れた。

今度は魔物では無かった。

先程とは違うが確かに知っている声。


「ニイヤン、来てくれたっすか!」

新屋達の元へホウライがやって来た。


「ホウライ、居たのか!?英雄(アザス)は一緒じゃなさそうだな」

「そうなんす。アザスはここには居ないっす。それよりこの数……」


新屋は、海月が新屋を待っていたように一人でも多く戦力が欲しかった。

自分が全力を出して、将を仕留められる時間が稼げるように。

新屋は今の戦力でそれが出来るか考えた。

そして、ホウライであれば伊藤と綾野も併せ、少々の時間この守らなくてはならない人達を守れるはずだと結論を出す。


「ホウライ、ここは攻めと守りに別れよう。ホウライとこの二人で避難場所を守ってクラゲが救援。俺は本気を出す」


ホウライは二人を見てテレビで見たことのある顔だと一瞬驚くが、直ぐに新屋へと視線を戻し、返事をした。


「了解っす!!」

「ああ!頼んだ!!」


新屋は手早く台紙にラベルをセットする。

「一気に行く!添装っ!!」


″《添装トラベル[武具/武装]》″

″《面トラベル[般若]》″


新屋の全身が一瞬にして影に覆われると、その影の中から全身を黒いプロテクターで覆われたかの様な細身の鎧を身に付け、再び姿を現した。

無機質なフルフェイスが般若の紋様に変わる。


その姿はまるで、細身となったラベルライダーであった。


″《終トラベル[不正(チート)影時(エイジ)]》″

新屋以外の物の動きが超スローになる。

次第に世界は色褪せ、停止する。


因果を断つ。


新屋は、この[不正影時]をそう理解していた。

時を止め、転移にも勝る高速移動。

それは、転移先に予め魔力で自分と同等の質量空間を作る必要が無いということ。

転移事故の起こらない高速移動もさることながらもう一つ。


この、停止した時の中で魔物を一体でも仕留めれば、それが連鎖して元凶たる″《トラブルトラベル》″をも破壊する。


故に因果を断つ。

これは、光でも闇でも無い。影だからこそ行える不具合(バグ)なのでは無いかと新屋は予想している。


しかし当然、不正にはリスクが伴う。

使用後の反動は、動いた分だけ体力を消耗し、動きすぎれば呼吸も儘ならなくなる。


そこに待つのは……死。


新屋は、郡上城を目指していた。

この惨状の元凶、″《カーニバルトラベル[徹夜]》″が貼ってあるとすれば、城が定番(セオリー)だろうと、賭けにでたのだ。


『《キャンセルトラベル》』


世界に、色が戻った。


再度、いや幾度と無く現れるそれを見て、新屋は仮面で隠している表情を引きつらせる。

「くっ、お前もバグみたいなモンだもんな……」


『《セカンドトラベル[ジャッカル]》』


ラベルライダーのフルフェイスが、ジャッカルの頭部を形成する。

まるで雄叫びを上げるかの如く天を仰ぐと、その闇のオーラが全身から

溢れ出す。


『《サードトラベル[スレイヤー]》』


ラベルライダーのバイクが変形し、パーツとなって宙を飛び、

ラベルライダーへと装着されていく。


背面、腕部、脚部それぞれに噴射口(ジェット)のあるパーツが装着され、残ったパーツが長剣のエネルギーブレイドとなってラベルライダーの手に収まる。


『《ファイナルトラベル[チャージ]》』

『《グラビティトラベル[ブレイド]》』

『《ブーストトラベル[ハイパー]》』


「変身を2回、残してたって訳ね……」


新屋は[不正影時]を強制終了させられた事に警戒していた。

明らかにラベルライダーの力だけではない。

近くにジョーカー、またはそれに近い未知の存在がいると予測した。


ラベルライダーの噴射口からは青白い光が噴出され、ホバリングを始めている。

エネルギーブレイドに、重力が集まる。


準備は良いかと言っているのだろうか。


徐々に噴出される光の量と勢いが増す。


「やっぱり、順調とは言えねぇな……」



ラベルライダーのコートは何処へいったのでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ