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ギフトラベル 改札通ったら異世界だった  作者: 三千百六
ギフトカーニバル編
33/53

③キズとラベル

この話は精神的にキツいです。そういったものが苦手な方は、お控え下さい。

雨が降っていた。全てが憎々しいと感じていた。

……


男は横たわって呻きを上げていた。

過積載だろう。辺りのアスファルトに轍が目立つ。


元の世界の仕組みには、矛盾が多々あった。

働けというのに働きづらい。


男は、ヒエラルキーで言えば、上流にいた。

だが、下請け、そのまた下請けと関わっていく内に、職業に貴賤は無いと、戦後100年も経っていない国が豪語する世間に疑問を感じていった。


男は優しい人間だったのだろう。

雨粒が全身を打ち続ける。


大分殺した。


老若男女ほとんどを。

男は殺してきた。


だが、過去500年、いや大量破壊兵器や戦争、それこそ国が出来上がるまでの過程を考えれば、男の殺戮なんて微々たるものだろう。


この世界に転移してくる人間。

この世界に現れる″《トラブルトラベル》″を考えると、男は吐き気がする。


男は、呼吸を整えようとするが、正常になる見込みは無い。

たまに口内に溜まった黒い血を吐く。


風前の灯火だ。


全て間違っている。男はそう思うようになっていた。

男はある時、少年に出会った。


心優しい少年だった。

元の世界には無い温もりを、男は感じていた。


″《トラブルトラベル》″を一緒に解決した。

解決後は、″《ビールトラベル[ヴァイツェン]》″

″《ジューストラベル[オレンジ]》″等で乾杯もした。


男は白エールが好きだった。


男と少年は、他のトラベラーに出会った。

男のレーベルも″《武器トラベル》″も強力だった。

頼り頼られ、持ちつ持たれつ、共に信じ信頼し合えている筈だった。


裏切られた。


そして、漆黒のラベルライダーに少年は殺された。


男は激情に駆られ、 自身のラベルの二段階目を発動させる。

ラベルを、更に捲った。


男の旅は続いた。

一人旅だった。


旅をする内に男は、この世界の成り立ちに予想を立てた。


その予想は、一人の男の出現によって、より確かなものへと変革を成した。


その時も、男は、ボロボロだった。

男は、二度目のラベルライダーとの遭遇を果たしていた。


どうしても歯が立たない。

そんな時だった。


刀を持った男が危機を救ってくれた。

男とは気が合った。

互いに、元の世界に未練は無かった。


その男は語ってくれた。

この世界について。


そこからだった。


男は考えた。そこから更に深く。

深く考えた末に至る答え。それは、


皆殺しだった。


一人は、人を生かす事で人を救い。

一人は、人を殺す事で人を救う。


男は、奴と俺は、光と闇。決して相容れぬ存在と悟り、その男に勝負を挑む。


結果は惨敗だった。

この世界に、きちんとした個人のレベルという概念があるのであれば、男とその男のレベル差は段違いであった。


その男は、光などでは無かった。

光在るところに生まれる影。


男はその男の正体をそう予想した。

奴は、この世界を、何処までも楽しんでいた。

自分の実力を隠し、ピンチを、その状況や展開を楽しんでいた。


男は、生かされた。

恐らく、自分が復讐しに来るのを、楽しみにしているのだろう。

闇よりも、光から生まれる影の方が質が悪いと感じた。


ただ……ただ、虚しかった。

いつしか、いつ死のうがどうでも良くなった。


男は、殺戮を始めた。


その結果が、現状だ。

雨粒が全身を打つ。

男はアスファルトの道路に倒れている。


「たっ、たいへん!大丈夫ですか!?いま手当てを」

……

「GPを沢山使ったんだけど」

″《回復トラベル》″


男の傷が、多少マシになる。


「まだ駄目か。じゃあこれは」

″《治癒トラベル》″


男の傷が先程よりも見た目が良くなった。


「最後にこれっ」

″《洗浄トラベル》″


男の茶色いトレンチコートに着いた血も綺麗に落とされた。

男は、少女を見て、かつての少年を思い出す。

自分を救ってくれた少女に、少年を重ね見た。

日本人らしい、献身的な姿勢。

少女は、苦しみが減ったであろう男を見て、軽く微笑んでいる。


感謝の言葉を期待しているのだろうか。


いや、純粋に、救えた事が嬉しいのだろう。


全く反吐がでる。


男は、異空間にしまっていた″《武器トラベル》″を右手に出現させる。

″《弾トラベル》″


残っていたラベルを発動して弾丸を補充する……


峯島は、この世界から少女を(コロシタ)う。


アスファルトの轍に出来た水溜まりに、峯島以外の血が混じる。

雨は止まない。


峯島は立ち上がる。


「世界ごときが、俺の運命を決めるんじゃねぇ!!」

……

峯島は笑う。

「俺は、好きなように()らせて貰う」

……

「さぁ、祭だっ!!」


峯島、参戦。

やはり、強い。

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