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ギフトラベル 改札通ったら異世界だった  作者: 三千百六
神室迅編
30/53

⑩ソレゾレノとラベル

【彩色の武器使い】


変幻自在の武器″《武器トラベル[彩色]》″

彩りを構築する武具″《武具トラベル[彩色のマトリックス]》″


その本領を余すこと無く発揮するラベル

″《(ツイ)トラベル》[役彩図(エキサイト)]″


βソード、γハンマー、Ζチェーン、Σスピア、双剣、棍、鎌……etc


様々な武器に形態を変化させながら、

神室は峯島を攻める。


時に、彩ボールを足場にして、空中でもう一段ジャンプをして峯島の上を取り、


「ピピッ」

時に、彩ボールに″光″を構築させ、熱線を放つ。

時に、彩ボールを攻撃の際に武器に透過させ、武器に″爆砕色″を付与して峯島を攻撃する。


″《武技トラベル[彩装]》″が峯島の認識を阻害させ、

峯島の禍々しいオーラや、銃弾は、その攻撃のタイミングに合わせて、

″《武技トラベル[断彩]》″を使用し、神室の周囲の彩りを断って防ぐ。


「クックック、殺りづれぇなぁ、神室ちゃん」


峯島もどれだけの異世界転移者を、その手に掛けて来たのだろうか。

″《最凶トラベル》″の効果を巧みに使いこなし、サブマシンガンとナイフ、その他仕込み武器を用いて神室と対等に渡り合う。


峯島は笑う。

「楽しんでるかい、神室ちゃん」


その眼に凶光が宿る。

「さぁ!もっと楽しんでくれ!!!」


″《終トラベル[凶悪]》″


…………


神室は戦いの最中、考えた。

一体なにが、この男をこうも駆り立てるのだろうか。


「これはどうだぁ?!カムロォ!」

″《伝達トラベル》″

″《恐怖トラベル》″


[役彩図(エキサイト)]状態の神室でも気を抜けばたじろぐ様な恐慌が脳裏を迸った。


マナは、この戦いにおいて蚊帳の外であったが、その恐慌に耐えきれず気絶してしまう。


互いに決定打は無かった。


神室に残されている″《エクストララベル[再式]》″


これは、使用すれば峯島を打倒出来るであろうラベル。

同時に、誰か一人なら命を助けられるラベルであった。


神室は決めた。

残ったマナだけでも助ける事を。


峯島の隙を、[再式]を使うタイミングを伺う。


既に無駄な挑発は無く。ただただ凶悪であった。


「ジャマだ」

″《武技トラベル[悪霧]》″


峯島によって、タケルとコウスケの肉体が、悍ましい黒い霧に呑み込まれる。


峯島は、軽く手を振り、神室と倒れているサツキにも霧を向ける。

神室は、[断彩]によって霧を防ぐが、サツキは呑み込まれてしまった。


神室は歯噛みする。


そして……


峯島が大きく動いた。


「そろそろシんでくれよカムロォオオ!!!」


その時、

″《天転トラベル》″

″《錯覚トラベル》″


峯島が、すっ転んだ。


峯島は、見た。空間を破り。この二人の戦闘(セカイ)に邪魔しようと足を踏み入れる。


黒き戦士。ラベルライダーの錯覚を。


「今よ!神室くんっ!」


神室は突然響いた女性の声を聞き、この千載一遇のチャンスに突っ込んだ。


彩色のβソードが転んだ状態の峯島を貫き、峯島の体内で様々な形状の楔となって、平原に張り付けにした。


神室 対 峯島。二人の戦いに決着が着いた。


一瞬、ただの一瞬の不意打ちが明暗を分けた。


「ぐはっ、ガムロ″ォォ……」


峯島は、血を吐き出し神室の名を呼ぶ。

その顔は、自身の死の縁にあってもニヤついている。

仰向けのまま、神室に向かって腕を挙げようとするが、その腕は力無くただ震えるだけだった。


その後、峯島は息絶えた……


神室は、サツキと見知らぬ女性に駆け寄る。

マナも、その見知らぬ女性によって介抱されていた。


サツキは出血が酷く、重傷だった。

「サツキ!大丈夫か」

「神室さん……」

さつきは、力を振り絞って返事をする。


「あなたは」

神室はサツキの容態を確認し、正体不明の女性に声を掛ける。


「私の名前は今藤よ。私が″《複写(コピー)トラベル》″を使ってサツキちゃんを助け出したの。けど、男の子二人は助けられ無かったわ……それにサツキちゃんもこの重傷じゃ……」


今藤は、サツキを助けた状況を手短に話した。


そこで神室は言う。

「ありがとうございます。まだ、サツキを助ける方法はあります」


神室はその方法を説明した。

″《エクストララベル[再式]》″は、簡単に言えば、復活を可能にするラベル。

使用すれば1度だけ、鮮やかな色彩の中から完全復活することが出来る。


神室は峯島に対して、自身の死を偽装し打倒しようとしていた。

その力を、サツキに使う事を神室は考えていた。


しかし、″《エクストララベル》″は具現化しての譲渡が出来ない。

魂に貼付されているとでも言おうか。


そこで、急いで最上階または他の階で、適当な箱を見つけ、神室が所持している″《ギフトラベル》″を使用し、それが可能となる手段を探す必要があった。


「それなら、これを使ってみて」

説明を受けた今藤は、ポケットから1枚のカードを取り出し、神室に手渡す。


「ある人から貰った、《ギフトカード》よ。GPの譲渡が可能なそのカードなら、《エクストララベル》の譲渡も可能かもしれないわ」


神室は《ギフトカード》を受け取ると念を込めた。

すると、メニュー画面が現れ、選択肢が表示された。


″ギフトカードに贈答(プレゼント)したい項目を選んで下さい″

″GP″

″エクストララベル″


通常であれば、″GP″の表示だけなのだろう。その下に目的の項目があった。


神室は[再式]を添付し、サツキに渡す。

カードを確認し、サツキに[再式]が譲渡された事を確認する。


これで一安心だと一行は最上階へ進むことにした。

今藤が、マナを支え。

神室が、重傷のサツキを背中におぶった。


「大丈夫だ、サツキ。安心してろ」

「はい、神室さん……」


一行は、平原の中から最上階への階段を見つけ、進む。

その途中でサツキは鮮やかな色彩に包まれた。


″《エクストララベル[再式]》″

″対象者の再構築を開始……″

″完了″

″対象者、復活します″


鮮やかな色彩の中から、サツキが帰ってきた。

傷は見当たらない。


「か、神室さん。ありがとうございました!それに今藤さんもありがとうございます」


「サツキちゃぁぁん!!」

マナはサツキに飛び付き、泣きじゃくる。

タケルとコウスケが死に。閉塞気味だったマナの心が、サツキという支えによって再び開かれたのだった。


サツキはマナを抱き締めていた手を離し、マナの肩を掴んだ。

「マナ……今は進まなければいけないの。だから、もう少し頑張りましょ。そうですよね、神室さん。今藤さん」


サツキは、おぶられている時に、

今藤が神室に、この世界の仕組みについて説明しているところを、辛うじて聞き取っていた。


つまりは、この世界で生き残るには″《層トラベル》″を見つけ続けなければいけないということを。


一行は最上階へ辿り着く。


最上階の展望台は、一面ガラス張りで岐阜の景色が一望出来るところだった。


美しく、太陽の明かりが展望台に射し込んでいる。

ここへ来て一行は朝を迎えた事を知った。


神室は塾の前でシティータワーを見上げた時に、[虎牛の眼]に映っていた黄色い光を見つけた。


それは、展望台の真ん中辺りに、金色の光球が浮かんでおり、その中にラベルが一枚漂う。


「見たことの無いラベルね。どうする?神室くん」

今藤は、神室から[虎牛の眼]について既に話を聞いており、自身の警戒が杞憂であったと確信していた。


そこで、もともとこの光を追ってシティータワーへ入った神室に判断を任せる事にした。


神室はサツキとマナ、今藤の顔を順に見る。

皆、頷いた。

「ピピッ」

彩ボールも反応する。


神室は金色の光球に手をいれた。


すると、どこからともなく、ファンファーレとクラッカーが鳴り響いた。

そして辺りにはサンバの音楽が大音量で流れ始めた。


展望台から見える景色には、その所々で花火が打ち上がっている。

それらは、岐阜の青空を美しく彩っていた。


″《カーニバルトラベル》が開放されました″

″これより、《岐阜(ギフ)トカーニバル》が開始されます″


皆が呆気に取られていると、神室の[虎牛の眼]に反応があった。

部屋全体が赤い光で埋め尽くされる。


「なっ!」


アハハハハヒヒヒハハハ

キヅイタ?

カーニバルガハジマルヨ


「ジョーカー!?」

今藤が、構えると同時に、突如現れた道化は消え、神室の目に映る部屋の明かりも元に戻った。


そして世界が、幾つもの層が重なり始める。


「そんな!″《層トラベル》″じゃないのに?!」

今藤は動揺するが、続けて言う。


「神室くん、サツキちゃん、マナちゃん、まだ試した事が無いんだけど……」


そういって、今藤は、3人に手を繋がせた。


「きっとこれで、君達なら次の層でも一緒にいられるわ。神室くん、二人を守ってあげてね。申し訳無いんだけど私はある人を探す為、別行動をとらせてもらうわ」


「分かりました。今藤さん、ありがとうございました」


「いいのよ、そんな事。次の層でもまた会いましょう。チャオ」

今藤は微笑んだ。


………


この時、全てのトラベラーの前に道化が現れていた。


………


「カーニバル……イベントか。順調に異世界だな」


………


「ジョーカー。次は必ず倒す!」


………


「カーニバル。また皆に会えるっすかね」


………


生き残ったトラベラー達は次なる舞台へと旅立つ。

ギフトカーニバルの舞台へと。


………


……



「………」


「………」


「………」


″《執念トラベル》″


「………」


「カハッ、……負けたかぁ」

「体内がズタボロだ。体が動かせねぇ。これじゃ何も出来ねぇな。完敗だ……また、直ぐに死んじまいそうだ……」


カーニバルガハジマルヨ


峯島の前に道化が現れ、一言残し、直ぐに消え去った。

そして世界が、幾つもの層が重なり始める。


「神室ちゃんが《層トラベル》を発動させたか……」

「カーニバルねぇ、岐阜の祭りか……」

「くっくっく……いいねぇ。楽しそうじゃねぇか…………」


………


……




遂に始まったギフトカーニバル。

トラベラー達は生き残れるか。

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