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ギフトラベル 改札通ったら異世界だった  作者: 三千百六
アザス編
15/53

⑤タタカイとラベル

「来るっすよ!」


アザス達にラベルライダーが差し迫る。

『《フラッシュトラベル》』


辺りに閃光が立ち込める。

″《大盾トラベル》″


ガコンッ!!


瞬間、何かがぶつかり合った音がした。

ホウライが《大盾トラベル》を使用し、ラベルライダーの剣撃を防いでみせた。


「上っす!!」

アザスも事前に気配を感じ、魔力を右手に込め真上へと跳躍する。

既に上空にいるラベルライダーは、下に居るアザス達に向かって銃口を構える。


そして、その銃口から魔力弾が放たれた。

アザスは跳びながら右手を魔力弾に向かって付きだす。


アザスの魔力と、ラベルライダーの魔力弾が反発しあう。

辺りに衝撃波が広がった。


″《役トラベル[騎士]》″

″《武具トラベル[風靴]》″

″《加速トラベル》″


すかさずホウライも跳躍し、

ラベルライダーにジャベリンで追撃を加える。


ガキィン!!


ぶつかり合う金属音。

ラベルライダーは体を捻り、銃とは反対の手に持っている剣で、ジャベリンを受け止めた。


『《ブーストトラベル》』

各自が空中で散開し、着地すると同時、ラベルライダーは速度を上げた。


これにはホウライが反応したが、アザスも魔力で身体強化を行い、ホウライに続く。

ホウライのジャベリンと、アザスの剣が、決定打は無いものの、ラベルライダーに反撃を許さない。


ラベルライダーは、二人の攻撃に押されている。

が、ここでタイルの床に銃を向け、魔力弾を放った。


アザス達とラベルライダーの間に距離が空く。


「やっぱ、コイツ相手に出し惜しみは駄目っすね」

「アザス、ちょっと時間を稼いで欲しいっす」


ホウライには何やら策があるらしい。

「ああ、分かった。だが、余り持ちそうに無いから早めに頼む」

「了解っす」


アザスはホウライに賭ける。

そして、目の前の相手を見つめ直す。強敵だ。

アースラブルに居た頃ならいざ知らず。この世界でのアザスの魔力はかなり制限されている。


アザスは更に内包する魔力を消費し、身体強化、剣の強化を行った。

アザスとラベルライダーの一騎討ちが始まる。


「今の内にっと……」

ホウライは、ホルダーからラベルを取り出し、メニュー画面を操作する。

《加速トラベル》の効果は消えているが、慣れた手つきで取り出したラベルを素早く貼付していく。


「よし」

ホウライは貼付が終え、ジャベリンを構えた。


「アザァァッス!、よっけるっす!!」

″《強化トラベル》″

″《暴風トラベル[ジャベリン]》″

″《終トラベル[投擲]》″


瞬時にアザスは転移し、更に跳躍をしてその場を離脱した。

激しい暴風がラベルライダーに押し迫り、後退りさせる。

暴風を纏ったジャベリンの勢いが競り勝ち、ラベルライダーを商店街の店ごと吹き飛ばした。


肩で息をするホウライ。

アザスも魔力が尽きかけており、二人とも満身創痍だ。


「まだ、終わって無いっす」


ホウライは立っているのがやっとの状態だが、近寄ってきたアザスに警告し、ラベルライダーを吹き飛ばした方向を見る。

吹き飛ばした先、土煙の中。


左肘から先を失ったラベルライダーが現れた。

残った腕には、剣も銃も持っていなかった。


ラベルライダーは、その左肘を前に突きだし、両足を肩幅に広げ、右腕を脇に構える。

『《ファイナルトラベル[チャージ]》』

『《グラビティトラベル[ナックル]》』


ラベルライダーの右腕に暗黒の重力球が成形され、膨張していく。

「やばいすね。アザス、これを持って逃げるっす」


ホウライは、アザスにラベルの入ったホルダーを投げた。

それをキャッチするアザス。


だが、アザスには逃げる気など無かった。

アースラブルで仲間を逃がした自分が、何故この状況から逃げられようか。


アザスは残りの魔力と生命力を振り絞った。

感覚を極限まで研ぎ澄まし、剣に炎を纏う。


アザスはホルダーからラベルを1枚取り出すと、

片手と口でラベルを剥がし、

見よう見まねでメニュー画面を操作し貼付した。


ラベルライダーが動く。助走をつけて跳躍し、拳をアザスとホウライに向け放ってきた。


刹那、文字通り命を絞り得た超感覚によって、ラベルライダーの拳が届く前にアザスは、カウンターを叩き込む。

しかし、このままでは威力が足らないのは必至。

そこでアザスは一か八か、ラベルによる威力増加を企んだ。


「ってやぁああ!!」

″《火トラベル》進化のバングル効果発動″

″進化《紅蓮トラベル》付加[アザスの剣]″


逆袈裟斬りを放ったアザスの剣は、更に紅蓮の焔を迸らせた。

その灼熱はラベルライダーの黒鎧を溶かし、切断するには十分であり、アザスの企みは想像以上の結果をもたらした。


ラベルライダーは膝をつき、重力球も縮小し消滅する。

やがてバランスを崩し、タイルの床に横倒しになったラベルライダーは、灰色の煙となって霧散した。


「ははっ、すげーすね。ホントに異世界の勇者様だ」

ホウライは、疲れながらも、あどけなく笑って見せた。


「いや、この通り、片手が使い物にならなくなってしまった」

余りの灼熱に、魔力で覆ってはいたもののアザスの手は酷い火傷を負っていた。


「魔力がすっからかんだ。暫くは回復魔法も使えない」

アザスはその場で床に腰掛けた。


「デザートはいるっすか?」

「いや、手を治してから頂いてもいいかな」


こうして、アザスとラベルライダーの一戦目は、

幕を閉じた。


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