表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

8話

 サボってしまったのは仕方ないと、授業が終わるのを見計らって教室に戻った。ヒロ君はまだ戻ってないから、何処かほっつき歩いているんだろう。


「ハル!」


 授業が終わったお昼の時間に戻ってきたわけだが、由佳里が大きな声で私を呼んでいた。


「どうしたの?」

「いや、知ってるかなと思って」

「何が?」

「ほら、桐木が怪我してたから」

「へ?」


 桐木とは私の……元彼のことだ。彼はバスケ部所属してたから、特に怪我があっても不思議はないと思うんだけど。


「もしかして酷い怪我なの? 一応私も行ったほうがいいかな」

「ううん、そんなに酷くはないんだけどね。顔だったから」


 てっきり足とかかと思ってたんだけど、そうではなかったらしい。


「えと……何やって怪我したの?」

「まだ本当か分からないけど、殴られたって噂が……」


 殴られた?

 ケンカしたってこと?

 でも何で?


「桐木のさ、新しい彼女が言ってるみたいなんだけど、香川君が殴ったらしいのよ」


 ヒロ君が?

 想像してみるけど、うまくイメージが合わない。争い事は嫌いなはずだし。と考えて、この前の光景が蘇る。もしかしてあの時なのか。私が悠とヒロ君を置いて逃げ帰ってしまった時なのかな。


「香川君も顔に怪我してたけど、私から見ても違う気がするのよね。先に手を出したのが香川君だって言うし」


 私もそうと考えるのは難しい。でも、隠し事があるみたいだし、どうも気になる。私は再び話をしようと教室を出た。


「見付からないね」


 由佳里もついてきた。一緒に探すが何処にいるか見当がつかない。次の授業を待ったほうがいい気もしたが、さっきのようにフける可能性もあるのだ。


「手分けして探そっか」

「うん、お願い」


 一向に進展が見れない私たちは、二手に別れることにした。一人で校舎を探し回って、もしかしたらと考えが浮かぶ。

 本当は閉鎖していて出入り禁止になっている場所がある。なのに、ヒロ君はたいして気にする様子もなく、私を連れていった場所だ。


 最上階よりもさらに階段を登り、バリケードのように張り巡らされている机や椅子を再び乗り越える。扉を開くと風が吹いた。


「やっぱりここにいた」

 

 見える場所にはいなかったけど、梯子を上ってみれば、ヒロ君は塔屋の上で寝そべっていた。不良みたい行動だが、ヒロ君がやってると思うと少し可笑しかった。


「……」


 一瞥するけど、何も反応がなかった。開き直ってるみたい。

 私は彼のすぐ横に腰を下ろす。それでも何も言わなかった。


「ケンカしたんだって? しかもヒロ君が先に手を出したの?」

「……そうだよ」


 やっとした反応はふてくされてる感じだ。ちょっと新鮮だと思った。


「どうしてそんなことしたの? 昔は争い事は絶対に避けようとしてたのに」

「……」

「また私に隠し事?」


 ぴくっと体が動いたのが垣間見えた。アレを警戒しているようだ。また逃げられたら堪らないから、口にするのは何とか抑えた。


「無闇に暴力ふるうヒロ君は好きじゃないよ」

「……けどあいつ!」


 好きじゃないって言葉に反応したのか、勢いよく起き上がる。しかしすぐに寝転んだ。しかも向こうを向いてしまった。すねたのか、恥ずかしくなったのか、私には分からない。ただちょっと可愛く思える。


「私のせいだから? ヒロ君が怒ったのって、私が原因だから言いたくないの?」

「……違うよ。そんなんじゃない」

「嘘」

「何で?」

「ん~、何となく」


 今回は向こうを向いてしまってる。表情で読むなんてことは出来なかったけど、そんな気がした。

 ヒロ君が少し顔を向ける。でも目が合ってしまってすぐ背けられた。


「ハルちゃんって知ったかぶりするよね」

「え? そ、そうかな」


 それは全く自覚なかったから素で驚いた。


「そうだよ。昔だって……」

「あ~、まぁそんなこともあったかな」

「それにさ……」

「な、な、何で覚えてるのよ!」


 いつの間にかヒロ君は起き上がり、私と向かい合って昔話に興じた。懐かしく、また恥ずかしく、そんなのあったっけっていうのとか、色々と思い出しながら。

 気付けば時間は随分と経っていて、授業終了の合図が鳴り響いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ