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考えろ!

改訂いたしました。27.5.30

 ちょっとウィル様とお父様でぎゃーぎゃーと騒いでいる間、私はこの水晶を持った男性から簡潔に自己紹介を受けた。


 彼は調査官のユーク・デイ・ラバン。伯爵の爵位持ちで、調査官とは貴族で起こった揉め事を執り締める機関の事だそうです。今回はパディック侯爵家とアーガスト伯爵家とアマンツェ子爵家の揉め事なので調査官が派遣されたってさ。


 調査官である証拠は手に持っている水晶である。この水晶は約200年ほど前に魔術師が産み出したもので、嘘を見抜くもの。私の考え通りです。


 使い方は極単純で、水晶に魔力を流しているだけ。ただ色々と条件が付いていて、高学歴であり、試験に満点に近い高得点をとること。そして【風】の属性を持っていること。魔力を流して、拾った“ 音 ”で嘘をついているか、ついていないかを判断するので、風属性ではないと無理なんだそうだ。声の震音で判断してるのかな?


 それに加え、魔術契約を受け入れること。契約書に示された契約を飲み、サインするだけ。簡単に言えば、嘘がどうとか真実を知るんだから個人情報は漏らさないよう厳重に契約しよう、との事。どこまで喋っていいのか知らないけど、そういう契約のもと、ユークさんは調査官に配属したらしい。


 ちょっと触ってみたいなー、とか思ったけど、私はまあ一応【風】の属性を持っているけどっ。均衡が崩れて死んじゃうのも嫌なので当たり障りない顔で話を避けた。なんだかまた水晶に色が付いたんだけど………「嘘は駄目だぞ。でもこれは触らせれないから我慢だ」と軽く怒られてしまった。どうしよう。ユークさんいい人すぎる!


「よっし!クフィー、喋っていいぞー」


「はい、わかり………ました?」


 呼ばれたから振り返っちゃった、的な。自然動作で振り替えったら思わず絶句した。だって………眼鏡が似合うウィル様がしかめっ面で怖いっ。なんでそんなにこっちを睨んでいるの!?


 思わず二度見してしまったのはしかたないじゃん!!よく見たらシンボルの眼鏡がない!!よほど私の百面相が面白かったんだねっ。お父様がぶふっ「可愛い!!」と呟きながらお腹を抱えています。こんなの見せられたら焦るって!!


 お父様の隣にいるウィル様はガン飛ばして黙ったまま。正直、怖い。ヴィグマンお爺ちゃんがため息ついた理由がよくわかる。


「よく見えないので返して下さいませんか」


 ………………なるほどー。ウィル様、視力が悪いんですね。眼鏡が必要なほど………………納得です。一歩も動けずにどこを睨んでいるのか分からない方向でぽつりと言っているし。うん。よく見たらお父様の手に眼鏡が見える。悪戯っ子なんだね、お父様。


「そんな事より、もうさっさとすませい。ウィル、お前は我慢しておれ」


「………………」


 うわ。すっごい渋々って言う感じ。でも睨んでいるからよくわかってないけど。しかし、このまま別室にいるエモール先生たちを待たせるわけにはいかないので、私は前に向き直って話だす事にした。


 後ろから回り込んでお父様とヴィグマンお爺ちゃんがユーク様の隣にたつ。ウィル様はきっと歩けないだろう。視力低下中の歩行はすごく危ない。―――どこまで見えないんだろうね?


「先程の訂正ですが、私はアーグラム王子と婚約する事になってます」


「これからなるのですか?」


 ふむ。ユークさんが主導権を握っちゃうか。さすが調査官様。


「私はまだ認定式を終えたばかりの7歳ですから………婚約だけして、後は私が成人するまでにアーグラム王子に落ちるか落ちないかで婚姻が決まる事になっているんです」


「ずいぶん手間をかけますね………」


「アーグラム王子のご配慮です」


 正直、ばばんと早く決まらなくてよかったよ。8歳も離れたプロポーズを、そう易々と受けとるわけにはいかない。初めて告白に胸を打た………れたのか?まあ恥ずかしかったね。とりあえず、と思っていた私はだいぶアホだ。


「この場で細かく言えませんが、年齢もですけど私は魔病もいくつか抱えていますから婚約で留まったのです。でも、私が聞いたアテンネ様の話には齟齬がございました」


「齟齬だなんて難しい単語、よく知っていますね」


「色々と書物を読んでおりますので」


 ま、まずった!?水晶は光っちゃった!?そうだよ7歳児が『齟齬』なんて言わないよ!どんだけ頭いいこちゃんだよっ!?ぐわーもうバレる!?


 で、でも水晶は光っていない。よ、よし、ならまだ大丈夫だよ………今度は気を付けるようにしなきゃ。表情を変えないように内心は焦りまくりでヤバイが、なんとか慌てずにすんだ。よ、よし。


 でも何故だろう………お、お父様の顔がやけに真剣で私を見てくるんだけど!?試されてる………?まさかね。お父様だもん。お仕事モードに切り替えているんだよね?なんとも言えない衝動があるが、ここで黙ったままの方が怪しい。気にしないでどんどん話を進めていこう。


「先ほど申しあげたようにアテンネ様は、私から婚約解消したと言う噂が上流階級に広まっているみたいです。わざわざ、アーグラム王子の名前まで出して私を邪魔もの扱いしました。それに父と言う個人まで出してきています」


「アテンネ様の独断………?」


「私はアテンネ様や当主様もどういう方が存じ上げません。親の指示なら前当主と現当主は正反対の政権を持っているみたいなので私では何も………………それで気になったのですが、なぜ私が婚約を断った形にする必要があったか、です。私が邪魔ならアーグラム王子をお慕いしていているアテンネ様なら私だけを陥れる、それだけでいいはずです。噂を聞いているなら少しねじ曲げて広めればいいし、そのまま利用して『王子は騙されている』と言う噂をある事ない事取って付けて流し、私を孤立させるなりして陥れた方が簡単です」


「ふむ………王子の名を使って娘っ子にお前が悪いと強調したかったか、自分の行いを評価してもらおうと思ったか、ではないか?噂は噂じゃからの」


「ヴィグマン様、お言葉ですが自前のお抱えを死なせるほどの騒ぎですよ?しかも父が、と言っている時点で噂の発信源はパディック侯爵家となるのは必然です。評価してもらおうと、だなんて目に見えすぎではないでしょうか」


「個人名を出す事でアーグラム王子の箔にも皹が入りますね。侯爵の娘はクロムフィーア若魔法師だけでなく、見向きもされなかったアーグラム王子も陥れたかったのでは?それか、糾弾した後に王子へ労りに漬け込むか」


 ウィル様、きっと睨みながら言っているんだろうなー。援護してきたのはウィル様。そう。私もそれを考えた。男性が振られるなんて普段はちょっとしたネタにしかならない。しかし、相手が王子となれば盛り上がる。


 わざわざアーグラム王子でなくてもいい。年齢があれだけど、私が節操ないとでも言えばアーグラム王子は傷つかない。でもアーグラム王子の名前を出してきている。最後のなら後でアテンネが慰めに行けばアテンネの株はあがるね。さすがウィル様。


 ―――アテンネは『邪魔』と言った。とくに私は邪魔なんでしょうね。パディック侯爵家はなにを企んでいるのか………


「この証言は有効できると思うか?」


「一日では無理だ」


「待ってください。今それとなく言いましたが、父と言う個人まで出してきていると言ってましたけどそれはどういう事ですか?私がまとめたものではそう詳しくなってない」


「え?クリミアから聞いた話では『王子付きの女官と私の父が会談して話を聞いた』と言っていましたよ?」


 水晶は………光ってない。うん。間違いないよ。なんでそこまで話が言ってないんだろ?と言うのはお父様も気になったらしい。ウィル様に聞いていた。


 クリミアとの話を聞いたのはヴィグマンお爺ちゃん。切り出しはアテンネからそう言う話を聞いたと言うぐらいなので気に止めなかったようだ。ベルルクも同じ答えだ。


 すぐに確認を取りに行くために………眼鏡を返されたウィル様が出ていった。ついでに呼んでくるらしい。また背中会わせに座らせるために、見張るために大人が少しだけ動く。


「お父様、帰ってからでもいいです。話せる時間を作れませんか?」


「私はクフィーと毎日でも話たいからね!今日は早めに帰るから今日話そう!」


「馬鹿者。お主が早く帰れる訳がなかろう」


「いいえ。帰ってみせます!クフィーのおねだりですよ!?やってみせます!!」


「娘っ子、ここでは駄目か?そうでもせんと仕事を放って帰りそうじゃ」


「お父様は仕事もちゃんとこなして帰ってきてくださいますよ。ね、お父様?」


「当たり前だろう?お父様はクフィーとの約束を破った事はないからね!」


 確かに………ないね。首を傾げてどう?て聞いてみれば満面の笑みでついでに胸をはって言いのけてくれました。お父様もブレないよね。仕事を終わらせて早く帰る、って言った日―――本当に早いんだよ。


 前にもそんな事をお姉様が言っていたの、聞いているよ。そうしたらいつも早くて夕方、遅くて深夜とはっきりしている時間を夕方より少し前。下手したら夜の3の鐘がなった時には帰ってくる。


 仕事を放り投げたんじゃあ………とは思ったけど、その次の日も夕方くらいに帰ってきて普通だった。たぶん次の日に支障がない程度に済ませるぐらいまでに留めて、仕事をこなして帰ってきたんじゃないかな。以前だったら誰かが強制連行に召喚されていたから………レーバレンス様とか。


 4人が戻ってきたところで、再び同じ位置についた。子どもたちは背中合わせで座り、それを大人が距離を置いて囲む。尋問の始まり、だね。もう疲れたよ………なんでエモール先生が私の正面なのか教えてほしい。なんかこの人の顔を見ていると一番疲れるんだもん。


「クリミア若魔法師に聞きます。アテンネ侯爵令嬢と面識があるのは間違いありませんね?」


「は、はい!」


「ベルルク若魔法師も同様、間違いありませんね?」


「はい」


「アテンネ侯爵令嬢から噂を聞かされた時、その噂は誰が誰から聞いてきたか、聞きましたか?」


「聞きました。えっと、『王子付きの女官に、騎士である自分の父が』とアテンネ様が、です」


「それは上流貴族に伝わっている?ベルルク若魔法師」


「はい。そう、言っていました」


 うん。間違いない。ならば後はその上流貴族の噂をかき集めて裏を取って私が嵌められた事を証言すれば………弱い、か。そうだった。魔法師が死んでしまったのが原因で私が危ないんだった。でもこれで少しは裁決が延びるよね。


「もしその証言が本物なら、クロムフィーア若魔法師は罰が少しは軽くできるでしょう。後は魔法師の死です。部屋にいた事は変わりない」


「魔法師の方はちょっと確認すればまあ、大丈夫だよ。噂の方は………そうだな、ユリユア様に頼んでくる。あの方がお茶会でも開けば貴族がぞろぞろと顔をだす」


 すごっ!?ユリユア様ってそんなにすごいの!?


「侯爵が絡んでいるので調査官である私は今日中にこの事の詳細を申請してしまわなくてはなりません。今日の夜、6の鐘までにお願いします」


「それ以上に伸ばすことは出来ないのでしょうか?」


「出来ないでしょうね」


「心配しなくてもいいよ、クフィー。グラムディア様に私が頼んでおく。息子のアーグラム王子が絡んでるんだ。少しは協力してくれるさ」


「わかりました………私は何をすればいいでしょうか?」


「ん?んー………お父様と一緒にお茶」


「グレストフ一進魔法師」


 ウィル様からまるで地を這うような低い声がががっ!?ちょっとビックリして跳ねたらそれをわざわざお父様か指摘してウィル様が悪者になると言うカオス。当たり前のように怒りだしたウィル様はまたお父様に挑んでいると思われます。


 鬱憤を連続で投げつけてもう止まらないみたいだね。回りを気にせずに文句をばら蒔いて説教を始めていた。ウィル様、頑張って。


 それにしても何か回避する方法を探さなきゃ………何を確認したら大丈夫なのかな?疑問に思った事を口にすればちょっと綻びが覗きだして芋づる式で出ないかと思ってたんだけどなあ。わかったのはアーグラム王子も一緒に貶されてるよ、と言うだけ。うーん。攻撃が弱い。攻撃が………?


「エモール先生」


「なんだ」


「(反応はやっ)私たちがいた部屋は闇魔法の結界が使われていたのですよね?」


「そうだ」


「魔法剣で斬られて死んでしまうほど、強く繋がってるんですか?そもそも結界を破った事によりどれ程の衝撃が襲うのでしょう?それと人に向ける結界は中に誰かいるとか分からないのですか?」


「闇は少し特別だからな………結界については、壊す壊れると言うことは耐えきれない事だ。紙きれの壁が投げられた石を防げないように、作った壁が外からの攻撃を防ぎきれなければその防ぎきれなかった衝撃が投げられた先へ襲う」


「よし、クフィー!レーバレンスのところに行ってお茶にしよう!」


 あ。お父様がみんなに叩かれた。




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