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脱出したら影がよぎる

改訂いたしました。27.5.24

 できるかも(・・)しれないなら試してみてもいいじゃないか。考えを改めろ?それで死んでしまうかもしれないのに待っていられないよ。言うだけはただだよね。


「ねぇ、もし魔法具でこの空間を作っているのだとしたら、何かで壊れても仕方ありませんよね?」


「―――何かあるんですか?」


「もう全部言ってください。のんびりしていられないような気がしてきました」


 クリミアの性格が激変しすぎて掴み所かわからないよ。


「先日、騎士棟のところにお邪魔しました。私は魔力が光って見えると、知ってます?」


「それはもう。すぐに噂になりましたよ。だからウィル八進魔法師様が出てきたんだ、と。いくら特異だからと途中加入した者に十進魔法師様たちが顔を出すことはありません。それに………色がないことも」


「早いのですね。まあそれは置いておくとして、魔力が見える理由に騎士棟でお仕事してきました。今、騎士棟では魔法騎士の増員を謀っているそうです」


「魔法剣、ですか?でもそれは………あまり知られてないものですよね?」


「魔法と剣を一色単に考える方が少ないですからね。それに魔法師と騎士で揉め事があったと確か前に聞いたと思います。そのおかげで魔法剣は廃れていったのでしょう」


 あー、なんかそんな事を聞いた事があるような、ないような………いまいち思い浮かばないけど。まあそれも置いておいて、私が言いたいのは魔法剣でこの空間を断ち切りたいのです!むしろ魔法剣をやってみたい!


 だから剣みたいなもの、持っていないかな?


 お父様に頼めばなんか用意してくれるような気もするけど………ほら、私は魔法師だし(まだだけど)、剣が扱える訳ではないので言っていません。むしろ持てないような気がする。


 だからちょっと小型のナイフでも護身用に………とも考えたよ。うん。そうなると私の生活の中に護身術講座が組み込まれると思うんだ。ただ、この世界に護身術なんて綺麗な言葉はないよね。護身術と言うより騎士の真似事で基礎を教えられそうな気がしてならない。それは無理である。断言しよう。運動は嫌いだ!!


 さらに無理なんではないかと理由をつけるならお父様。いくら護身用だからといって娘に武器を持たせるか、だよね。一番魔力が通りやすいミスリルの剣でも普通に買ってくれそうだし。値段は知らないけど。むしろ自分が守ってあげるから~て言いそう。絶対に言ってそう。


 だから魔法剣に関してはどっかに放流ぎみで忘れていたんだよ。大きくなったらそれなりに剣なんて持てるだろうと思って放置するつもりだったし。ほら、剣は騎士が使っている太めの剣だけではない。片手剣や女性専用の細剣!レイピアなんてあるのだからきっと―――あ、あるよね!?


「あの、あの………誰がやるんですか?」


「………私がやろうと思っていました。ウォガー大隊長から素晴らしいとお言葉を賜っています」


「やったんですか、いえ。やれたんですか、魔法剣」


「魔力操作ですか?鼻が高くなりますがけっこう自信ありますよ」


 え、ベルルクってば何、その微妙な顔。止めてよ。まるでこいつ何してんの?とでも言いたげな顔。もちろん持てるわけないよ。地べたに置いて私が柄を握って魔力操作してただけ。あんなの持てたら教本だって持ててたね。


 ああ、そうか。私は7歳児だったっけ。うまく扱えるのは不味いのかな?基準はまったくわかんないなー。………大丈夫、だよね?


「でもっ、クロムフィーアちゃんが出来たとして、剣なんてありませんよ?」


「別に剣でなくてといい気がするんですけどね?ベルルクは持っているでしょう?もしものための、ナイフを」


「………………」


 今度は驚いて睨まれましたー。うーん。これはクリミアと並べて見て私を危険人物と見ているのかな?そうとしか思えない不思議。でも考えてみなよ。従者だから何かあった時のために備えはあると思うのは普通ではないかね。ベルルクはただ付き従うだけではないと思うんだ。


 アテンネに近づこうとした時のあの身のこなし、早すぎない?テーブルから扉の距離は大体で4メートクター。まあ、狭い。でもさ、彼女が動く時に同時でベルルクはすでに扉の前。私たちはテーブルから動いていない。動き出したのは扉がしまって視界か闇に変わったとき。ねえ、従者としては、動きに長けていませんかね?


 どうですか、と聞いてみれば持っています、と苦虫を潰したかのような顔で返事が返る。やっぱりね。それはそうだよね。備えは必要だよ。ただ、クリミアはそれを知らなかったらしくていたく驚いていた。私は知らないで一緒にいたのかと逆に驚きである。


 一先ず、それを借りられないかと提案してみる。もちろん、渋られた。そりゃそうだよ騙した方と騙された方。ナイフでも人は殺せてしまうものだよね。それは唯一の武器で騙された私に渡るなら反逆とも取れる。疑い深いことはいいことだよ。しっかり従者として自覚がある。でもそんな事はしないのになー………


「なにもしなければ結局は出られませんし、もしここで私が貴方たち二人を手にかけて出られた時は、巧みな話術で言い逃れ出来るかもしれません。が、抜け出せたと知ったアテンネ様から私は逃げられませんよ。親に逃げても、侯爵という立場で他者の心理に漬け込まれましたら最終的には私も殺されます。邪魔者らしいですから」


「………クロムフィーアお嬢様は本当にクリミアお嬢様と同じ7歳児ですか?話し方がまるで子どもではない」


「女性に年齢を聞くのも失礼ですし、その年齢のせいで人間性を疑われるなど、失礼ですね」


「べ、ベルルク!私の友達を否定しないで!どちらにしても出られないのなら望みがあるものをやりましょう!」


「まだ他にあるかも知れません。もう少し状況を見て実行に移しましょう」


「………………いいえ。魔法剣をやってみましょう。それに、これ以上を色々に考えても何も出てきそうにないし………クロムフィーアちゃんなら出られる気がする」


「ですから、それだと騙されやすいですね、と私は注意しているんです」


「ベルルク、聞きました?こんな人を心配して殺す人は、まず私の魔力暴走を助けようとしません」


 ………………クリミアって、一度立ち直ると強くなるんだね。ちょっと和解?しただけなのに本当に最初のはなんだったんだ、と言いたいぐらい喋りだしたよ。それも、従者をたしなめるために。


 そんなクリミアの姿に面食らったのは私だけではない。当然のように遮られ、ベルルクが目を見開いて驚いていた。まあ、あんな内気だった子が今じゃその影がないもんね。こんな驚き方じゃ、きっと長いことこんなすらすらと言葉を言ってきた事はないんじゃないかな。これは私の勝手な思い込みだけど。


 クリミアのおかけでベルルクの説得は出来たらしい。一息入れてズボンの裾を少しだけまくりあげた。履いていたのはブーツだったらしいそのブーツに、留め具で固定されたまるで銀食器のナイフのようなものを引き抜く。それを徐に私へ渡すのだから、ナイフで間違いないでしょう。


 柄の部分を私に見せているので私はその部分をもって彼女たちと少し距離を取った。魔力を扱うのだから危ないだろうと、私の配慮だ。


 細身のナイフは軽くてよく私の手に馴染む。右手に握って魔力操作で右手に通し、次に柄、刀身部分へ移動してもらい、刃から出て行こうとする魔力を纏わせるように固定。魔法剣の出来上がりである。なんだか少しだけミシミシ言ったような気がするので、魔力はほんの少ししか入れていない。壊れたら大変だもんね。


「綺麗………魔法剣と言われていたので………てっきり騎士様が使う大きなものだけしか出来ないと思っていました」


「私もそう言う認識でしたよ。そのナイフは普通に鉄から出来たものなのに………ミスリルだけではないのですね」


 そんな事を言われても………私も魔法剣に関しては詳しく知らない。本にはミスリルが一番魔力を通しやすいとしか書いてなかったんだもん。一番はこれだね、しか書いていなかったから他も出来るんだろうな、ぐらいしか思っていなかったし。私も一種の賭けのようなものだったよ。


 まあ、出来てしまったものはいいじゃないな。私は今、満足である!これでこの空間を断ち切れたらさらに大満足なんですよ!さあいっくよ~!!目指すはあの一点だけ光ってるところ!光ってると言えば魔力である!そこを断ち切れば私は自由だあああああ!!


 徐に走っていって私はベルルクにはとても奇っ怪な小娘に見えたらしい。「やー!」とか叫んで急に走り出すものだからやっぱり何かするんじゃないのかとクリミアを庇っていた。しかし、私は有らぬ方向に走っていったのでクリミアの危険は危惧に終わったが………私は奇怪な人間と、ちょっとよろしくないレッテルを貼り付けられた。これは後で教えてくれた話しである。


 で、私と言うとそのまま突っ込んでその光ってる部分を切ってみたらあら不思議。パリン、と小さな音が鳴ったと思ったら景色が元に戻るじゃありませんか。戻ってみれば私は扉の前で小さなナイフを魔法剣に構えて立ち止まったまま。けっこう、驚いています。そのあと開いた扉に頭と魔法剣が突き刺さって入ってきた人に大層、驚かれた。


 入ってきたのはヴィグマンお爺ちゃん。なんだか変な魔力を感じて来てみたらしい。今は授業中で、この食堂で魔力をわずかながら察知して様子を見てきてくれたんだとか。


 感じる事が出来るヴィグマンお爺ちゃんは見事、私たちがいる部屋を当てたのだが開かない。よく見てみたら魔法具が扉に嵌め込まれていて、ヴィグマンお爺ちゃんではどうにも出来なかったらしい。


 それで魔法具から読み取って属性を調べ、ついでに魔法具に特化している魔術師を呼んで右往左往。しかし、見ていた魔術師では解けなかった。レーバレンス様は?と思っていたら王宮の陛下と会議をしていたから呼べなかったとか。


 その後、私たちは個別で事情聴取を受け、不備がないかを確かめあって終わったのが6の鐘が鳴り響いただいぶ後だった。やっぱり不自然だもんね。とくに私は魔法剣を手に扉の前で何やっているんだか。ヴィグマンお爺ちゃんもまず最初にそれを聞かれた。


 場所は魔法棟。ここが一番安心できるとの事。その内のヴィグマンお爺ちゃんの個室で順番にそれは執り行われ、その途中でお兄様が駆け付けてくれた時は心底ホッとした。鐘がなったあとクリミアの父君が来てすごかったけどね。お父様に似て凄かったよ………家族愛が。


 因みに私の聴取の時間が一番、かかった。ええ、かかりましたとも。とくに魔法剣に関してとか。とか。とか!若魔法師なのに魔力操作を使ったとか。いくら知っている事だからって若魔法師にはまだ魔力操作は早いらしい。段取りと言うものがあるのだ、と怒られらしたよっ。


 もう一度、明日に聞くと言うことで今日は各々の馬車で帰る事になり、夜には私の事情を聞き付けたお父様が騒がしかったのはやはりと言うか、言うまでもなかった。まあ、魔法棟の中だし。そりゃあお父様の耳にも入るよ。


 このおかげで私一人では駄目だ、と言う家族会議(父と母だけの密談)によりポメアも魔法を教わるという面目上、私の傍にいさせる事が義務つけられた。私は別に構わないし、ポメアに至っては「これでずっとお側にいられます!」とはりきっているのでいいんじゃないかな。


 次の日にはさすがに授業を受けられるどころではないので私は魔法場のお父様の部屋に連行され、その後にクリミアたちも連行されて同じ部屋に集められた。クリミアの顔はすでに顔面蒼白で昨日に見せたちょっとしっかりしてきた雰囲気はすでになくなって内気な少女に逆戻り。………大丈夫なの?


 また一から話し合うため、確認し合うためにお父様の部屋で取り調べを受けて私たちは今日で解散らしい。また私はあの長いのを受けなきゃならないのかな、と思っていたら今日は違うとのこと。まあ、クリミアたちがいる時点でちょっと違うね。でも何が違うの?と聞き返したら皆が集まった事を確認したお父様はちょっと重めな口調で、あることを口にした。


「昨日、クフィーが魔法を破ると同時に一人の魔法師が死んだ。侯爵、お抱えの魔法師だったらしい。これにより少し面倒な事になった事を今伝える」


 朝からとても重いその言葉に、それはもしや自分が殺してしまったのか、という不安がよぎる。そのせいで魔力が―――少し、揺らいだ。




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