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雑談危機

改訂いたしました。27.5.24

「ですから、やってみないと分かりません。実際に私の父には効果覿面でしたよ?」


「む、無理ですよ~っ。大嫌いなんて言えば泣いちゃいますっ」


「人の話を聞かないのですから泣かせればいいんですよ。それで父は色々と私のお話を聞いてくださいました」


「本当ですか?………ベルルクはどう思います?」


「親が違いますからね。出来るような気もする事もないと思います」


「どっちですか!もう!」


 ベルルクの優柔不断なセリフにぷりぷとしだしましたクリミア。なんと言うか、私たちはかなり場間違いね、と言いたい。


 ここからの脱出はどうする?となっていたのだけど、結局のところ決まっていない。まあ、1と2を両方やっちゃえばいいよね。と言う話でまとまって、今は2が採用されている。


 なんと言いますか、待っているだけじゃつまらないから1の自力で脱出を試みるけど、私たちでは無理な事も多いから脱出方法を考えながら2の助けを待とう、と言うことになった。


 いや、ほら、ただ待ってるのはどうかと思うし。でも雑談はちょっと雰囲気的に違うよね?となって自力脱出案が出なくなったら助けを待つ。3人集まれば門主の知恵だっけ?全然そうなんないよ。


 おかげで色々な情報は手に入ったけどね。あの人の事とか?婚約の話とか。クリミアって素直だよねー、本当。なんか悪いことしているみたい。


 まず、あの人。私たちを閉じ込めただろう縦ドリルロールの少女。名前はアテンネ・マーチ・パディック侯爵令嬢。現在15歳で若魔法師。来年で見習いに昇格するらしい。たぶん親の力だね。


 アーグラム王子の婚約者候補で、クリミアが言うには上位の姫候補だったらしい。性格はクリミアが接していた態度で言うと優しい淑女。口は少し強い時もあるが基本、丁寧で聞き手上手のアドバイザー。相談事はよく彼女に頼る人が多いとの事。


 彼女がいっていた婚約の話はクリミアが聞かされていたのと同じ内容で、彼女の親が王子付きのメイドとお話しした中から聞いたものが広まったらしい。それって、そのアテンネから広まっているよね。


 で、クリミアとの関係はただの相談相手。父は『魔法師』でこの城にいて、ちょうどその騎士と面識があったらしい。王子付きのメイドと言えば近衛騎士が一番近いよね。そのメイドがどこまで足を運べるかにもよるけど。


 その前に、おかしいんだよね。確かにアーグラム王子と婚約関係とは一応、なっているよ。そういう話になってしまったし―――でもさ、アテンネの話だと婚約の話は出てるけど私がふった事になっているんだよね。終わった感じ。その方がありがたいんだけど。


 なんでだろう。私をそのまま王子の婚約者にしておいた方か罵れると思う。むしろ私がその位置にいた方が相手は痛め付けやすい。いくら私の後ろにお父様の影があるからってやりようはある。不実の噂を流せるぐらいなら外聞で色々と操作できるでしょう?


 どうして断っている事になっているんだろ?悲劇のヒロインには………なれないよね。双子ちゃん王子たちは一通りお見合いしたって言うし。アテンネも姫候補として上位って言うぐらいだから逢っているはず。どこまで知っているんだろう。作り話でもアーグラム王子の名前は大きいよね。


 王族の配慮としては扱いが雑。むしろあっちから頼み込んでるような感じで宰相様はお話ししてくださっていた。じゃあ、なぜ噂で私から解消されているか………噂でも私と王子の婚約が許せなかった?そうなるとアテンネの独断に近い行動だよね。


 うーん。でも父がそのメイドと会談した、って………自分の父を出汁に使う?上流貴族には浸透してるって、それを聞いた人はどこまでそれを信じる?パディック侯爵はそこまで影響を出せるほど切れ者でもないような感じでヴィグマンお爺ちゃんの資料には書いてあったけどなぁ。ごちゃごちゃは、していそうだったけど。


「そう言えば………この魔法は【闇】ですよね?まだこの空間が保たれている、と言うことは魔法師が魔法を魔力で維持している、っと言う事ですよね?それとも【闇】はまた別なのかしら?」


「え、そうなのですか?」


「お嬢様はまだこちらに来たばかりですから知らなくても大丈夫です。クロムフィーアお嬢様は勉強熱心ですね。私もお嬢様方より少し長く教えられたのですが魔法維持には魔力が必要です。属性は関係せず、このまま闇の空間にいると言うことは魔法は魔法師と繋がったままですね」


「それって、離れられるのかしら?」


「私も勉強不足ですが、かなりの魔力保持者ならば少し離れても平気だと聞いております。ただ、魔力の負担は大きいですが………」


「私の感覚ではかなり時間が経っていると思うのだけど―――息苦しいとか迷宮に入ったような感じではありませんよね?このまま綺麗に保たれているのであれば近くに魔法師がいると言う事かしら?」


「たぶん、すでに3の鐘は鳴っていますね。こんなに長く保てるのなら魔法師が近くにいるかも知れません。しかし、それが分かったところで捕らえられている私たちにはどうにも出来ませんよ」


「………………そうよね。でも不安を過らせる発言、いいかしら?」


 とくにクリミア。ついてこれないからって不貞腐れた顔で私とベルルクをみないで。説明って難しいのよ。


 それで、私の一抹の不安は言ってもいいですかね?私的には一人で抱えているよりも聞かせたいんだけど。ほら、いくらなんでも私たち、危機感がなさすぎだったじゃない?いまさらだけどさ。


 待てば大丈夫だよ、なんて軽々しく言っちゃってみんなそうだね、て返してたけどさ。よくよく考えたら一番気にしなきゃいけないところを忘れているよ。みんなが落ち着くことを念頭にしすぎたせいかな。いや、完璧に大丈夫だよとかなんにも考えていなかった私が悪いんだけどっ。三十路近いから脳の働き低下してきたのかな?いや、元から私のおつむが足りないのか………虚しい。


「き、聞かせてください。なんだか聞いておかなければならない気がしました!」


「お嬢様………今度はしっかり、私に守らせてください」


「ベルルク」


 はい。それは他所でやってー。恋愛に発展しないらしいけど見る分ではごちそうさまです。まだ握ったままの手を両手にしてベルルクとクリミアが見つめる図がすごく私、邪魔であるよ。


「では………言いますけど、魔力が維持し続けているから今の状況が維持されています。では、魔力の維持が消えたらどうなるのでしょうか?」


「えっと、そうですね………も、元に戻るんではないですか?」


「どうしてです?」


「………魔力が消えるから?」


「たぶん、クリミアが言っている事は当たってます。ですがこの魔法は維持し続けている。まだ(・・)消えないのですよ。もしかしたら魔法具を使われているのかもしれません」


「………………え?」


「魔法具を使い、魔力を何人かで注いでいれば、ずっと続けられるでしょう?闇の空間といえど、考えてみれば私たちを覆うための『結界』です。私はレーバレンス様が結界の魔法具を作れる事をお聞きした事があるので、無理ではない話だと思うのです」


 属性の有無は知らないけどね!でもあながち間違いじゃないと思うんだ。ここまで時間だけが過ぎているのに、魔力の乱れもない。私が見ていた扉型のキラキラは一つの塊になっている。一応、触ってみても何もなかった。


 さて、これで考えられるのは助けを待っているにしても、今度は私たちの時間が問題になってくる。いくら魔力の枯渇を待ったとしても、魔法具だった場合を考えると永久に続けられる。だって、これをやったのはアテンネ侯爵令嬢(・・・・)だもん。魔法具なんて簡単に揃えられそうでしょう?


 その有無も話したら2人が絶句してしまった。たぶん、一番最悪な事を考えているのだろう。このまま誰も見つからずにいたら私たちは餓死。あり得る顛末だ。


「ど、どどどどうすればいいのかしら!?私、まだ、まだっ」


「クリミアお嬢様、どうか落ち着いてください。まだ私たちは生きてます」


「そうです、クリミア。私たちはまだ生きているから知恵を出せるのです。こうなれば私がやけになって魔力暴走で一発暴れようかと」


「だ、駄目ですよ!そんな事をしたら誰が止めるのですか!!」


「あら、クリミアは私を止めて下さらないのですか?お友だちだと思っていましたのに………」


「え?お、お友だち?え、でも―――」


「クリミアって、騙されやすいわね」


「ええ!?お友だちじゃないのですか!?」


「私をお友だちと呼んでくださるんですか?アテンネ様のように何か企んでいるかもしれませんよ?」


「クロムフィーアはそんな人ではありません!」


 おお。凄い、言い張ったよ。“ ちゃん ”も抜けた。あの内気な子が―――あのおろおろしてた子が。ふんぬー!と少し鼻息を荒くして私に力説してくれる。ベラーナを褒めていたのがよほど嬉しかったんだね。理由がベラーナでいいの?だから騙されやすいな~、て思っちゃうのに。


「では、ここを抜け出せたらお茶を誘ってくださいね。ベラーナを見せてください」


「もちろんです!」


「ベルルク、クリミアがこう言ってるけどいいの?本当に漬け込まれますよ」


「クロムフィーアお嬢様はしないでしょう?こんないきいきしたお嬢様、初めてみます」


 そうか。主従揃っていきいきしていると私は思うよ。まだまだ気合いが入っているクリミアはベルルクにベラーナを見せるから庭を最高に整えなくては!と息巻いて笑顔で了承するベルルク。私も大概だよ。


 アテンネからみてクリミアは捨て駒。それを私が拾った感じ。とてもじゃないけど、綺麗な友情とは言えない。それでもこの関係はいいかな、て。クリミアを見てたらちょっとほっとけない。アトラナとは別の、ほっとけなさだよ。


「それで―――ここから出る方法はないですよね。気合いが入っているところ悪いけど、もう一度話し合いましょう」


「そうですね。待っていても仕方ないとわかりましたから、何か方法を探しましょう」


「そうです!いっそこの空間をこじ開けるほどのすごい脱出をいましましょう!」


「クリミア、なぜか最初に逢った時と印象が全然、違いますよ?」


「………………なんでしょうね。少しだけ、吹っ切れた感じがするんです」


 そう。それはよかったね。よかったついでに私もちょっと思い付いた事があるんだけど聞いてくれる?なんだかいけるようでいけない感じだけど、異世界に来たらやりたいな、って思っちゃったんだよね。今、この空間で。




 次元斬りとか。




 剣があったら………………やりたくない?異世界ひゃっふー!、したいな。




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