なにがどうなった?
改訂いたしました。27.5.24
私の耳はおかしくなったのだろうか。うっかり耳に小指でも突っ込んでお掃除しようかと動いた右手はなんとか頬に当てるよう動作をして、困ったわ、みたいな仕草で乗りきった。
私はてっきり、ベルルクに関してとかお父様の話とか………後は私についての話とかで呼ばれているのだとばかり考えていた。
クリミアのしどろもどろ。言いたくても言えなくて歯痒い動作。あれは彼女の元々の行動パターンだと考えると父の対処が~なんて言われて私の頭はフリーズだ。いくら小突いても動かない。思考が停止した。
気を取り直すにはかなりの時間を使ったのではないかと言うくらい、私は固まっていたと思う。クリミアに関してはあの顔色が悪いんではないかと言うちょっと色白がグレーに変化していく色。言い切ったからか顔はすでにふいている。
対して、ベルルクは何故か「やりましたね、お嬢様!」とクリミアのを褒め………褒めている?「次ははきはきと言えたら旦那様もきっと聞いてくださるでしょう!」て………よいしょの方かもしれない。
だいぶ落ち着いてきた私もなんとか情報処理をして立て直したけど、さ。なんで私に聞くの?私、相談役なんて受け付けてないんだけど………
「あの、クリミア?父君の対処を教わると言いますけど………説明してもらっても構いませんか?」
そうだよまったく意味がわかんないよ。これは正論だ。と取り繕った平常心で聞いた見る。彼女はようやく戻ってきた私にやはり遠慮がちに説明してくれた。ベルルクに話を振らなかったから、ちょっとは進展したのかな。順応が早すぎるよ。
それで………聞くところによるとなんか泣けた。親近感があって泣けた。魔法師こんなのしかいないのか!?と泣けた。涙がちょちょきれる勢いだよ!!
なに?子ども好き。デジャヴュすぎる。いなくなったのにマルカリアがよぎる執念深さ。私はマルカリアを忘れられる日が来るのかな………
それで、娘であるクリミアは家族なので当然、大好きであると公言しているらしい。やばい今度はお父様と被ってきた。類は友を呼んでいるのかもしれない。二人しかいないけど。
クリミアの相談と言うのは、クリミアは母に似ているらしく、かなり控えめらしい。だから父が一度決めてしまうと、反論が出来ずにいつも流されてしまって、自分の事を伝えられない。
頑張って伝えようにも、子どもが大好きな彼は娘が可愛すぎて聞く耳すら興奮しすぎて怪しいんだとか。これはベルルクが教えてくれた。
それでなにか問題があるのか、と思っていたら少し前にその問題が起こったらしい。そこまで深くは聞きたくないのだけど、まあここまで来てしまってはしかたがない。とりあえず聞いておこうと思う。
「その………私の親が幼馴染みと親と友人関係で、いつの間にか幼馴染みと婚約が決定していました」
早い気もするけど、貴族なら普通じゃないの?
「別に、幼馴染みの事は嫌いでは、ないのです。だ、だけど私、魔法を学びたくてっ」
「私はまだ婚約について聞いた事ないのですけど、婚約と魔法に何か関係があるのですか?」
「貴族の女性はだいたいやれる事は少なく社交は女性のもっとも重要な役目です。嫁げばその夫の支えになるのが主ですから、魔法は必要としないのが当たり前で、逆に社交のための勉強が必要になるのです」
ああ。そうか。魔法なんてちょっと使えれば高いステータスが得られるだけだし、女性貴族が働くなんてしないよね。それこそ未婚の女性だ。
話をまとめると、幼馴染みと婚約は決まってしまっていて、クリミアはそれを了承してもいいけど断りたい。無理に結婚するなら魔法を勉強したいので結婚も諦めるとのこと。ちなみにクリミアの家には姉が2人いるそうなので家督とかも気にしなくてもいいし、三女の執着は主にどこに嫁いだら幸せになれるか、らしい。
私から言わせてもらえば、そんなものは家族会議でなんとかして下さい。対処がどうのよりもまず話し合うしかないと思われます。決定権が父にあるなら従う他ないでしょうに………………まさかクリミアの婚約解消させるために父親にどう断ればいいか対処したい意味―――ではないよね?嫌じゃないって言ってるし。
「それで私、どうすればお父様に、その、反抗できるか分からなくて、同じお父様を持つ自由なクロムフィーア………ちゃんなら、わかると思いました!」
「………………そう、ですか」
ごめん。それしか言えないわ。だって同じって言うけど違うでしょう?私のお父様は家族だけ特別であって強制はしないし無理強いもない。家族愛が激しいからスルースキルは磨かれているけど基本、嫁と娘息子が愛しくてたまらなく愛でたい人。子どもでも自分の子だけ。
クリミアの父の場合は家族も好きだけど他の子どもも好き。好きな子どもたちが幸せになるんだったら、こうすればもっと幸せになれるだろ?なら娘だってこうなれば幸せになれるんだ、て言う思考のもと自分で作ってしまった世界でうはうはしてる人にしか聞こえない。どこまでの人物までか知らないけど、聞いただけではこんな感じで私のいい解釈になる。
きっと違うでしょうね。でも、お父様とは違うと言えるからこう思えるの。それに何気に………気づいていないのか、クリミアは私を貶している。私が親に反抗してるといっている口ぶりは頂けない。しかも自由って………私がはっちゃけてるみたいじゃん。………違うよね?今度お兄様に聞いてみよう。
きっと普段ここまで喋らないから、そんな事をさらりと口にしちゃうんだろうけど、貴族としては駄目でしょう?………そこは7歳の女の子と、前世持ちの私の違いなのかな。
「まず、父君と対話すことですね。クリミアはずいぶんと話すのが苦手のようですし」
「そ、それだけで、変わり、ますか!?」
「娘の反論も聞かずに勝手に決まったのでしょう?貴方の父君がどういう方か、私にはまだ分かりませんが話し合ってもいないのにどうすればいいのか聞かれてもどうにも出来ません」
「で、でですが!クロムフィーアちゃんは親に反論して、婚約の主導権を握られたのでしょう?わ、私もそう言う風にしたいのです!!」
「―――その話、どういう事でしょうか?私は婚約などしていません」
「え?でも………影で侯爵のお姉さま方が噂していますよ?お相手は、わ、私には聞こえませんでしたけど、かなりいい縁談を嫌だと断って、自分の婚約は私が決めます、と豪語したと」
「誰ですか?そんな浮評を流したのは」
「不評?あの、なにか………悪い噂でしたか?」
「まあ。それは当たりではありませんの?私には真実だと思ってその噂を聞いていましたのに」
えー。誰ですか貴方。お呼びではないよ。第三者はごちゃごちゃになるから引っ込んで下さい。
クリミアと話していたのに、どこからともなく出てきたのはビックリ縦ドリルロールの―――若魔法師です。すごいよ。マジのドリルと縦ロールのコラボを初めてみた。たぶん全部の髪を前に出しているせいか縦ドリルロールがすごく目立つ。怖い。そして邪魔ではないのだろうか………?
突然に現れたのはお母様と似ている色彩の少女。まだあどけなさを顔に残しているけど、オーラは『お嬢様』である。
それで、私は聞いてもいいのかな?明らかに口調とか刺々しくて喧嘩を売られたような感じしかしない。突然の事でクリミアなんかはベルルクに守られながらあわあわしている。
「ごめんなさい。私には貴方がどこの方か存じないませんの。教えてくださいますか?」
「それよりも、私の質問に答えなさい。縁談を断ったと聞いたのですけど、お相手はあのアーグラム王子と聞きましたのよ?その小さいなりでどうやってたぶらかしたのか聞きたいですけど、王子との縁談を断って親より自分がえらいと図に乗っているのではありませんこと?」
はい、面倒事になりましたー。アーグラム王子に怒りの鉄槌を捧げたいです。おい、噂どこからきたと言うよりもバレてんぞ。
さて、このお嬢様はどうしたものかな………これだけ態度がでかいんだから一応、私より身分が上と判断していいんだろうけど………白黒じゃあなんにも判断できない。上質な布なんて見ただけでわかるわけないし。飾られてる石は魔力がないけど私には鉱石なので価値がわからない。
流行りのドレスなんか気にしてもいないし、相手の身ぶりでわかるわけもない。どうしたものですかね。どなたか後ろでカンペを作ってください、お願いします。
「申し訳ありません。私には身に覚えのない噂でございます」
「そんなわけはないわ。私の父もこの王宮で騎士として働いているの。父が王子付きの女官と会談している時に聞いたそうよ」
おおーい。でどころばっちりじゃないですか。私の平穏どこに逝ったの?ねえ。
しらを切るのって、大変なの知っいてるかな?アーグラム王子っ。
「私に、王子とのご縁談など恐れ多いと思われます。何かの間違いでしょう」
「お父様が嘘をつくはずないじゃない。今では上流貴族ではこの話が極秘で浸透しているわ。それでね、私―――貴方が邪魔なの」
最悪だ。
キッと強く睨んできたどこぞか分からない令嬢の若魔法師はそんなに離れていなかった入り口から外に出て笑う。その意味が分からなくても、よぎる不安は一瞬に警告と変わる。
小さく「さよなら」と言われた言葉にうまく反応してくれたのはベルルクだ。彼が走って扉に近寄ってなにかを言っている。逆に私はただ嫌な予感だけしかしなくて動けないでいた。
ガチャリと少し重めの音とベルルクがたどり着いたのは同時。そして部屋にその音が浸透したかと思うと部屋の空間が変に歪む。まるで目眩を起こしたかのように部屋の形がマーブルに混じって気持ち悪かった。
一つの扉だけをキラキラと魔力をまといながら残して暗い部屋。人の姿だけがはっきりと見えて、なんだかその不自然さが私にとっては救いだと思う。
その扉を力強く叩くベルルクは蹴りあげたりもしたが、ビクリともせず。やがてその攻撃は無意味なのだと気づくとクリミアの元へ駆け寄っていく。
分かる事は?クリミアが怯えている。それを慰めるベルルク。呆然と虚を見つめる私。どうしてこうなったのか。変な噂が流れているからだ。彼女は嫉妬したに違いない。
予想では公爵のように身分が高くて、双子ちゃん王子のどちらかの姫候補。しかし選ばれなくて、私の話が持ち上がり、それを断った私は何様だと奮起したのかもしれない。そしてこの変な空間で復讐………
なんだかやけに冷静でいられる事に驚きを隠せない。状況を探るように思考が動く私は色々と考え出して、ある事に疑問を持つ。
どうして彼女―――あの縦ドリルロールはこの部屋が分かったのか。入る時は誰もいなかったのに………ねぇ、そこのお二人さん。まさだと思うんどけど、あの人とグル?でもタイミングが遅いよね?騙されちゃった口?どうなんだろう。
「ねぇ、クリミア………これ、仕組んだのかしら?」
なんだろう。やけに冷静になれて、でも怒りは鎮まらなくて………右目が熱くて左目かヒリヒリする。




