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暴走

誤字等を修正いたしました。27.4.2

お父様が使う法の表現を変えました。


クロムフィーアの髪の毛の表現と、後に続く文法にご指摘をいただきましたので、少し表現を変えてみました。これで言いたいことが伝わって………いる、はず!

おかしいと思いましたらまた修正したいと思います。27.4.30


ご指摘がありました。ご報告ありがとうございます。

誤→こてらとて(こちらとて)

正→こちらとしては

 

 私の声はどこまで響いたのだろう。


 ようやくバタバタと微かに聞こえたと思ったらドアが勢いよく開いた。音が凄かったからたぶん、誰かが来てくれたのは間違いない。


 それから落ち着くように誰かの声が聞こえる。あと悲鳴も。でも自分の声の方が響いているからいまいち聴こえない。


 それでも泣き止むことのない私はまた盛大に泣いていた。誰か近づいてくることもない。


 なんで誰も近づいてこないわけ?どうして誰も傍に寄ってくれないわけ?泣いたのが悪いのかな?


 じゃあ私を放って置かないでよ。私はまだハイハイが出来るようになった赤ちゃんなんだよ?目を離しちゃ、いけないんだよ………………?






















「クロムフィーア!トフトグル!」


 異変に気づいたのは馬車から降りた時だ。目の前の屋敷から、強い魔力を感じた。


 襲われているのか―――?嫌な汗が伝う。


 グレストフ・フォン・アーガスト伯爵。私は王家直属の十進魔法師筆頭を担っている。そして二属性を持つ“ 異常 ”魔法師だ。


 今日は私の一人目の娘、リアディリアが7歳を迎えたので城に行って認定式を受けなければならない日だった。


 認定式は、魔法に対して初めて己の価値を知るための日である。属性や魔力量を測定、確認して15の成人の時に城で支える事が出来るのか。ここで調べる儀式だ。


 ここで本人の希望も聞いておく事もする。城に仕えるのならば2つの道があり、すでに定まっているのならばより早い段階で勉強が出来るからだ。


 騎士の道か、魔法師の道か。中級貴族の私たちはどちかを選ばなくてはならない。貴族であるからと胡坐をかくわけにはいかないからな。女性は政略に使われることが多いので例外もあるが………


とくに魔法師は出入りが激しいのだからこちらとしては見定めを早くしたい。男は騎士の希望が多いし、女はのち結婚で立ち去るからだ。魔力が多い人材は早めに捕まえたいな。


 リアディリアも魔力はそこそこある。頑張れば魔法師になれるだろうが、本人は強い否定でどちらも選んでいない。


 なんせ、リアディリアは女の子だ。城に勤める事はないだろう。私だって仕事よりも嫁いでほしい。それでもこれは通過儀礼。やらねば私の子どもだと認めてくれない。


 両親が揃って行かなければ受けられないそれはなかなか重労働だ。


 まず、堅っ苦しい挨拶の手本とならなければならない。そのために親の礼儀の品定めをさせられ、子どもがそれをうまくやり遂げられるか、をまた見定める。


 城に働いているとはいえ、これはいつも慣れない。とくに、リアディリアは少し我が儘に育っている。どうやら、女の子だからと甘やかしすぎたのだな。成人までこのままなのだろうか、少し心配だ。


 だが可愛いから許してしまう。罪な娘だ。原因が私たちなのだから当然だが。




 ―――今はそれどころではない!




 普段から両親共々家を空けているので、護衛などはしっかりと配置している。


 とくに私には犬猿の仲とも言えるドミヌワ伯爵がいる。幼少期から私となぜか張り合っていて、仲はずっと最悪のままだ。理由は私が気に入らないから、と聞いている。八つ当たりだろうか?


 未だにそんな理由で突っかかってくるのだから大概にしてほしい。


 結婚するまでの間にも家に来てよくちょっかいを出してきたもんだ。普通なら手紙を寄越して先触れをしておくものだが、どうもドミヌワ伯爵は私を困らせたいらしい。言いたい事があれば直接乗り込んでくる。唐突に来るので本当に厄介だ。


 今に始まった事でもないので適当に対応してしばらくしたら追い返していた。


 最近で酷いのがまた私のところに娘が出来たからだろう。あいつのところには息子が一人だけ。それでもじゅうぶんだと思うが気に入らないらしい。ひどく面倒なことだ。


 しまいには近いうちにまた顔を出しに行くと言う。そこまで考えたら後はまさか、と事の展開が自然と浮かんでいてもたってもいられなかった。


 娘はやらんぞ。


 おまけに今回はトフトグルも置いてきているっ。あいつとトフトグルには絶対に会わせてはならない!!


 妻のクレラリアには私がいいと言うまで馬車から出ないように言い、急いで中に入る。


 私が慌てて入ってきたの事によほど驚いたのだろう。執事筆頭のダリスが駆けつけた。


「だ、旦那様!どうなさいました!?」


「強い魔力を感じる!トフトグルとクロムフィーアはどこだ!」


「お二方ともお部屋にいらっしゃるはずです!」


 はず、では困るのだ!なぜそんな曖昧な言葉を使うっ!


 優雅やら品やらは全部投げ捨てて階段を駆け上がった。実際に二階に上がれば魔力が強くなっていく。トフトグルは部屋から顔を覗かせていたので安全は確認できた。だが辛そうだ。


 あと確認が出来ていないのはクロムフィーアだけで―――そのクロムフィーアの部屋に近づけば近づくほどに強い魔力が溢れ出ていた。


 何かあっては困ると、皆より少し離した部屋に目をやり舌打ちした。まだ幼いために隔離していたのだが今はそんな距離も惜しく煩わしい。


 部屋の前に到達すればやはりこの部屋からかなり強大な魔力を感じとれた。助けなければ、と蹴破る勢いで扉を開ければ―――


「クロムフィーア!大丈夫かっ!!」


 浮いていたクロムフィーアがいた。盛大に声をあげて泣いている。私の新緑の髪色に母であるクレラリアの金糸の色が合わさって薄まったのだろう、薄い翡翠色の髪を少し逆立てて魔力を放出させていた。


 状況から見て、あまりよろしくはない。部屋にある物がすべて浮いているのだ。これが嵐のごとく飛び回っていたのならば、軽い怪我だけでは済むはずがない。


 すぐに魔力の暴走がわかった。しかし、クロムフィーアはまだ赤ん坊―――どうやって鎮めたものかっ。


 本来、魔力の暴走は体に馴染んでから自分では抑えられない魔力が何らかの衝撃で起こりうる可能性(・・・)だ。それこそ早くて物心が付いてきた3歳ぐらいか。ただ、それも可能性の話。


 そもそも自分の体に収められない魔力を保持する事は希なのだ。クロムフィーアは私たちが考えているよりもかなり魔力を保持しているのだろう。まだ馴染んでいないはずなのだがっ―――


 赤ん坊から起こりうるこの可能性に例は、ない。


「クロムフィーア」


 落ちつかせるために近づいていく。一度だけ抱いたことのある小さな体だ。クロムフィーアは覚えているだろうか?


 首も座っているだろうし、抱っこくらいなら私にもできる。あやせるかは、微妙なところだが。


 ゆっくりと水の膜で防御を張りつつ魔法を使い、近づいていく。後ろでダリスが何かを叫んでいるが、今はそれどころではない。クロムフィーアを止めなければならないのだ。


 しかし、なんて力だっ―――私でもこれは敵わないっ。


 私は自慢ではないがこれでも魔力は高い方だ。城に仕えて20年。魔法師全体を統べる王宮魔法師筆頭。そして陛下をお守りする十進魔法師。それが私である。それでも私が近づけないと言うのか………?


 我が娘ながらとんでもない魔力だ。これは一度ヴィグマン様と相談してレーバレンスにも色々と相談しなければっ。


「くっ………………クロムフィーア。どうしたんだ」


 ようやくクロムフィーアにたどり着いた時には肺が締め付けられるような思いで咳き込んでしまう。


 浮き上がっていた小さな体を抱き締めて背中をゆっくり、叩いて不安を取り除くようにあやす。


 きっと鳴き声で聴こえないだろう。もしかしたら無力化されてしまうかもしれないが、これしか方法がない。


 耳元でゆっくりと、正確に。子守唄の代わりに水の緩やかな流れる音を出して眠らせる魔法を発動させる。


 やはりクロムフィーアの魔力が強すぎるのか、魔法の発動が歪む。だが、私には鎮める方法がこれしか思い当たらなかった。


 ようやく発動が成功する。威力を少し強めにクロムフィーアを覆うように魔力を放った。


 包むように魔法がじょじょにクロムフィーアを………それと次第に鳴き声が落ち着いてきて―――効いてくれた魔法にそっと胸を撫で下ろした。


「これは………魔力を寝かしたと言う意味か?」


「…………う……?」


 まさか、クロムフィーアにかけた魔法が打ち破られようとは………


 本人にかけたはずが、まともにかかってないじゃないか。どうしたと言うように起きてられると、こちらも虚しくなるのだがな………………


 まるでお前は誰だ、と言うように驚いて目を真ん丸に見開いて私を見ている。覚えているだろうか?いや、覚えていてほしい。


 一度だけ抱き上げたことのある小さなクロムフィーア。その時はまだ数ヵ月としか経っていなかったな。泣き出さないだけよしとしよう。


「きあきあ!」


 すごく可愛い!


「きあきあ?なんの事を言っているのだ?………………まあ、どうやら落ち着いようだな?」


「―――あい!」


 笑ってくれるか。それは嬉しいことだ。


 泣き止んだら無邪気に笑って私の頬を撫でてくれる。うむ。落ち着いているな。


「マハリナ。ここを片付けておけ。ダリス、お前はクレラリアに食堂へ向かうように伝えろ。それとジェルエの様子を見てこい。もしかしたどこかで倒れている可能性がある。トフトグルの容態も後で報告しろ」


「かしこまりました」


 ジェルエはこの屋敷で家族以外の、唯一の魔力持ちだ。日常に使える程度なのでこれだけ強い魔力を当てられたらきっとどこかで倒れているだろう。明日の体調次第で休暇を与えてメイドを代えるか。


 トフトグルもクロムフィーアと部屋が近い。だが私より魔力が少ないのだ。体調を崩しているに違いない。


 クロムフィーアの寝床は―――……………駄目だな。このままクレラリアたちを迎えに行くとしよう。


 説明も大変だな。





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